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絵本のまち板橋 No.2 「板橋区立美術館 対談 2023ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア総復習」

はじめに

はじめまして。 淑徳大学 人文学部 表現学科 3年 杉原ゼミの杉本です。
今回は「絵本のまち板橋」第2弾の記事ということで、板橋区立美術館で2023年8月12日(土)に行われた対談「2023ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア総復習」をご紹介します!

★絵本のまち板橋PJT前回記事★
絵本のまち板橋No.1「ボローニャ国際絵本原画展」



★絵本のまち板橋PJT紹介★
「絵本」と「板橋」
一体なんの繋がりが?
そう思った方が多いと思います。
「絵本のまち板橋」はその昔に、板橋区立美術館が絵本の原画を展示したことが始まりにあります。

美術館を起点に始まった「絵本のまち板橋」は、絵本をはじめとした文化芸術を世界に発信していこうという取り組みのもとで、様々な活動を行っています。友好都市であるイタリア・ボローニャ市とも連携しながら、クリエイターと出版・編集者などの関係者が集まる場として、絵本を通じた創造都市の実現を目指しています。
絵本のまち板橋 とは|板橋区公式ホームページ


1. ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア

1964年にスタートした毎年イタリアのボローニャで開催される世界最大の子どもの本専門の見本市であり、2023年で60回を迎えました。世界中から子どもの本に関わる人々が集まるため、重要な賞の発表・会議・展示会など周辺イベントも大変充実しています。
そして世界最大の子どもの本専門の見本市ですから、大事な商談の場でもあります。世界中から集まった作家、評論家、図書館や書店関係者といった人々が国際的な商談をまとめたり、作品を売り込んだりする場として毎年活気づいています。


Il Centro per il libro e la lettura alla Bologna Children's Book Fair 2023|CENTRO PER IL LIBRO E LA LETTURA


この見本市の中に1967年にスタートした絵本原画展があります。そしてこの原画展は、1970年代にコンクール形式になりました。このコンクールには世界中から多くの作品が集まり、日本からも応募があります。2023年は90ヵ国以上もの国から参加がありました。

このコンクールでは毎年審査員を総入れ替えすることが特徴です。こうすることで選ばれる作品に特定の「色」が出ないようにしています。さらに多様な価値観で審査されるようにするため、5人の審査員の国籍だけでなく、イラストレーター、編集者、教育関係者などが審査に入るように工夫されています。
また多様な価値を認めるために順位をつけないようにしているのも、このコンクールの特徴といえるでしょう。


X(旧Twitter)|BoChildren'sBookFair @BoChildrensBook

そんな世界最大の子どもの本専門の見本市ですが、ここに一般の方は入ることができません。入れるのは出版社などの出展関係者や児童書関連の仕事をしている人、またはそういう仕事を目指している人のみです。
では地元の人は関係ないの?
そんなことはありません!
「ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア」の開催と同時期に、周辺でボローニャ関連イベントが催されます。
こちらのイベントは一般の方も無料で参加できます。また世界最大ということが関係しているのかボローニャ市をあげて、町中がまるでクリスマスのようにきらびやかになります。町を歩くだけでもわくわくしてきそうですね。


2.「2023ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア総復習」

2.1由希子さんと希代子さん

2023年8月12日(土)に板橋区立美術館にて、対談「2023ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア総復習」が開催されました。このイベントは絵本評論家の広松由希子さんと板橋区立美術館館長の松岡希代子さんが対談するものです。


左:松岡希代子さん 右:広松由希子さん


2017年から続いている対談「ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア総復習」は、今では当館のボローニャ展の名物イベント(?)です。長年ボローニャのブックフェアに通っている広松さんと松岡が、その年のブックフェアの傾向や注目イベントについてレポートしたり、ラガッツィ賞受賞絵本を紹介したりするもので、二人の息もぴったりの軽快なトークを毎年楽しみにしてくださっている方も多いようです。

  板橋区立美術館ホームページより一部引用
2023年8月12日 対談「2023ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア総復習」|板橋区立美術館


2.2ボローニャと板橋の架け橋 松岡希代子さん

今でこそ日本国内でも認知度が高いボローニャ・チルドレンズ・ブックフェアですが、日本に初めてボローニャ・イラストレーター展が開催されたのは1978年大谷記念美術館でした。
その後大谷記念美術館からの打診があり、当時板橋区立美術館館長を務めていた安村敏信さんが受けたことから、1981年に板橋区立美術館に初めてボローニャ・イラストレーター展が巡回しました。

そして1989年に大谷記念美術館から板橋区立美術館に基幹美術館が移りました。ボローニャから作品を受け取って展覧会を開催し、他の美術館に巡回させ、作品をそれぞれの作家に返却する担当者に、当時学芸員だった松岡希代子さんが指名されました。

そのとき松岡希代子さんは「せっかくだからボローニャ側ときちんとコンタクトをとって、納得のいく方法で展覧会を開こう」という意思を持っていたそうです。
そして当時の板橋区長栗原敬三さんの協力により、区長の随行という形でボローニャ・チルドレンズ・ブックフェアを訪問することになりました。
そして松岡希代子さんは独自のイタリア関係のネットワークを使い、ボローニャに貢献し続けました。

そのあらわれのひとつに、ブックフェアの運営責任者であるフェッラーリさんが2001年に引退しブックフェアの運営サイドがパニックになったときに、プロジェクト・マネージャーに就任したパゾーリさんが松岡希代子さんを頼ったという出来事があります。
松岡希代子さんは10年以上イラストレーター展に関わっていたことからアドバイスを請われ、2人は協力し合い展覧会を引き継いでいきました。

そして今でも松岡希代子さんはボローニャ・チルドレンズ・ブックフェアに関するイベントを、熱意を持って取り組んでいます。
そのひとつが「2023イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」です!
このイベントでは板橋区立美術館でボローニャ・チルドレンズ・ブックフェアのコンクールで入選した作品を展示したり、絵本に関する講演会・対談やワークショップが行われたりします。
またこのイベントと同時期に、板橋区内や都内で関連イベントが開催されます。これらのイベントは1.ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェアで紹介した、ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェアと同時期に開催される周辺イベントを参考に始まったものです。
今回私が参加した対談も、「2023イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」のイベントのひとつでした。


2023イタリア・ボローニャ国際絵本原画展|板橋区立美術館


2.3おしゃれなディスプレイ

広松さんと松岡さんの対談では現地で参加してるからこそ見えてくるものや、絵本に携わる者として見えてくるものなど様々なお話を聞くことができました。その中でもとくに印象に残っているものをご紹介します!

私が対談で最も印象に残っているのは、イタリアはディスプレイが上手いというお話です。対談では会場の様子などを収めた写真をいくつか見せていただきました。その中にイタリアのディスプレイもあったのですが、天糸で天井から本が吊り下げられていて、その本が読めるようになっていました。その本の数は数えきれないほど多く、並び方もランダムになっており楽しい空間になっていました。その様子が世界最大の子どもの本専門の見本市のイメージとかけ離れており、とてもおしゃれでユーモアのあるディスプレイになっていたので印象に残っています。


X(旧Twitter)|CEATL @CeatlNews
X(旧Twitter)|Strade @S_TRAD_E


おわりに

今回、大学のプロジェクトである「絵本のまち板橋PJT」のためにと参加したイベントでしたが、想像以上に多くの学びを得ることができました!
やはり現地に赴いてイベントに参加したり、イベントを運営していたりする方のお話はまるでアクション映画を観ているかのようで、とてもわくわくしました。また対談ということで堅苦しい形ではなく雑談のようにお話が進んでいくため、最後まで楽しくお話を聞くことができました。
心から参加してよかったと思います!

ここまでご覧くださり、ありがとうございました。
以上、淑徳大学 人文学部 表現学科 3年 杉原ゼミの杉本でした。


参考図書:『ボローニャ・ブックフェア物語 絵本の町ができるまで』 市口桂子 白水社 2013年 (P.8 P.119-P.125 P.143)


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