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Y7-5. 川間ドック--マリーナに残るレンガドック

       川間ドック--ベラシスマリーナ。全長136.7メートル。ゲート
       が取り外されているので海水が入っている。

■マリーナに残る日本初のレンガドック
浦賀の街は、湾を挟んで東西が対峙している。
駅からV字の右(西)の道を浦賀ドックに沿って進むと、浦賀ドックの先に、東西浦賀を結ぶ庶民の足、渡し船乗船場がある。
 
そこからさらにかつての「うらが道」を先に行けば、やがて左手にヨットハーバーCity Marina Velasis が見えてくる。
ここまで駅から約2km。道路に沿って入口があり、奥に事務所棟と、係留されたヨットが見えてくるので、事務所棟に行って受付で「レンガドックを拝見させてください」とお断りして中に入れてもらおう。
 
事務棟のすぐ右隣がドックなので、事務所に入る前に、ちらとドックを覗くことができるが、あくまでも私有地なので、まずは事務所にお断りするのが筋だ。
許可をいただいたら、事務所棟をまっすぐ抜けて係留場に出る。
 
桟橋に下りると眼の前にドックが満々と水をたたえている。
ドライドックだが、ゲートが取り払われているので、海水が入っているのである。ドックの底は水の中で見えない。
 
長さ136.7m、幅16.4m、深さ9.7m。水面に浮かんだ桟橋から見ると、大きさが実感される。整然と組み上げられたレンガがきれいだ。
 
建造されて115年も経ているとは信じられないくらいしっかりしていて汚れも少ない。ヨットハーバーの付帯施設として使われているのだからそれなりのメンテナンスもされているのだろう。

川間ドックのあるマリーナ入り口。奥の建物が事務所棟だ。
ゲートの外はそのままヨットハーバーにつながっている。

■残したい第一級の文化財遺跡
このドックは明治31年に日本で初めてつくられたレンガドックだが、設計・築造したのは、横須賀製鉄所で学んだ恒川柳作や大倉粂馬、山崎鉉次郎ら。
日本人による初のレンガドックである。
 
ドックの形は、先頭部分が丸くなっていて浦賀ドックとほぼ同じだが、煉瓦の積み方が少し異なる。
こちらはイギリス積みによく似たオランダ積みである。長手だけの段と小口だけの段を交互に積むのはイギリス積みと同じだが、長手段の端で七五(レンガの長手方向の長さを3/4にしたもの)を用るのがオランダ流である。

レンガの積み方
(1)イギリス積み(長手と小口を1段ずつ交互に積む。端を合わせるために小口の段に小口の1/2サイズを挟む)  (2)オランダ積み(イギリス積みで、小口の1/2を挟まずに、最後の長手を3/4にカットする  (3)フランス積み(長手と小口を交互に積む)  (4)ドイツ積み(小口を表に出して積む)

 
不思議なのは、横須賀製鉄所の官費生としてフランス式の造船学を学んだ恒川柳作らが、なぜオランダ積みを選択したのかということだが、どうやら真相は、当時は、フランスでもオランダ積みをはじめ、様々は積み方が行われていたということのようだ。フランスではフランス積みばかりというわけではなさそうだ。
 
浦賀ドックと川間ドック、どちらのレンガドックも、オランダのものと比べると深さが大きい。
<全長-深さ>でみると、オランダの3基は157-7、90-6.5、120-8で、川間136.7-9.7、浦賀148-8.4だ。
 
これは、オランダのドックが1806年~66年に作られたのに比べて、日本の2つは1898年、99年で、この間に船舶技術が発達して木造の帆船から鉄鋼の蒸気船へと変化しており、鋼鉄船の喫水が深いためにドックの水深が深くなっているのだ。
 
日本製の2つのレンガドック、産業遺跡としても第一級の文化財で、一見の価値がある。こちらも、産業文化財として整備・保存・公開されることを期待したい。

時代を経て老朽化しているが、まだしっかりしている。レンガの積み方はオランダ積み。
水中に続く階段。ここの階段は浦賀ドックに比べると段差が高い。

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