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【読書日記】 うかれ女島(うかれめしま) 花房観音 著

今朝のYahoo!news から思い出した一冊

今年の2月に読了した一冊。

今日、たまたまYahoo! newsにこんな記事が載っていたので、「うかれ女島」を思い出しました。

<記事のあらすじ>

かつて、「売春島」と呼ばれた島に、大阪府立高校の修学旅行生が訪れた

「伊勢志摩国立公園内に浮かぶ三重県志摩市の渡鹿野島(わたかのじま)。漁業と観光業が主な産業で、周囲約7キロ、約180人余りが暮らす小さな島はかつて「売春島」と呼ばれた。長年、風評に苦しめられてきた島だが、10月に初めて修学旅行生が島内に宿泊した。

渡鹿野島は江戸時代に船が立ち寄る「風待ちの島」として船乗り相手の遊郭が栄えた。昭和の終わりから平成の初めにかけては週刊誌などで「売春島」として取り上げられ、今もSNS(会員制交流サイト)での書き込みが目につく。

この島に、大阪府立高校の修学旅行生たちが訪れた。
コロナ禍で修学旅行が中止、延期を余儀なくされる中、大阪府立長吉高校はコロナによる不測の事態が起こっても、保護者が車で迎えに来られる範囲内での行き先を模索していた。
住民らは対岸と結ぶ渡り船から下船する修学旅行生を歓迎。「島の歴史が変わる一日」。そんな声が聞こえるなど、島のイメージを変えたいという思いが伝わる。」

小説「うかれ女島(うかれめしま)」

と言うわけで、今朝、渡鹿野島(わたかのじま)の記事を目にしたのも何かの縁と思い、今年2月に読んだ小説についてレビューを書きたいと思います。


小説自体に、このどこか時代に取り残された退廃的な島の場所は明記されていませんが、近畿二府四県の出身者なら島の描写だけでどこにあるのかわかるでしょう。
ただ、島が実在するのかどうかまでは・・・。
物語の中の架空の場所では?と思い調べてみたら本当にありました!

そして、今日のこの記事。
小説を読んだ時はぼんやりしていた島の存在が、Yahoo!newsの記事で私たちと同じ時間を刻んでいる実在の島なのだと腑に落ちました。

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あらすじ

現在を東京で生きる若い会社員男性・大和と、かつて「風待ちの島=売春島」と呼ばれた島で風俗業に従事した母。
母が島で溺死(自殺か他殺かはうやむやのまま)したが、メモが残されておりそこに「死ぬまでにこの4人の女たちに会いたい」と書かれていたという。
大和はその女たちに手紙を出し、母の死を知らせた。
いずれの女性たちもかつては島にいたことがあり、現在は会社員の妻になっている樫谷貴子、女優の愛野麻矢、亡くなってしまった春日まどか、以外で唯一、鳥井忍だけが大和に返信をくれて一緒に風待ち島に行く。

現在は健全なリゾート地に変わりつつある島で、大和と忍は「売春島」として当時そこにいた母や女性たち、彼女たちを取り巻く人間関係をなぞる。

読後感雑記

登場人物のひとり、春日まどかのモデルは「東電OL殺人事件」ではないかと思いました。

帯を読んだ時は、もっとスリリングなミステリーかと思っていましたが、それほどでもないように感じました。
しかし、そこに世間を騒がせるような大事件は起こらなくても、人に歴史あり、を感じさせられました。

私にとっては初めての作家・花房観音でしたが、経歴がなかなか面白く、応募した小説で『団鬼六賞』をとってしまうところが、花房氏の作風なんだろうな、と思います。
「うかれ女島」にも団鬼六的な空気が漂っていますしね。
私個人の感覚ですが、岩井志麻子や桜木紫乃と同じ匂いを感じます。

最後の最後に驚きの展開がありますよ。


新作も出ているので、こちらも読んでみたいです。

三重県の立ち位置

最後に、この伊勢湾に浮かぶ渡鹿野島(わたかのじま)。
三重県て、近畿地方に住む人たちにとっては微妙な県ではありませんか?
(三重県の方、すみません!)

関西といえば関西ですが、何か違うような・・・。
私としては、三重県と岐阜県は「関西」とか「近畿地方」と言う枠から外れている・・・、いや、枠に収まりきらない県なんですよね。
(三重県と岐阜県の方、本当にすみません!)

思うに、三重県は紀伊半島の奥深く、アクセスの悪さのために未だに神秘の県。
だから、「風待ちの島」のような物語の背景にぴったりなんだと思います。

昭和の都市伝説好きな人、ぜひ読んでみてください。

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