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軒を深くする、飛鳥人の工夫

                                                                                                       法起寺三重塔

構造主義で知られるロラン・バルトは、日本は海外のものを輸入するが、その際に、輸入したそのものは換骨奪胎されて洗練され、もはや本来のものとは別のものになって使われる(「表徴の帝国」宗左近訳 ちくま学芸文庫)と書いています。
こうした、輸入品を取り込む際に換骨奪胎する技は、最近行われるようになったものではなく、実は、古くからおこなわれているようなのです。
 
大陸のモノを日本流に変えて導入した一つの例は、広い屋根と深い軒です。
建物の構造、特に屋根の構造は大陸にあった建造物をまねて導入したもののひとつですが、換骨奪胎して付加した新しい独自の工夫が、長いひさし、つまり「深い軒」です。
軒、屋根を深くすることの効果はいくつかあげられます。
(1) 温度変化を一定に保つ
軒を深くすることで日差しが建物に直接射し込むことを防ぐことができます。それによって日照時と日陰時の温度変化を小さく保ち、建物への負荷を抑えて、老朽化を遅らせることができます。
(2)雨が吹き込むのをよける
ヒノキの建物を傷つける大きな要素は、雨と湿気ですが、特に建物の柱などが痛まないように、大きな建物を作る際に取り入れたのが、軒を深くする工夫です。
上の写真は法起寺の三重塔ですが、この塔を見ると、雨が当たるのを防ぐように屋根が前後左右に広く張り出していることがよくわかります。

 建物自体の構造がよく似ているために気づきにくいのですが、この深い軒は日本の寺社に独特の構造で、中国や韓国にはない独自の工夫なのです。

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