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詩「ライブハウス」



ライブハウスで誰かが言った
「一歩、このドアを開けて出て行ったら、
俺達の歌なんて忘れてしまうだろう。
でも、それでいい。」
私は
汗をかきながら
訳も分からず叫んだが、
この言葉は、忘れなかった

帰りのバスの中で
窓に映った自分の顔を
指でなぞりながら
何度も
何度も
反芻した

彼等は
半分、しあわせを感じながら
半分、もがき苦しみながら
曲を作っているのだろう
自分勝手な憶測だが
そう思わずには、いられなかった

好きでもない言葉を
全員の手でバラバラにして
そうして一緒に読まれるより
昼下がりの図書館で
欠伸でも、かきながら
パラパラと
ページをめくられている方が
よっぽど、しあわせに違いないだろう
これも
自分勝手な憶測だが…

ライブハウスで誰かが言った
「一歩、このドアを開けて出て行ったら、
俺達の歌なんて忘れてしまっているだろう。
でも、それでいい。」
呆れるほど
サッパリとした口調で
輝かしいライトを浴びながら
彼が静かに口にした言葉を
私は
胸の中で
何度も
何度も
繰り返した
「それでいい。それでいいんだ。」

そうして
また
筆を走らせた

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