代表1人の小さな合同会社の作り方

代表1人の小さな合同会社の作り方 第2版


こんにちは。

この2018年6月で公務員を退職し、機械学習をやっている「カレーちゃん」です。

退職した後に、
「自分が代表(社長)で従業員は0人」という合同会社を、本を読みながら1人で手続きを行い、
8月末に登記が完了しました。

法務局のHP、市販の本、司法書士の方が書いているWeb記事などを見ながら手続きしたのですが、「社員(出資する人)が複数いる場合や、役員が複数いる場合などの、多くの場合に対応した情報となっているため、とても分かりにくい!」という感想をもちました。

あらかじめちゃんとまとまった情報を得ることができれば、退職後すぐに合同会社を設立することも可能なのですが、私は2ヶ月弱ほど時間がかかってしまいました。

そこで、このnoteでは、社員(出資する人)が自分だけで、役員が自分だけ、従業員がなしという場合に特化して、どういう手順を踏めば合同会社が設立できるかという情報を書くことにしました。

具体的には、過去の私がこれ情報があれば
・延べ作業時間1.5日から3.0日くらい
・6万円の費用(登録免許税) + 少額の手数料
・ICカードリーダ(3000円くらいで購入する必要)
のコストで合同会社を設立することができた、という情報となっています。

(注)電子署名を行うために他にWindowsパソコンがあることが前提となっています。PCを持っていない方やMacOSの方は、ICカードリーダを使っての電子署名を何らかの方法で自分でやっていただく必要があります。

また、会社設立するとどのような手続きや手間があるかわからないという方のために、
・合同会社設立と株式会社設立、フリーランスのメリット・デメリット比較
・合同会社設立後の手続きや定期的に行う必要があること
についても、できるだけ詳細に記載しています。(これは無料の部分に記載しています)

注意事項
・合同会社を誰でも簡単に作ることができるということは間違いありません

・しかし、合同会社を設立するほうが、個人事業者と比べメリットが大きいか、デメリットが大きいかは、その方の収入・仕事・家族の状況など複数の項目に応じて変わるため、簡単にはわからないし、判断が難しいケースもあります。

・そのため、合同会社を設立するかどうかは、以下の「合同会社設立のメリット・デメリット(フリーランスとの比較など)」や他のWebの情報、知識のある方に相談するなど行い、自身で判断いただくようにお願いします。

・このnoteでは合同会社設立する場合のタスクをどのような流れで進める必要かを説明しており、全体像を理解できるように書き上げました。
 合同会社の設立は、自分で行うこともできますが、慣れないタスクで想像よりも手間がかかるため、専門家である司法書士に頼むのがお勧めです。このnoteの無料部分(特に
3.合同会社設立手続きの流れ)を読んで全体像を把握したのち、司法書士への依頼を検討することをお勧めします。

このnoteの内容は、技術書典6で販売した同人誌の内容を再構成して作成しています。

また購入いただくと、有料ページにおいて、技術書典6で販売したpdf版をダウンロードすることができます。

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1.合同会社とは

合同会社とは、日本版LLC (Limited Liability Company)とも言われる会社形態で、株式会社よりも安価で手軽に設立ができ、また、「法人」というメリットも活かせるため、最近、設立件数が増えている会社形態です。

2.合同会社設立のメリット・デメリット(フリーランスとの比較など)

会社を設立する場合の、メリットとデメリットを列挙し、それぞれ説明します。

◯ メリット
・税金を抑えられることがある
・社会保険料を抑えられることがある(高くなることもある)
・有限責任であり、資本金以上にお金を取られることは基本的にはない
・株式会社と比べ、初期設立費用が抑えられる

◯ デメリット
・毎年決算を組んで、税務申告をする必要があり、個人事業者よりも大変
・均等割の税金がかかる
・株式会社に比べ一般的ではない


◯ メリットの説明

・ 税金を抑えられることがある

会社を設立すると、年間の所得(イメージとしては利益。法人税法の表現だと、益金から損金を控除したもの)に法人税という税金がかかります。
法人税は、中小事業者の場合、所得の
・ 800万以下の部分については15%(注)、
・ 800万円超の部分は23.2%
となっており、累進課税となる個人事業者よりも低い場合があります。

(注)法人の場合は、代表である自分に支払う給料にかかる所得税と、法人の利益にかかる法人税の両方を支払うことになります。
なお、自分に支払う給料は法人の経費になるため、その分、法人の利益は圧縮されることとなります。


・ 社会保険料を抑えられることがある(注)(高くなることもある)

個人事業主である場合は、個人として健康保険と国民年金に加入することになりますが、法人の場合は会社を通して次に記載した健康保険と厚生年金に加入することになります。

・東京都の場合、健康保険料は報酬月額の約9.90%、厚生年金保険料は約18.300%となっておりこれを会社と個人で半分ずつ払います。(詳細はこちらから)

・配偶者がいる方で、配偶者の年収が一定の金額以下の場合、配偶者は一般によくいう「扶養に入る」ことになるため、配偶者分の国民健康保険と国民年金がかからないことになります。

(注)法人の場合、上記のように報酬月額の約30%が会社負担分も含めた保険料となります。給料の額が少なかったり、配偶者が自分の扶養に入る場合などは、法人を設立した方が社会保険料を抑えられることがあります。


・ 有限責任であり、資本金以上にお金を取られることは基本的にはない

合同会社・株式会社ともに、倒産した場合などに、借金や見払いとなっている費用を、個人財産から支払う必要は基本的にありません。(相手に被害を与えることを目的として故意に行った場合や個人で保証人となっている場合を除きます)

そのため、仮に事業が失敗した場合も、出資した資本金が返ってこないこととなるだけで済むので、安心してチャレンジできる仕組みとなっています。

・ 株式会社と比べ、初期設立費用が抑えられる

合同会社の場合の初期設立費用は、登録免許税の6万円ですみます。(その他、印鑑の代金やICカードリーダを購入するお金はかかります。)

株式会社の場合は、定款の認証が必要なため、定款の認証代金と手数料が52,000円、登録免許税が15万円がかかるため、最低でも20万2000円の費用がかかります。

そのため、合同会社のほうが初期設立費用を14万2000円抑えることができます。

(注)合同会社・株式会社ともに、紙の定款を作成すると4万円の収入印紙の貼付が必要となりますが、電子定款の場合には収入印紙は必要がないため、上記の費用からは除外しています。


◯ デメリットの説明
・ 毎年決算を組んで、税務申告をする必要があり個人事業者よりも大変

法人の経理や税務申告は、難しいため、税理士に依頼して決算を組んでもらったり、税務申告の書類を作成してもらうのが普通です。

税理士報酬は、会社の売り上げ規模や依頼する税理士により異なりますが、売り上げ規模の小さい会社でも決算作成+税務申告書類の作成で5万円~15万円くらい、税務顧問(定期的に、相談にのってもらったり、記帳・試算表の作成をしてもらったり税理士によって異なる)では1回1万円〜3万円以上が目安だと思います。

なお、決算の作成と税務申告書類の作成を自身でやるという方法もあり、
決算の作成であれば、個人事業者の決算と変わるところはないと思います。

しかし、法人の税務申告書類の作成は、法人税の知識のある人じゃないとなかなか難しいものがあると思います。
(法人の税務申告は、会計上と税務上の差異を処理するため、損益計算書と貸借対照表を基に、差異を減算・加算をするという特殊なものとなっており、この点の理解が必要となります。
場合によっては、決算の作成が済んだ状態で税務署に相談の申し込みをすると、申告書の作成の仕方を教えてもらえるかもしれません)

会社経営をする上で、難しいことは専門家に任せ、本業に注力したほうが良いと考えますので、ご自身で税務申告書類を作成することは、知識があったり・どうしてもやってみたい方を除き、個人的にはおすすめしません。

・ 均等割の税金がかかる
地方税である法人の均等割額は、概ね7万円程度(地方公共団体によって若干の差があります)、事業年度毎にかかります。
なお、国税である法人税は、所得に応じた税額となるため、赤字の会社の場合はかかりません。

・ 株式会社に比べ一般的ではない
合同会社は株式会社に比べ知名度が低いため、取引をするときなど説明を求められることがあるかもしれません。

しかし、Apple Japanや西友など、大きな会社でも合同会社の形態をとっている会社もあり、取引をする上での支障はないと考えられ、取引をする上での支障はないと考えられます。

なお、このnoteを読んで合同会社を設立するかどうか考えている方には、無関係だと思われますが、将来、株式上場を視野に入れている会社の場合には、途中で合同会社から株式会社に組織形態の変更を行うことになり、お金や手間がかかるため、初めから株式会社にしたほうが良いでしょう。

 個人事業者ではなく合同会社を設立する判断基準

デメリットに記載した、税理士報酬と均等割の税金については、会社が赤字の場合でも等しくかかり、個人事業者にはかからないので、少なくてもこのデメリットを上回るメリットがあると判断できる場合に、合同会社を作るという判断をするべきです。

3.合同会社設立手続きの流れ

ここからは合同会社を設立しようと、決断された方向けです。
法務局で登記をするにあたり、やる必要のあるタスクを、次の図に詰め込んでいます。

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A.定款作成
B.事前に用意
C.定款以外の提出書類の作成
D.法務局で用意

という大きくわけて、4つのタスクをこなした後に、法務局の法人設立窓口に書類を提出すると、法人の設立手続きが完了となります。次の4.ではこれらの手続きを順に説明します。



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