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2-6.挑戦すれば失敗すると覚悟せよ。

エーザイ会長 内藤祐次

 挑戦せよ、という掛け声はよく聞く。
 そして、失敗を恐れるなとも言う。
 しかし、どれも、失敗しないようにやれ、「失敗するな」が本音だったりする。
 そうなると、成功させる自信のないリスクの大きいプランには手をつけられなくなるし、なかなか提案しにくくなる。
 そんな状況の中で、内藤祐次は、

「挑戦すれば失敗するものだと思って始めれば辛抱できる」

と言っている。

 100年、200年という歴史のある会社が多い製薬業界にあって、エーザイは太平洋戦争開戦直前に創業した会社である。それだけに創業時は苦労を重ねたという。国内市場では後発の不利があったからである。

 そのため、常に新しいことを手がける積極的な気風が生まれ、また自社開発商品を基盤に、台湾、タイ、シンガポール、インドネシアなど、積極的に海外へも展開した。しかし、たとえばインドネシアではクーデター騒ぎや通貨切り下げに遭遇するなど、何度か撤退を考えるほどの局面にぶち当たったという。

「そんな状況を持ちこたえたのは、挑戦すれば失敗はつきもの、と考えていたためです。その心構えがあったから辛抱できた。」


 と内藤は語っている。

 内藤自身、ある海外法人が、代金回収ができない取引先から靴で現物支払いを受けたことがあって、それを日本に持ち帰って換金しようとよく見たら、全部左足用だったという笑えないような失敗も経験している。

 失敗を覚悟して挑戦せよと内藤は言うが、挑戦する勇気と猪突猛進とは違うということを認識しなければならないと諌めている。失敗するものだと思って始めるにしても、油断せずに周到な準備で注意深く進めることは必要なのである。


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