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2-5.経営には健全な赤字が、創造にはムダが必要だ。

グンゼ顧問・元会長 石田 正

 石田はグンゼの企画部門を歩み、新規事業のほとんどにかかわってきた。社内には経営ノウハウがまったくない分野への進出だっただけに、失敗は数限りないという。

「たとえば40年代後半、“緑の時代”を先取りして苗木の育成を始めたが少しも売れない。農家へ育成費や苗木の処分で億単位の授業料を払った。このほか合繊紡績やレース事業なども私が言い出しっぺで始めたが結局、モノにならなかった。」

 しかし、石田のすごいところは、そうした苦い経験をしたにもかかわらず、社長になっても新規事業へのチャレンジをやめなかったことである。
 そして言う。

 「振り返ってみると、失敗の歴史は、経営ノウハウの蓄積だけではない副産物をもたらしてくれた。社風がはっきり変わったのだ。社員の士気がグンと上がったのである。当社は七〇年代からグンゼワールドテニスなどを主催したが、これは直接的な儲けを離れた遊びである。創造にはムダがなければならない。それこそ『健全な赤字』と考えている」



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