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詩「当たり棒」


人生なんて
ほとんどがハズレ
当たる方が珍しい
頭の中では
分かっている世の仕組み
でも
心の中では何かが変わる事を期待しているんだ
小さい頃から
ずっと…

当たりを手にした時
体から異常な喜びを発する
脳から快楽物質がドバドバと溢れて来て
顔は
どうしようもなく笑っているんだ
誰から見ても分かる位に
幸せというものを一人で体現している
自分の人生が少しだけでも変化する
明日の自分に期待する
きっと
今日から新しいドアが開いて
人生が劇的に変化する事を…

なんて容易
なんて幼稚
他人ひとは、きっと、こんな僕を笑っているだろう…
でも
僕の脳は、今、大量な快楽物質が
ドバドバと垂れ流されている
周りの細かい情報は、次から次へと、シャットダウンされる
僕の顔は、まだ歪んではいない
僕の脳は、僕自身の快楽に騙されている

大丈夫
心配しないで
僕の人生は
僕を中心に巡っているのだから

この棒は
ただの棒ではない
僕の新しい扉を開ける鍵
特別な当たり棒
(第三者に作られた束の間の悦びにしか過ぎないのだけれど。)

この機械的な日々…
渾身の歓びに感謝する
僕は、まるで子供の様に当たり棒を右手に持ちながら狂喜乱舞している
(僕は、何年燻り続けた?)
知らぬ間に時の迷宮に迷い込んだ
不確定な確率に縋る毎日

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