見出し画像

【読書日記】 「通天閣さん 僕とママの47年」 高山トモヒロ 著

完全に貸したことを忘れていた本

私には、夏に一度だけ会って本を貸す友達がいます。
近所に住んでいるママ友なので、会おうと思えばいつでも会えるのですが、彼女の仕事は夜勤もあるため、なんとなく初夏のある一日、いつものコーヒーショップで待ち合わせして、ゆっくりお茶を飲みながら一年分のおしゃべりをする習慣が出来上がっています。

その時に、去年私が貸した本10冊ほどを彼女が持って来て、また私が貸す、という年一回のルーティンです。

前回、この友人が私に「ありがとう」と言って返却して来た中に、今日のタイトル「通天閣さん・・・」があったわけですが、この一冊を見た時に
「これ、私のじゃないよ」と言い放った私。
本当に、見覚えがなかったのです。

画像1

友人は、「いや、美江さんから借りた本はこの袋に入れておくから絶対美江さんので間違いないよ」。

実は、彼女が返却してくれるバッグにこの本がちらっと見えた時、
「読んでみたいな」と思ったのです。
だから、私が「これは私の本ではない」と否定しても、友人が「いや、美江さんのだよ」と言ってくれてうれしかったです。

YouTube、作ってあります!

先をお急ぎの方、ぜひYouTubeだけでもご視聴して行ってくださいませ。
よろしくどうぞ!


<あらすじ>

親の離婚や借金、失業、進学、就職、結婚、介護などなど、これら項目のひとつやふたつは、私たち誰しもが経験し得る出来事で珍しくもないように思えても、「お母さんが家から出ていく」ことは幼い子供にとっては天変地異。
タイトルの通り、僕とママの47年間を素直に丁寧に描いている作品です。
作者は、芸人の高山トモヒロさん。

*          *         *

主人公で語り手の高山知浩は、両親と姉、妹、弟の6人で大阪・日本橋の外れて暮らしていた。
父は小さな工場を経営していたが、ママが手がけた事業が失敗しふたりは離婚。
ママが家を出て行き、父は子供たちを連れて大阪府大東市に転居。
母親不在の貧しくて寂しい生活が始まった。

野球好きだった知浩は高校で野球部に入り、のちにコンビを組むことになる河本栄得と出会った。

本書には書かれていませんが、高校の野球部では高山トモヒロさんは阪神タイガース監督の矢野さんとクリーンナップを打っていたそうです。

高校生のある日、京橋駅前の自転車置き場で知浩はママと偶然再開する。
離婚後、ママの行方はママの母親さえ知らなかったが、京橋のスナックで働いていたらしい。
知浩は、以来、他の家族には内緒でママと交流を始める。

高校卒業後、定職に就かずにいた知浩を河本が誘い、ふたりはNSCに入学。
お笑い分析に熱心で、数いる芸人の中からなんとか抜きん出ようと頑張る河本に必死でついていく知浩。
しかし、無常にも河本を病魔が襲い、25歳で夭折。
相方を失い、自暴自棄になっている知浩に周りの人々が手を差し伸べ、また前を向けるようになった頃、ママの病気が発覚した。
アルコール性能萎縮と若年性アルツハイマー。
ママの介護が始まった。

ふたつの病気を抱えているママは、段階を追って症状が悪化して行くが、それに応じて知浩夫婦はママの預け先を調べて行かなくてはいけない。
物語が始まった頃は、高度成長期とはいえ、のんびりした昭和の時代を感じられたが、ママの介護のあたりから話しは加速度を増していく。

*       *       *       *

ママが亡くなり、遺品の整理をしながら知浩がママとの日々を回想するところでは、また時間がゆっくり流れ始めます。

画像2

読後感

作者の生い立ちと家族のこと、お母さんとのことを真っ直ぐに書いている本書。
やがて必ず訪れる親の死に際して、この本は見送る側に寄り添ってくれる、そんなふうに思える一冊です。

そこまで感動したにもかかわらず、一度読んだことを完全に忘れていたうえに、友人に「この本は私のではない」とまで言い切る全否定。

なぜ?



読みに来てくださった方に居心地の良さを提供できるアカウントを目指しています。記事を読み、ひと時あなたの心がほぐれましたらサポートお願い致します。