取っ手を取って

 我が家は取っ手が外せるタイプのフライパンを使っている。
 と言っても、パンは一つしか使っていないため、ほとんど外さない。洗う時に外すくらいで、しかも面倒だからそのまま洗うことの方が多い。これぞ、宝の持ち腐れ。

 しかも最近、取っ手に不具合を感じることが多くなってきたため、より外さない。セットした時に、「カチッ」と言ってくれないのだ。これは怖い。
 「万が一にも調理中に外れたら……」。そう想像しつつも、面倒くさがりの私は、「まぁ大丈夫でしょう」と流していた。

 ドラマや映画だと、こういうのは最悪を招くことが多いだろう。例えば、スパゲッティを茹でてお湯を捨てるときに外れて麺ごと流されてしまうとか、チャーハンを煽っているときに外れて米が散らばるとか。
 今回はそういう話ではない。修理する気になったという話だ。

 お昼ごはんにチャーハンを作ろうと思って取っ手に触れた。その時、気楽に「開けてみようかな」と思ってしまったのだった。

 取っ手を取って、裏にあるネジを取る。中に入っていたパーツは6つ。複雑そうではない。が、仕組みが分からない。ちゃんと開けたての状態(正常な状態)を覚えておいたのだが、時間とともに記憶が薄れていく。
 結局、バネはたぶんこの部分だろう、このパーツはこの向きじゃないとハマらなさそう、というおそらく修理が始まる。

 とあるパーツが、表でも裏でも収まりそうで、どちらかわからない。ひとまず表で入れてみようと試みる。が、蓋が閉まらない。いや、閉まるのだけど、抑えていないと溢れてくる。製造過程ではどうやっているのだろう。こっちを抑えれば、あっちが動き、こっちもあっちも抑えると、蓋が持てない。2人で組み立てるのが正しいのか。そもそも分解することが間違っているのだろう。
 足も駆使して、ようやく蓋を閉め、ネジも止め、動かしてみる。動かない……。逆だったようだ。
 ネジを外し、蓋を取り、今のパーツを裏にして、足も駆使して蓋をしてネジを止め、やっぱり動かない。パーツの向き以前の問題だったようだ。

 気が付くと30分ほど経っていた。当然、「何をしているのだろう……」と思う。私の時給は1100円に満たないくらい。この取っ手は1400円くらいで売っている。このまま苦戦し続けていたら、買った方が安いことになってしまう。だが諦めたくない。なんとなくわかってきたところなのだ。
 「なるほど、ここをこうすれば」と閃く。がうまく行かない。
 なにがなるほどだ。この修理で、何度なるほどと思ったことか。一個も分かってないじゃないか。わかっていないのに納得した口ぶりをするのは止めた方が良い、と反省した。

 そんなこんなで試行錯誤を繰り返し、ちゃんと直すことに成功した。全体で1時間かかることもなかった。

 これは勝利である。1週間以上経った今も、なんの問題もない。それどころか、修理前には弱々しかった外れるときの音、装着したときの音がとても良く聞こえる。なんとも頼もしい。

 私の手にかかれば、こんなものである。うまくいくと嬉しいし、そして楽しい。
 他に、修理できそうなものはないか。直せるかわからないから、ほんの少しだけ調子が悪くて、もし失敗しても1000円くらいでカバーできるもの……。ないか。

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