櫻木れが

神奈川県在住、恋愛作家。PHP研究所「波風スウィング」。comicoノベル連載一部完結…

櫻木れが

神奈川県在住、恋愛作家。PHP研究所「波風スウィング」。comicoノベル連載一部完結・双葉文庫「彼氏くんと彼女ちゃん」。一迅社文庫「妄想少女は魔法を使えない」。

最近の記事

◆虎に翼22話、直ちに言えない苦しさ

記録は重要だ。 今回ははるさんの「主婦之手帖」が大活躍。 日々したためられてきたはるさんの記録を、寅子が調書の内容と突き合わせて情報を整理する。 ここで検察側のでっちあげた物語が明らかになっていく。 前回、検察側は直言に求めた。 「きみの証言で、全員を釈放できるんだ」 そして今回、直言のとびきり上司の高井が彼に求める。 検察の言うとおりにして、罪を認めよう。 名だたる方々が捕まっている。 下々の自分たちが引きうけよう。 そうやって尻尾を切られる形で、もっとも割りを食

    • ◆虎に翼21話、居場所

      かつて色々とトラブルがあり、ボクが一方的にやられた相手から「あなたは我々のことを悪く見ている。だから我々の選択を悪く受けとるのである」と言われたことがあった。 はて? もう十年近く昔のことなので、当時のボクに寅子の問いはなく。 ただただ「なんか自分に都合のいい場所で、自分に都合のいいこと言ってんなあ」としか思わなかったのだけど。 そのようなことをする者(あるいは者たち)の無茶な振る舞いに出くわすことが、どうにも現実にはしばしば起きるのだ。 母の自死にかぎらず社会人生活を

      • ◆求める

        テレフォン人生相談にて聞いたことばだと思うのだけど、愛する能力のない人に愛を求めても得られない。これにグッときた。 能力を必要としない人にも。無自覚な人にも。知らない人や気づかない人にも。 そもそも、その気がない人にも。 求めたところで得られない。 がんばっても、傷ついても、逆に傷つけても圧をかけても、得られないよね。 そのわりに求めちゃうのは、なんでかな? 自分にとって、相手がくれることが答えだから? 相手がくれることが解決法だから? してくれたら解決するから? 相手

        • ◆自己開示ダム

          割と赤裸々に自己開示をし始めている。 一方で、この自己開示は周囲に向けた自分開示ダムだなあと考えている。 投稿に留めながらも、放水を始めている。 なにせ、自分の中に溢れかえるようなものがたまっている。 これまで決して放水してこなかったダムの止水が、とうとう終わりを告げたかのように、とうとう吐き出し始めた。 水源は尽きることがない。 何年分、何十年分かと言わんばかりの量だ。 話してどうにかなるものではなく、それでも時折もれちゃうことがあるのだから、実に厄介な水源である。

        ◆虎に翼22話、直ちに言えない苦しさ

          ◆自分を放棄したい男たちの死に至る病

          『家に帰ったら人がいる』 『病気になったら面倒を見てくれる』 『うちのことをなんでもやってくれる』 『自分のこどもを生んでくれる』 『夜の相手をしてくれる』 『結婚の目的が、このような「自分のしてもらいたいことをやってくれる」都合のいいものなら? その都合を言い換えるなら「相手にやらせたいことがある」支配欲や要求の現れからくるものなら、やめたほうがいい』 『女は男の希望を叶える道具ではない』 という言説は近年、ますます増えている。 けれど昔からはもちろん、いまでも、こんな意

          ◆自分を放棄したい男たちの死に至る病

          (覚え書き)「変わる」ことの具体と抽象

          ※おことわり 今回の投稿には抽象的ながら加害と被害について触れています。 野田俊作「性格は変えられる アドラー心理学を語る」創元社を読んだときに印象に残っている記述がある。 性格とは生き方であり、そのマニュアルである。 これまでの人生で得た体験、学習、情報を統合させて構築されたものだ。 素朴ながら重厚なマニュアルを元に、私たちは思考して行為する。  ・ 加害者が恋人や婚姻関係にあるものをはじめ、周囲に「変わってみせる」という。 「かならず変わる。絶対に変わってみせる。お

          (覚え書き)「変わる」ことの具体と抽象

          ◆虎に翼20話、お腹

          昨日の19回では轟、梅子さんの胸を借りて花岡が弱音を吐いたり、自分を見つめ直したりしていた。 花岡がこんなの自分じゃないとしたものを、梅子さんは「どれもあなたよ」と伝える。 いくらでも自己否定、自己否認を繰り返せる便利な手だ。自分を甘やかしたくなるだれもがしてしまうものでもある。 梅子さんは自分を鼓舞したり慰撫したりする過程で体験してきたのだろう。大庭の家の者は梅子さんにひどい態度を取っている。 18回で寅子たちに自分を卑下したり、下げてみせたが、あれは大庭で長いこと否定さ

          ◆虎に翼20話、お腹

          ◆虎に翼19話、轟と花岡

          まず最初に言わなければならない。 花岡、ごめん! ボクの先入観からくる偏見を、もう強火で書きまくってきた! 非常に申し訳ない! SNSにて実況投稿をしたときに気持ちがだいぶ浄化された。 梅子さんの花岡への言葉、轟が花岡に贈ったもの、それらを消化しようと勇気を出す花岡。 一見すると尾野真千子さんのナレーションどおり「いい人しかいない」のだけど、どうだろうか? 寅子の回想に問題があると指摘がある。 猪爪家劇場のルッキズム役者変更、女装など。 この表現でいいのだろうか? 

          ◆虎に翼19話、轟と花岡

          ◆虎に翼18話、翼になれなかった羊として

          ハイキングを全力で楽しむ轟。 鼻の穴をかっぴろげて、すぅうう! はぁ! 空気がうまい! 声もよく響く! 男たる者、荷物を持つぞぉ! さあ、渡してくれたまえ! 玉、光三郎から引き取るぞ! はっはっは! 楽しいから、よねの言葉に乗っからず「きみとは議論をしないぞ! 今日はハイキングだからな! みなさん行きますよ! ついてきて!」。 のぼりおえたら? 「やっほぉおおおおおお!」 おお、三度も返ってきたぞ! はっはっは! 大爆笑だよ! ありがとう、轟! それはそれとしてはしゃぎ

          ◆虎に翼18話、翼になれなかった羊として

          ◆虎に翼、学び行い取り入れる先入観

          学び行い取り入れる先入観。そして選択。 ううん。重たそうで意味不明な書きだし。 今回はそういう内容だ。 幼い頃からボクらは見て、聞いていく。 成長に伴い行動の幅が広がり、交流の経験も増えていく。 そうした体験から、知識と経験も増えていくし、それらがどういうものなのかという実感も増していく。 けれど、それらは理解と直結しない。 おとなが言うことを真似たり、うまくいったから思考を放棄したりすることが実に多い。 知識と経験、そしてそれらに繋がる実感は結局のところ現状と今後に向

          ◆虎に翼、学び行い取り入れる先入観

          ◆虎に翼、表向き穏やか、透明化されるものは

          (2024/04/22 21時追記) 寅子は無事に女子部を卒業。 法学部に進学だ。 お祝いの席、直道と花江は子を授かっていた。直道が抱っこしてあやす。 あ。優三は今年もだめでした。 応援しているよ! 女子部を卒業してからの法学部。 地獄の入り口にたったと激励するはるさん。 弁護士法は改正されて、弁護士資格の取得は男子のみという規定が改められて、女性も取得することができるようになる。 入学式を終えて、意を決した六名は法学部へ。 涼子の薫陶を受けて、たまは英語を覚えている

          ◆虎に翼、表向き穏やか、透明化されるものは

          ◆適応と依存と過剰と恋愛

          個人的な執筆作品が本日、2502話に到達。 書かないと飢餓感でどうにかなるという焦燥感もあり始めた日課も、始めて気づけば七年と八ヶ月かな? やっと。やっとだ。 連載時代に抱えてきたもの。いやさ、それよりずっと以前から人生を通して行き詰まりを感じていたものの輪郭を捉えた。 適応だ。 有斐閣の現代心理学辞典いわく。 現代精神医学事典においては。 臨床心理学中事典では元々は生物学や生態学の用語であるとして心理学では次のとおりとしている。 小児期において、適応に負荷がかか

          ◆適応と依存と過剰と恋愛

          痛がる私が見つからない

          恋愛で相手がいる状態で近づくのは最低。 それはそう。心の底から同意する。 仮に相手が近づいてくる者になびくようなら、結局のところ、長くは続かなかったのだろう。 もしも相手との付き合いにおいて自分に問題がある部分に思い当たるなにかがあるのなら? 省みて改善するほかにない。 しかし、それは相手との関係を改善するためではないし、改善できるものでもなければ、長期的な安心を得られるものでもない。 すべて分けて、区切っていくほかに先はない。 もしも苦悩を引きずるとき、これが実に厄介だ

          痛がる私が見つからない

          ◆虎に翼、弱音と怒りと勇気と連帯と

          とととと! 虎に翼! 今日はぐっとくる場面が多かった。 ひとりひとりの切実さが開示されていく。 涼子の「特別扱いされない仲間たちと一緒におまんじゅうを」を振りとして。 本音の領域にある、だけど表に出しにくい弱音を共有していく。 さみしさや苦悩、悔しさや怒り。 いろんなものを、だれもがそれぞれの地獄の中で抱えている。 花江の弱音を叱責して自己責任だとでも言わんばかりのよねに、寅子が待ったをかけた。 弱音は本音の領域にある。 吐いてもことばにしても、解決はしない。 けれど

          ◆虎に翼、弱音と怒りと勇気と連帯と

          ◆虎に翼、浮かぶのは自分ばかり

          今日はおさらいから入ろう。 明律大学女子部法科の学生たちが、志望学生数の減少に伴い学祭である「明律祭」にて法廷劇を演じることに。 実際の判例をモチーフに学長は筋書きを用意。 これを華族のご令嬢である桜川涼子が脚本としてまとめる。 実際の舞台は幼稚な男子大学生たちが茶々を入れて台無しにした挙げ句、先に手を出して破壊。 やり返した女子部の面々のみが叱責と処分を受ける羽目に。 新聞は大学側と幼稚な男子大学生らに迎合。 窮地に立たされる寅子たち。 そこでよねの過去について聞かせ

          ◆虎に翼、浮かぶのは自分ばかり

          ◆虎に翼、よねの過去、ものにする男

          今日はよねの過去を掘り下げる回だった。 農村で娘たちを女郎屋に売る父親。 カフェーに通い、女を買う男たち。 女たちの売り上げをくすねる店主の男、また男。 困りごとがあるならと弁護士として助けると言って、よねの弱味につけ込んで手を出す男。 職を失い、噂から次の職も得られず困るよねの姉を、生活を、居場所を与えることで、彼女を思いどおりにできる男。 男たちの作り出す地獄。 抜け道はない。 虐げられて、利用されて、金を使って弄ばれて、依存させて縋るようにできあがっている。 そん

          ◆虎に翼、よねの過去、ものにする男