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学長が松永監査役にいろいろと聞いてみた。

こんにちは学長です。今回は松永監査役に話を聞いてみました。私は監査役を会計士の亜種だと思っていました!すみません。それでは、ロイヤル・キャロラインの話をどうぞ。


会社代表として裁判所に出頭、被告を経験

―では最初にご経歴から教えてください。

はい。現在も仕事をしてますが、キャリアのスタートはもう50年以上前からになります。僕はもう、いい年なので。

―失礼ですが、今、おいくつですか?

77です。

―そうなんですね!結構良いお年ですね。

うちの長男が今50近いから...CFOの吉岡さんと同じくらいかな?

―ええっ!ちょっと待ってください。吉岡さんって社内で「おじいちゃん」って呼ばれているんですよ!

そういうレベルなんですよ。ですから、もう50年以上前に仕事はスタートしたっていう感じですね。

当社のおじいちゃんのお父さんでもおかしくないご年齢の松永監査役。育ちが良さそうだなぁ

―最初はどんなお仕事をされてたんですか?

大学卒業後は石油会社に入って、最初は財務部にいました。その中でも外国為替の担当で、原油を買ってドルで決済をするという仕事をやってましてね。今は1ドルが147円とかですけど、当時は1ドル360円でした。

―教科書で習った時代の話ですね。

ずっと360円が続いていた…その最後の頃ですね。その後、日本の円が強くなって308円になって。それからどんどん下がっていったと。1970年の最初の頃はニクソンショックとかもあって、為替予約とかそういう話が出てきた時代でした。(歴史的な話が続く…)
その後、会社の合併に伴って総務から人事に移って、別会社の人事をやったり本社に戻って子会社の管理をやったりしてました。当時、海外との合弁会社があったので、テキサスやオーストラリアやニュージーランドなど、結構色々なところへ豪華な出張に行った経験がございます。
子会社関係をやった後はまた人事に戻って、海外にある子会社や現地法人を管理するためにシンガポールやアブダビ、ロンドンやニューヨークなども行きましたね。石油会社なので、石油を採掘してる現地に行くんですよね。あっちこっちの海上に原油を掘る井戸があるわけです。島には井戸で掘った原油を集めるタンクがいっぱいある、ギャザリングステーション(集油所)というのがあって。そこにヘリコプターで行くわけですよ。まあ乗ったのは30分くらいなんですけど、その時初めてヘリコプターに乗りました。

―かっこいい!(松永さん、凄い楽しそうに話すなぁ!)

まぁ良い経験でございました。その後は四日市の工場に転勤になって管理部門の副所長をやったり、本社に戻ってきて会社が独禁法で訴えられたので裁判所に出頭することになったり。

―ええ!どういうことですか?

当時、他の石油会社も何社か訴えられたのかな。結局裁判になったんですよ。会社として誰かが出頭しなきゃいけないんですけど、社長を出すわけにはいかないので、会社代表で本部長の私が裁判所に出頭して被告として並びました。それでうちの社員も捕まりまして、、拘置所に差し入れしたりしました。出入りする時にマスコミとかが待ち構えているので、注意して行った記憶があります。

―それも他ではできない経験ですね!

まぁ、良くはないけど、初めての経験をしました。その後、60で定年になったあと少しプラプラしてたら、たまたま、以前から親しくしてた会計士さんに、50人ぐらいしかいない小さな会社にお誘いいただいて経営管理本部長を務めました。それで1年経ったら、急に「監査役をやってもらえませんか」って言われて。そこから監査役としてのキャリアが始まったということです。結果的にその会社に10年いて、その時もう71だったかな。辞めてまたプラプラしてたら、今度は監査役仲間の横山さんから「まだ70だからできるだろう!」ってことでみんマをご紹介いただいて入った…まぁこんな流れですね。

―ここで当社の非常勤監査役で米国公認会計士の横山監査役が出てくるんですか!

そうです。監査役としてのキャリアは14、5年、みんマの監査役としてはもう少しで4年になりますね。

ザ・エリートの風格。品があって格好良い!

あとは、監査役協会っていうところがあって、私はもう10年前から入っているんですけど、そこの幹事を7〜8年ほどやっていました。協会の中には理事が50人くらいいて、そのほとんどが有名な上場企業の監査役ばかりなんですけど、実際監査役協会に登録してる監査役7000人ぐらいのうち、半分は非上場企業の監査役なんですよね。そういう背景もあって「大企業ばかりが理事をやっていいのか、中小企業の話も少し聞いてくれ」っていう話があって。

―確かにそうですね。

中小企業は中小企業で色々と悩みもあるので、そういうものを反映した監査役協会でもあるべきだろうということで、幹事をしていた後半の3年間ぐらいは、中小企業の代表監査役として理事もやっていました。実はその時の監査役仲間5~6人と一緒にこういう本も作ったんですよ。

ーお、『監査役実務入門』!そのまんま教科書みたいな本ですね。

そうなんです。もともとは、これの元となる監査役の入門テキストみたいなものを作って仲間とまとめて、実務会に新しく参加してくるメンバーに配ってたんですよ。そしたら、監査役協会の職員から「出版社をやっている人を知っているので、せっかくそういうのを作ったんなら本を出したらどう?」って言われて、結果的に出版することになったんです。僕らみたいに管理部門出身の人にとっては、監査役の仕事内容は比較的近い分野なのでなんとなく分かるんですけど、営業とか技術系とか、そういう人が監査役になるケースも結構あるんですよ。

―そうなんですか?

います、います。半分まではいかないけど、2〜3割はいるんじゃないですかね。そうすると、急に監査役になっても、来月から何をしたらいいか分からないということになるんです。そういう人たちに向けて、より実務ベースで何をしたらいいのかが分かる内容にしました。分かりやすい言葉で書いていて、ページ数もそんなに多くないです。あと、監査役は監査報告書だとか色々書類を作らなきゃいけないんだけど、そういった書類の雛形もいっぱい入ってます。本だけでも20ページくらいあるのかな。ウェブにもWord版のテンプレートがあるので、それを参考にしていただければすぐに書類が作れます。別に儲けるためとかではなく、ただ皆さんのお役に立てればということで作りました。

―すごいっすね〜(分かってない)

そんな経歴で50年近くやってきました。まだ元気なので、もうしばらくはできればと思ってますけど。

―ずっと松永さんに監査役をやっていただきたいんですよ!

やっぱり僕も健康面は少し気になってて。ちょっと血圧が高いとかね、あるんですよ。若い時は全然気にしなかったんだけど。もし急に監査役がぶっ倒れて欠員になったりすると、特に上場企業の場合はすぐ別の人を選任しなきゃいかんとかそういうのがあったりするので。年を取ってくるとその辺はちょっと気になってきますね。

※名門私立進学校の理事長の写真ではございません

みんマのスピード感は「すごいものです」

―そうは言いつつも、そもそも監査役とは何であるのかを私は分かっていないんです。監査役の役割について教えてもらえますか?

いいですよ。まず会社という組織では、株主総会で取締役と監査役が選任されるんですね。取締役は、株主から会社の業務を委託をされて、業務を執行して利益を得て株主に配当するという役割をやってるわけです。株式会社の中で取締役は必ず必要ですが、非上場の会社では監査役は任意です。上場企業では監査役は3人以上必要ですが、非上場だと1人とかですかね。で、監査役は何をするかというと、取締役の業務執行が適正に行われているかチェックするという役割を持っています。例えば変なところに金を貸すとか、物を売るにしても通常100っていう単価で売ってるのに、知り合いのところだから50で安く売るとか、そういう違法行為や、取締役の法令違反がないようにチェックするんです。その結果を株主総会で、株主さんに報告するというわけです。で、よく今、新聞とかで会社の不祥事が取り上げられていますよね。もし社内でそういう怪しい動きがあれば、内部監査室とか通報窓口を通して監査役の耳に入るので、取締役にストップをかけるとか、あるいは取締役会で社外取締役や社外監査役の力も借りながら、そういった行為をストップさせる、正しい方向に導くという役目もあります。

―お金の使い方で問題がないかを見てるのだと思ったんですけど、お金だけじゃなくて、会社として良くないことが起きていないかを監視する役目なんですね。

そうですね。当然お金も見てますけど、うちの場合、会計監査はある程度は会計士さんにお任せしてるんです。監査役が見なくていいというわけじゃないんですけど、その部分は会計士さんの方がより専門的な知識を持っているので、見ていただいてます。3か月に1回、その結果を会計士さんからご報告をいただいているというスタイルですね。なので、今私がメインで見てるのは、取締役が行う業務の執行についての監査ということになります。

―そうなんですね。理解しました。 松永さん自身は大手の会社で管理部にいて、色々な会社や部署を見てきたわけですが、当社のあり方について何か感じることはありますか?

ソフトやアプリケーションを積極的に導入して省力化が進んでいるし、導入にあたっても権限委譲が結構進んでいる印象です。つい先日も、ジョブカンからバクラクにリプレイスしていましたよね。ちゃんと手続きを取ってはいるけど、あちこちに面倒な根回しをしなくて良くて、コスト面や利便性の合理感を説明できれば、担当者が権限を持ってすぐに導入できるような感じがしているので、その辺はやりやすい会社かなと思いますね。それから、毎月1回経営企画チームのメンバーとミーティングをしていて、そこでは監査役が気になったことや改善してほしいこと、あるいは情報的なものを流すとか、そういう意見交換をしています。そこで伝える改善要望などもよく聞いてくださって、迅速に実行してもらってるので、とても助かっていますね。必要によっては浜野さんの耳に入ってすぐ改善していただいたりとか、その辺はかなり迅速ですよね。

―なるほど。スピード感があるというところは、みんマらしさかもしれないですね。

すごいものです。月次決算も5日でまとめてますよね。5日で決算ができるってなかなか大変なんですよ。やっぱりそういうところはしっかりしているなと感じますね。今はまだそんなに規模が大きくないですけど、これからどんどん大きくなっていって、子会社連結になってくるとまた大変だと思いますけど。それでも今できてるなら多分、大丈夫かと思います。

なぜこんなにも優雅なのか。監査役の仕事の中身よりもそこが気になる

ロイヤル・キャロライン、まだ出来上がってないんですよ

―では、一番メインで聞きたかった、趣味の話をさせてください。木製帆船模型同好会に所属されてると伺って、調べてみたら「ザ・ロープ」という団体に所属されてるんですね。

そうなんです。この協会はあと2年で50周年を迎える、日本で一番古い歴史がある帆船模型同好会です。東京に本部があって、120人ぐらいメンバーがいるのかな。平均年齢はみんな僕と同じくらいなので高齢なんですけど。東京のザ・ロープの他に大阪・名古屋・福岡とか、全国10ヵ所くらいに他の同好会があって、それぞれ活動しています。僕は東京のザ・ロープに所属して15年ほどになるんだけど、ここでも会計の幹事をやってるんですよ。

―ここでも幹事をされてるんですね!

やってます。年に何回か幹事会とか例会をやるんですけど、会計だから毎回出席してお金を集めなきゃいけないんですよ。まあ面白いっちゃ面白いんだけど、結構大変です。元々は帆船模型というのは、1500年ぐらいの大航海時代に、王様が船を作る時の見本として、こんな形でこんな設計でこのくらいの大きさでっていうことで作ったのが始まりなんです。活動としては、基本的には4月に有楽町の交通会館で展示会をやっているので、年に一回一隻作って出さなきゃいけないんですけど。僕はもうこの4〜5年、なかなか忙しくて作ってません。ヨーロッパに模型のキットを作っている会社がいくつかあるので、そういったところから輸入したものを使って作るわけなんですけど、この船を作るのに1年、長いと3年ぐらいかかるんですよ。細かい作業なので眼鏡をかけないと見えないしね。作ったら作ったで、ベテランの人に「これはちょっと糸の結び方が違う」とか言われてね。結構大変なんですよ。

―それは大変ですね。ちょっと調べたら、松永さんが作った船が第42回帆船模型展に出ている写真を見つけました!制作したのはロイヤル・キャロラインですよね。

ロイヤル・キャロライン、まだ出来上がってないんですよ。

美しき未完のロイヤル・キャロライン

―え!これまだ完成してないんですか?

この時出展したのは、未完成なんです。大砲とかマストまでは立ってるんだけど、ロープを渡さなきゃいけなくて。でも間に合わなかったので途中で出したんですよ。中の船室も模様をちゃんと再現したり、ライトも付けたり、結構凝って作ったんですけど。まだ完成してません。

品のある優雅な船体が精巧に再現されている

―内装とかライトはキットに入ってないですよね?

ええ、それは自分で作ってます。ロイヤル・キャロラインの本があるんですよね。

―アナトミー本ってやつですか。

そうそう、よくご存知で。アナトミーの中に内装の様子が手書きで書いてあるんですよ。それを真似したり、ぴったり同じのは出来ないんだけど、そんな雰囲気のものを作ったりして。そこに額を飾ったり、キャロラインっていう女王なんですけど、その女王らしき写真を飾ったりとかいうことです。

船室の左がジョージ二世で右がキャロライン(たぶん)

―写真で見たんですけど、船室の額にすごく鮮明な肖像画が納まっていて。ジョージ二世とキャロラインの肖像画をインターネットで探したんですね。

そうです。ただあれは結構でかくて、70cmぐらいあるんですよね。ガラスのケースに入れるとすごく大きいんですよ。今までは部屋に置く所があったんだけど、うちの一階に、最近下の娘がリフォームして引っ越してきたもんだから。

―そうなんですか!娘さんが戻ってきたのは嬉しいことじゃないですか!

でも、模型を置く所がなくなっちゃって。誰かにあげるとしても、置き場所を見つけるのが大変なのであんまり好まれないんですよ。だからもうあんまり作らないかな。仕事もあるのでなかなかね。まぁ、50周年の展示会が再来年にあるので、その時にロイヤル・キャロラインを完成させて出そうかなと思ってはいますね。

―なんか楽しそうですね!それにしても、松永さん、「幹事」とか「監査役」とか「理事」とか、組織の面倒を見るの好きですね!ロイヤル・キャロラインが完成してもしなくても、当社の監査役は続けてくださいね!

「帆船模型には完成がある。でもみんなのマーケットに完成はない」とか言いそうな松永さん

本当は趣味の帆船模型の話を沢山していただこうと思っていたのですが、あまり聞くことはできませんでした。むしろ、木製帆船模型同好会の「幹事」の仕事のお話の方がイキイキと楽しそうにお話されていました。
たとえそれが面倒で大変な役回りであろうとも「誰かのためになることをしたい人」なのだと思いました。ご自身のロイヤル・キャロラインが完成しない理由が分かった気がしました。