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2-4. 失敗にも正当な評価を与えよう。

三井物産相談役・元会長 八尋俊邦

 八尋がまだ第一物産の神戸支店の課長をしていた頃、ゴム相場の読みを誤って、大きな穴を開けてしまった。悪いことに、その穴を埋めようと焦り、さらに穴を広げてしまったのである。

 それはちょうど、財閥解体で分散していた旧三井物産が再統合される直前であった。社内では統合に向けて社内を引き締めるために「信賞必罰」人事を打ち出していた。そんなこともあって、八尋は不運にもその適用第一号になり、課長から一気に平社員に降格されてしまった。

 与えられる仕事はなく鬱々とした日々が続いた。一時は本気で会社を辞めようかと考えたほどだった。しかし、一年をすぎた頃、思いがけず復活のチャンスが与えられ、死にもの狂いでがんばった。それがなければ、三井物産の八尋はなかったという。

 そうした経験をもとに八尋は、「組織が大きくなると大勢の社員をふるいにかけるために、まず、失策の数に目が行きがちだが、中には後々非常に大きな教訓となったり、方向を示すようなポジティブな結果を生む失策もあるのだから、失策は数だけでなく質の面でも評価しなければいけない」と説いている。


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