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我が子を信頼するということー

1.自分の親の育児がベストな育児か

 上の子が小学校にあがる前、極めてシンプルだった我が家の育児。
早寝早起き、よく食べ、よく遊び&
明るく、素直に育って欲しい、ただそれだけ。ー自分の親が、自分に対して行っていた育児だ。

 上の子(長女)が小学校にあがった頃から、娘の強い自我を感じる瞬間に立ち会うことが増えた。この娘の自我を、親に対しても主張し、表現して欲しい。この長女の自我が、他者への思いやりをもつことも忘れず、育って欲しい。そのために、我が家の育児はどう変遷すべきか、迷ってたどり着いたのが、臨床心理学者トマス・ゴードンによって、「子供が育つ上で親がいかに関わるか、という親の側に焦点を当てて子育て」について書かれた本。

「責任感の強い、自分で判断のできる、協調性のある子供」を育てるための実例が豊富で、1977年に初版が刊行されているけれど、内容に古さを一切感じさせない。

この書籍にかかれている、子供の話を「能動的に聞く」こと、なかなか実践できずにいる。ー自分の親が、自分に対して行っていない育児だからだ。

2.母(私)の冷たい眼差し

「ピンポーン」
玄関のチャイムが鳴って、在宅ワークを一旦中断。オートロックを解除し、玄関で小学校3年生の長女を迎える。

「ゲ」(by私)、
長女のお気に入りのベージュ色のキュロットに、直径1cmから、最大3cmくらいの墨汁のシミが点々とついている。そういえば、今日は書道で初めて筆を使うと言って、嬉しそうな表情の娘を送り出した朝の光景が浮かぶ。

「このシミとれるよね」(by長女)
と、これまでシミ取りできた絵の具と同様に考える娘に対し、明らかに険しい顔の私。「墨汁は取れないから、もう着れないと思うよ。でも、書道でよくあることよ。」と受け流してみる。が、今から思えば、長女に母(私)が向けた眼差しは冷たいものだったと反省している。

長女にとって、祖母からお誕生日にもらった大切なキュロット、
暑がりの長女には、一番薄地で酷暑の夏をしのぎやすいキュロット、
ということで、キュロットは捨てないという長女。
シミを隠す長めのトップスを定番の組み合わせにすることとして、シミのことも忘れかけた頃、、

 3.シミがついたワケ

長女のクラスの保護者会に出席。隣り合わせた別のお母さんから、
「先日の書道の時間に、息子が道具の片づけに手間取っていると、娘さん(我が長女)が手際よく手伝ってくださったと聞いています。本当にありがとうございました」と感謝される場面が。

私の長女にこの手の話は事欠かず、容易に想像がつく場面。
・・・書道初日。自分は要領よく片付け。周囲で手間取るお友達にアンテナが向くと、放っておけない。
 それまでも、保育園でも、小学校入学後も、我が長女は、転入してきたばかで戸惑うお友達、準備に手間取っているお友達、授業中に困るお友達の心を読むのである。長女がサポートしたお子さんのお母さん方から感謝されたことは1度や2度ではない。

帰宅して長女にその話をすると、
「ああ、キュロットに墨汁がついちゃった日の話だよ。
〇〇君が、すずりに墨汁を出し過ぎて、片付けるのに時間がかかっていたから、一緒に墨汁を吸い取ってたらあのシミができたの。」

刹那に、私は、キュロットに取れないシミがついたことくらいで険しい顔をした自分を情けなく思った。私に悲しそうな表情を見せた長女を思い出す。

険しい私の眼差しが、どうして墨汁のシミがついたのかを、長女に語らせなかったのだ。

4.温かい眼差しーもっと受け身の子育て

 我が子達は可愛い。その可愛さゆえに、親は人生経験が豊富なつもりで、転ばないように先回りをし、困らないように誘導をし、後々泣かないように講義をたれる。

上述のゴードン博士によれば、私が次女にした「忠告」のほか、親が陥りがちな「命令」「説教」「講義」「批判」どころか、「賞賛」や「辱める」こと、「注意をほかへそらす」ことも、子供達自身が自らの問題を解決をする力を養うことを阻害する行為としている。子供の自立心を育てないのだ。

つまり、我が子達が成長して、自分達で判断し行動するようになる時代は、親である私が生きてきた時代とは異なる。だから親の経験が、子供の人生に活きるとは限らない。そう考えれば、直面する問題に自ら対処ができるようになるよう、心を砕くべきなのだ。

自分の限られた経験から子供の行動に「批判」の目を向けたり、「注意」や「説教」をすることの弊害は、子供が親に心を開くことが少なくなること。もっと、温かい眼差しをもって、子供を見守り、子供の話に耳を傾ける環境をつくることこそ親の果たすべき役目なのだ。小手先ではなく、心底、子供の考えや思いに信頼を寄せる感覚をもつことで、子供たちからの自発的な主張を促すのだと強く感じた出来事。

墨汁のついたキュロットを見るたびに、子供を信頼することの大切さについて、思い出そうと思う。
 


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