テーマは「いのち」

助産師として病院で14年間。最初は大学病院の産婦人科で勤務しました。婦人科も併設していたので、まさに「いのち」をダイレクトに感じる病棟でした。

今でも忘れられない出来事があるんです。命って繋がってるんだって強く思ったこと。

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私の担当していたガン末期のAさんと陣痛が始まったBさん。

Aさんの容態が悪化してご家族を呼ぶ頃、順調にお産が進んだBさん。

無事に赤ちゃんが生まれ「おめでとう~!」分娩室が一氣に幸せと喜びで一杯になった瞬間、後輩が分娩室へ飛んできてAさんが遠いお空へ旅立ったと…

こんなことってあるんだ…

命が燃え尽きお空へ戻っていった、その瞬間にこの世に産声をあげた赤ちゃん。

勝手かもしれないけれど、その子には強く強く逞しく生きていってほしい…そう願わずにはいられませんでした。


命ってこうやって繋がってるんだと思った出来事。きっと世界中のどこかで、こんな風に繋がっているんだと思うんです。

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そういえば私が助産師を目指したきっかけも「いのち」でした。


父がガンになり手の施しようもないと宣告され、痛み止めの麻薬で朦朧とさせるしかなかった日々。日に日に弱っていく「強くて大きな存在」だった父をみていくのが辛かった。

そんな時に看護実習でお産の見学があったんです。


経産婦さんで助産師もベテラン。とってもスムーズでとっても美しいお産でした。言葉にするのが難しいけれど、学生だった私が見ても「ご安産」ってわかるほどで、出血もほとんどなくて、赤ちゃんは本当に元氣で赤くて♪本当に幸せで溢れていました。

生まれて初めて見たお産に大感動です。「生まれるってこんなに美しいものなんだ」と心から思ったお産でした。


父は病床で死を待つ日々…どうしようもなく不安だったし怖かった。かたや、未来のある元氣いっぱいの赤ちゃんの誕生。


この正反対な出来事…「いのち」という部分で共通していると氣付いたんです。

もともとホスピスケアを志望していた私。父の看病をしていくうちにその難しさを知り、感情移入するようになり…

でも、そのタイミングでお産の素晴らしさを知った私は「同じ命のケアをするなら生まれてくるお手伝いがしたい」そう思うようになりました。

その当時は父の死を受け入れられず、ホスピスケアから逃げているだけじゃない??と苦しくて弱い自分を責めたこともありました。

生まれてくるいのちのお手伝いをしよう!

そう思って就職したのは産婦人科…まさに「いのち」の現場だったんです。

はじめは戸惑い、父のことが思い出されて辛かったけれど、途中から氣付いたことがあって…

父をガンで亡くしているからこそわかる家族の想い。モヤモヤしたり漠然とした不安や恐怖…

そして今度は医療者としての立場、想い。その両方がわかるのって貴重なことなんじゃないかなぁと。

父が身をもって教えてくれた「いのち」に関わるのが私の使命だと思うようになりました。


だから私のテーマは「いのち」なんです♥️




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