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『バイオハザード』|プレステの思い出

中学の水泳部で知り合ったそいつは、背が高くて筋肉質でガッチリしていて、顧問や先輩たちから早くも期待されていた。私はというと中肉中背で居るか居ないか分からないような扱いだった。

夏の大会でそいつは期待通りに活躍したが、活躍しなかった私と妙に気があった。大会の行き帰りも会場でも、ずっとゲームの話ばかりをそいつとしていた。

初めて聞くゲームの話が面白かったし、同じゲームを競ったり、普通に楽しかったが、そいつは夏が終わると部活を辞めてしまって、髪を肩まで伸ばすようになっていた。

ロン毛の不良が流行るような時代だったが、そいつの家に誘われて面白いからやってみてくれと言われたゲームは、パソコンの美少女ゲームで、そいつはゴリゴリのオタクになっていた。部活を辞めた理由は、ゲームをする時間がなくなるから、だった。

その後もゲームを貸し借りしたり、パソコンの話を聞いたり、別々の高校に入学しても、たまに会って遊んでいた。

高校で新たに知り合った同級生が一人じゃ怖いというので、何故か私の家で『バイオハザード』を一緒にプレイすることになった。私の家に向かう途中で、偶然、そいつと道で会ったので、折角なので三人でプレイすることになった。

『バイオハザード』のややこしい操作に余計に怯えながら、いつまでも同じ場所をウロウロしていた私と同級生。犬が飛び出してきてビクついていると、そいつが、コントローラを取り上げて、ナイフ一本で、ゾンビを薙ぎ払い始めた。

同級生は無言だった。怯えることもなく、何の躊躇いもなく、ゾンビが次々にやられていく。あっさり鍵を手に入れて、あっさり先へ進んでいく。暫くして、同級生が口を開いた。

「俺、帰るわ」

ナイフ一本でクリアするまで、私はそいつに付き合って、ナイフ一本でクリアしたことに満足したそいつも、すぐに家に帰った。

実は、ずっと違和感があった。あの頃から。髪を伸ばした頃から。美少女ゲームをプレイしながらゲラゲラ笑っている姿を見てから。ナイフ一本でゾンビに無双する姿を見て、確信してしまった。今日でもう、会うことはなくなるなって。

大人になった今ならこんなことで関係は終わらない。むしろ笑える話で大事にしたい。だが、高校生はまだ子供で、将来も漠然と不安で、違和感を抱えたままでいられるような余裕がなかった。まさかナイフ一本で、関係がその瞬間に終わるなんて、『バイオハザード』は怖いソフトだった。

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