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さようなら、すべてのエヴァンゲリオン。シンエヴァをみた感想【ネタバレ】

※2021/3/13に書いた文章を少し加筆修正したものです。
公開当時シンエヴァを観て何を感じたか書き残して、ずっと下書きにしていたもの、改めて見返したら文章に残しておいてよかったと思ったので公開します。




映画を見る前から泣いていたのは初めてだった。よく考えたら当たり前だけど。

見たら終わりが始まる、そう思うと見る前から辛くて、新宿のTOHOのエスカレーターの時点でバレない程度に泣いていた。

それくらい私は、新世紀エヴァンゲリオン並びにヱヴァンゲリヲンに魅了され、依存していた。


以下ネタバレを含む感想になるので、未鑑賞の方は閲覧お控えください。(考察とかはしてなくてただの感想です。)













イマジナリーの世界においてけぼり

宇多田ヒカルの「Beautiful World」とエンドロールが終わって暗闇と静寂に包まれた時、頼むからもうワンシーン、何か続きを思わせるワンシーン流れてくれ、非常灯まだつかないでくれ、と思ったけど、パッと明るくなって、ああ本当に終わったんだ、と思った。もうミサトさんの予告を聞くことはきっとない。自分の大人になれなさを痛感した。

シンジくんたちは私たちファンを置いて大人になって、電車から降りてリアリティの世界へ走り出していってしまった。

こんなに夢中にさせておいて、置いてけぼりを食らって、言葉にし難い寂しさと感慨深さのようなものに支配されて、何も考えられない。私はまだイマジナリーの世界に置いてけぼりにされている。

みんなも早く現実世界に戻りな、と言われても、同じように置いてけぼりにされているエヴァファンを集めてシェアハウスをして、補完しあいたいとすら思っている。


リアリティへの引導

ダメージこそ喰らいはしたものの、今作は今までの作品よりメッセージやストーリーはかなり理解しやすいと思った。(細かやな用語やインパクト発生の条件などは難解だけど)

大人になれないファンを皮肉るような表現、フィクションからリアルへ引き戻す手法はエヴァでよくあって、シンエヴァはそれこそを第一のミッションにしているように感じた。ファンをリアルの世界へ還す、ということ。

庵野監督がインタビューか何かで、「アニメとは、現実逃避ではなく現実世界を生きるための糧になるべきもの。エヴァではそれができなかった」みたいなことを言っていた。シンエヴァを観て、私たちはいい加減現実世界へ帰れと言われているんだなと思った。

今までのようにシンジくんの心象風景を混沌とした雰囲気で描くのではなく、立ち直ったシンジくんが客観的な語り部のような存在に成長して、アスカやミサトやゲンドウと向き合うところなんか、私たちの知っているシンジくんとは遥かに違う印象を受ける。今まで自己投影の対象だった未熟なシンジくんが、急に大人になって私たちの目を真っ直ぐに見つめてくる。

テレビ版〜旧劇場版まではエヴァはいわゆる「男女」の性的役割を想起させる描写が多いと感じていたけど、新劇場版はそれがあまりなくて、特にシンエヴァは今まであんまりフォーカスされなかった親子の関係みたいなものがしっかり描かれているなと思った。基本的にエヴァは、親子の確執から始まりそれがストーリーの上でもシンジくんというキャラクターにとってもかなり重要な要素なのに、ずっとなんだかよく分からないまま、ゲンドウのこともよく分からないままだった。それがエヴァ史上初めてしっかりシンジくんとゲンドウが向き合い、ゲンドウ自らに語らせた。これはもう本当に、決着がついてこの物語は終わるということなのだと思った。

親子関係に確執があるミサトが母になり、同様のアスカも自分が今のままでいいと思えるようになって居場所を見つけたこともそう。

リアリティへの引導を渡されて、私たちもマイナス宇宙から離れないといけないんだと思った。

生命をつなぐということ

上記で「性的な表現があまりなくて、親子の関係がしっかり描かれている」と書いたけど、性的な要素と親子の要素は延長線上にあるものとして描かれているように感じた。これはシンジくんがカヲルくんに「父さんみたい」と言った時に感じたことで、レイに母性を、カヲルくんに父性を感じていたというのは何だかかなり納得した。他者に抱く感情があって、そのさきに生命が生まれるということを思い出した。

新劇場版は「生命」を連想させるものがたくさん出てくる。もともと新世紀エヴァンゲリオンの時から、生命の源である海や水面の描写、死を連想させる月もよく出て来ていたけど、特にシンエヴァは「生命のバトンを繋ぐ」というメッセージが強いように思う。加持さんが野菜を育てていたり、地球上の種をコンテナに保存していたり、妊婦さんが出てきたり、レイが赤ちゃん(ツバメ)の面倒を見たり、猫が出産したり、シンジくんが土の匂いを感じたり。

テレビ版や旧劇場版だと死の方がトラウマっぽく描かれていたような気がするけど(生も死も等価値だってカヲルくんは言ってたけど)、新劇場版は未来へ生命が繋がっていくような前向きさを感じる。エヴァっぽくないほどに。

2024あらためて

ここまでが2021年に書いた文章。
あまりの感慨深さに自分に酔ったような文章で今見るととても恥ずかしいけど、それも当時の感情なのでそのままにした。
この間友達とシンエヴァ鑑賞会をして、ふとこの文章を思い出したので見返してみたら、シンエヴァに未練たらたらでびっくりした。私はもうイマジナリーの世界から戻って現実に生きているみたい。


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