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【続いてる写経 779日め】〜女帝が送還を即決した理由

『おろしあ国醉夢譚』で興味深かった点。

まずは女帝エカチェリーナ2世の決断。
大黒屋光太夫は彼女に謁見し、これまでの苦労を語り、日本への帰国を嘆願します。

女帝は日本の漂流民に対し、深く同情し、彼らを本国へ送還するようにすぐさま命じます。

嘆願書を何度送っても握りつぶされていた光太夫たち、これでようやく帰国できることになったのです。

ただ、彼ら漂流民は捨て置かれずに、帰国の嘆願書の返答を待つ間も、手厚い支援を受け、住む場所の斡旋や、毎月一定の金子も支給されてました。

なぜ優遇されたのか、そこにはロシア側の外交戦略が絡みます。

中国大陸の横、海を挟み、島国日本の存在は認識されていたものの、
ロシアが日本へどうアプローチするべきか、きっかけを探していた模様です。

たまたまやってきた漂流民を手厚くもてなし、送還することで恩を売りつつ、交易のきっかけを作ろうとしました。

ロシアの広大な領土内では、シベリアの平原を越えて食糧や物資を送り届けるのはとても効率が悪いし、危険も伴います。
なので、海の向こうにある国から、食糧や生活用品を仕入れることができれば、願ったり叶ったり。

また、光太夫一行以前にも、日本から漂着した人々がおり、彼らの場合はロシア国内に留めて、日本語教師にしたのです。

いつか来るべき日本との交易のために、漂流民から情報を仕入れ、さらに人材育成にも活用していたとは、、
なかなか賢いです。

この施策を考えたのは誰かは不明です。
が、そこはロシア帝国の領土拡大を成し遂げ、史上最も長く君臨した女帝。

エカチェリーナ2世が光太夫たちの日本送還を即断出来たのは、同情が先ではなく、この計算が先ず働いたからと思われます。

仮に日本の領土を狙っていたとしても、最初のご挨拶としてはとてもエレガントではないでしょうか。

いきなり領土を侵犯し、武力で抑える…そんなことはしなかった。

この点は、地理的制約で武力行使は出来なかったにせよ、ごく最近よりも人道的だったのだなぁと思わざるを得なかったのです。
背景事情は違いますけどね。。

一方の日本側の対応。
ロシア帝国側の謙った態度に対しても、江戸幕府の鎖国制度の壁は厚く、官僚的。

現場は親書も絶対に受け取りません。上に諮らないと、現場では何も判断できないのです。

ここはまさに現代に通じるところ、、笑っちゃいました。

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