オリジナルショートストーリー「優しい星の住人」

「優しい星の住人」

その子は優しい星の住人にずっとなりたいと願っていた
そこに住む美しい人たちに憧れて「優しい星」をずっと眺めていたのだ。

「優しい星の人達 素敵だな」

その子はアスファルトの隙間から咲いた花にいつも話してかけていました。

私がいつか「優しい星」に行って美しい人になれたらきっと広いところに植え替えてあげるからね

それまで「頑張って」と笑顔で声をかけるのが日課になっていました。

ある日「優しい星」の門が少し開いていた

あいてる
ちょっとだけ入ってみようかな
直ぐに出ればいいよね

その子は優しい星にそっと入りました
すると門はしまってしまった

閉まっちゃった•••どうしよう
そう思いながら中に進む

美しい広場楽しそうに話す人々
人混みに紛れるようにその輪に加った

嬉しくて
そこにふさわしい人になりたくて、その場所に残りたくて必死に背伸びをして自分を取り繕った

だけど背伸びして取り繕った傷は少しづつ広がっていく
取り繕っても、取り繕ってもほどけて行く糸

優しい星の人たち馴染めず少しづつ離れていく距離
それを認めたくなくて必死にしがみつく

この中に異物がいるようだ
そう優しい星の管理人が周囲を見渡した 

異物?排除しないと
優しい星を守らないと

どこからともなく声が沸き上がった

その子は見つからないように皆と同じように振る舞い、同じようにうなずき笑った

異物を排除しないと

痛い・痛い・痛い•••
心がチクチク痛んだ

苦しい・苦しい・苦しい   
暗い海に静かに引き込まれていく

あんなに憧れた星なのに•••
その場所に入れるのに 
私はどうしちゃったんだろう

結局その子は優しい星では異物でしかなかった

どんなに背伸びしてもどんなに作り笑いをしてもどんなに明るく振る舞っても優しい星の空気にはなれない

このまま息をひそめていればきっと優しい星にいられる
このままきっと穏やかに過ごせる

だけど何故か心がきしむ

ぎりりぎりり
何かがちぎれる音がする

このまま溺れてしまおうか
溺れてしまった方がきっと楽だろう

そんなとき優しい星の美しい人に声をかけられた

異物はあなたですよね?
あなたの存在はみんなの輪を乱す
私はみんなを守らなければならないの
優しい星の美しい人が優しく話かける

その子はただただ下を向いていた

やっぱり私は異物なのか
その子は心の中で呟いた

私がいると皆んなが不幸せになってしまう
その子は自分を責めた

道端の小さな花がその子に話かけました
「あなたは此処にいて幸せなの?なんだかとてもつらそう」

つらそう?
私はつらそうなのか?
その子は始めて自分の姿に気が付いた

そこにとどまることに必死で自分の姿を想像したこともなかった

アスファルトの隙間に咲いていた花を覚えていますか?
私は外の花たちから貴女の話を聞いていました
優しいあなたの気持ちが眩しくて私が門をあけたのです。
だけど今の貴方は私が聴いていた人ではないようです。

元気な声で小さな花たちは勇気づけられていました

その子は気付きました
無理してその場にとどまるより自分が自分らしくいられる場所を探せばいいのだ

ここを出て新しい世界を見つけよう

すると優しい星の門がその子が通れるくらいに小さく開きました

その子はニッコリ笑いながら道端の花たち声をかけました

ありがとう
私は私が輝ける場所を探します

優しい星の外に出たその子は
満面の笑みを浮かべて楽しそうに走りました。

みんな元気だった?
その子は花や木々、鳥や猫にも声をかけながら走りました

その子の心には小さな希望の光が灯りました

新しい世界に踏み出そう
自分が自分でいるために

その子がそう思うと街中がキラキラと輝きはじめました。

その子は知りました
自分の心が煌めけば全てが美しく優しく輝くことを✨✨✨

物語を朗読しました。良かった聴いてください

作 森山花音
語り  花音

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