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共鳴

アンドレデジール 最後の作品

素晴らしかったです。
後からじわじわとくる感動と
清々しさ。
観劇中よりももっと
なぜか終わってから
身体から震えが来て
涙がでました。
時間差にも押し寄せる感動。

不思議な作品でした。

ちょっとだけ
ネタバレになる可能性がありますので、
お気をつけてください。


さて
初演、というターンにチケットを取るというのはなかなか緊張感のあるもので。ストーリーの説明もぼんやりして、もちろん前評判もない。
なんとなく取った2枚のチケット、いざ誰かを誘おうと思った時にどうオススメしていいのやら度々悩むところ。
こういう時に、ちょっと有名な方や、もしくは一度でも観たことのある俳優さんなんかだと非常に誘いやすいところがある。
私がこのチケットを取るきっかけは、清塚氏の音楽。私が友人を誘う餌(というと聞こえが悪いが)は、上川氏。でした。
以前、四季の舞台に誘い、さぞかし感動してくれたので。

いやぁ、
素晴らしい。

舞台上の半透明のキャンバス。
演出では
素晴らしい絵画が描かれていて。
でも、それは向こうが透ける
単なるキャンバス。

でも、観客一人一人の想いをのせた 
素晴らしい絵画が、
それは決して目で見ることのできない
でも確実に私たちの中に存在する絵。

私自身の絵が
そこに描かれている。
その通り、

そう思わせる演者の魂。

表現とは
その形が細分化するほどに
固定されたもの、
いわゆる型にはめられてしまう。

例えば
私の心の中にある想いは
言葉にするとすぐに
誰もの言葉の範疇に収まってしまう。

絵画も同じで
作品を見るときに感じる想いは
それぞれでも、
それが赤なのか青なのか
明るいのか暗いのか
といった認識の範疇にはめられてしまう。
絵画を扱ったストーリーなのに
その色も形も
言葉以外では表現されない。

それは
何百年も前から語り続けられた
神話のように、
起きた出来事は言葉になっても、
それがどんなものかの形を作らない。

この作品の半分は
観客の想像の中で出来上がる。
圧倒的な存在感のメロディに乗って。

そう、
音楽もまた美しい。
悲しそうな曲、嬉しそうな曲、
メロディを聴くだけなら
なんとなくな雰囲気が伝わる、はずなのに
これが演者と混ざると
不思議な化学反応を示して、
想い。という例えようのない感情の揺さぶりを
起こす。

人がものすごく興奮すると
いろんな感情が混ざって
涙が出たり、
声をあげたり、
飛び上がったり、
するのだろうけど。
そういう感情の波が
音楽に乗って響いてきた。


絵画を
音楽と言葉で魅せられた。

そして、
目に見えない響きは
そのまま
私たちの心にも染み渡る。

笑顔と涙で。

是非また足を運びたいです。
そして、
また
自身の今が変化するたびに最後の作品も
変化をするのでしょう。

才能は
目に見えるものではなく
表現するもの。

表現することは
命を削ること。

そして
人が生きると言うことは
誰かと共鳴すること。

表現したものが
誰かの心の中に入り込む瞬間
ものすごい勢いで
心が震えるのだろう。


それから。

ダブルキャストということで
二組のタッグをみた。

どちらがいいか。

と言われると
正直、それぞれよかったと思う。
(ありきたりな回答ですみません)

ウェンツ氏の演技は細やかであった。見えないところまで演技を止めない、舞台ならではのスポットライトの外、があった。もちろん、WAT時代にみせていた歌の上手さも安定していた。
上山氏は今回初見であったが、なかなかこちらもユニークで。歌の上手さは格別、上手にウェンツ氏の声を消さないようなアシストをしていた。
トータルとして、この舞台を楽しみ、次は何を仕掛けようかとフツフツとしているようだった。また、全体的に繊細で細やかでもあった。

ダブルキャストのもう一方、上川氏のエミール。
もう彼の演技や歌唱力は最高である。毎度、期待を裏切らない。
そして、時折の観劇後感想をみていると、いろいろと賛否両論な小柳氏。
もう、このミュージカル、
とにかくジャンの歌が難しいのである。
音が遊び、舞ったとしたら、不時着する。
それを歌いこなすことは、容易ではないことが想像される。
ただ、小柳氏の声は本当にいい。鼻を響かせるような高音の音から、ビブラートを効かせたような低音。竹を割ったような声色が、感情をストレートに表現する。また、何より高身長で舞台映えする。
彼はもっと舞台に立つべきだと思う。それくらいの存在感があった。
ただ、ミュージカルには音の玄人がたくさん集まる。どうか、歌唱力をどんどん上げて、もっと挑戦してほしい。
で、話は戻るが、上川氏がしっかりとアシストして舞台を引っ張っていてくれるので、二人の感情は真っ向からこちらにぶつかってくる。
とにかく二人の声量と熱量とパワーが、感動を呼ぶのだ。
あれはあれで、本当に清々しい。

と。
それぞれの良さが助け合い、重なりながら、観客を取り込んできた。
わかりやすくいうと
前者は文化系、後者は体育会系。
そんな違いがあったなと。

最後に、
総じて今回の舞台の面白かったところとして、伝えている内容は一緒なのに、毎回表現が異なっていたり、アドリブが入ってきたりと、それはもう何度も楽しめた。
こんなに自由度のある演出というのはあまり見たことがない。
重要なところは決められているが、あとはきっと着地地点が一緒なら自由なのかなぁと。
作り手と表現者の信頼関係を強く感じた。
それがこのミュージカルの面白さ、なのだと思った。

なかなかsold outとはならなかったが、私的には今後も再演してほしいお気に入りとなりました。

大阪まで、走り切ってほしいです。






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