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視覚障害者の方に初めてお声掛けしたときの話(2024/02/26)

 先日、視覚障害者の方に初めてお声がけをする機会がありましたので、そのときに感じたこと、気づいたことを記したいと思います。

 これまでの人生でも、視覚障害者と思われる方が困っている様子を見かけたことはあったのですが、お声がけの仕方が分からなかったり、急いでいたなどの理由があったりして、見て見ぬふりをしてきてしまいました。当時、お声がけの仕方が分からないというモヤモヤがあったので、その後にgoogle検索して、簡単なお声がけの方法だけは何となく頭に入れていました。

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 先日、家族で金沢に行ったときに、駅前の大通り沿いの大きなホテルの入り口付近で、白杖(はくじょう)をお持ちの女性が道に迷われている様子だったのを見かけました。

■白杖(はくじょう)とは?

 ご存知の方も多いと思いますが、視覚障害者の方が携行されている、先端が白い杖のことです。

白杖の携行については道路交通法第十四条『目が見えない者(目が見えない者に準ずる者を含む。以下同じ)は、道路を通行するきは、政令で定めるつえを携え、又は政令で定める盲導犬を連れていなければならない。』と定められています。
(中略)
また、この機能を含め、白杖には以下の3つの機能があります。

(1)視覚障害を持つことを周囲に知らせる
(2)触覚を通じて路面の情報を収集する
(3)路面上にある障害物を検知する

日本歩行訓練士会 HP「白杖の機能」より引用



 女性は何かを探している様子でしたが、同じ場所を行ったり来たりしていて、ホテルのガラス張りの壁に向かって行きそうでしたので、慌てて声をかけました。 

「あの、何かお手伝いしましょうか?」

 お声がけしたところ、飲食店を探しているとのことでした。時間帯的にはランチタイムでした。その女性いわく、その近辺に【夜は居酒屋・昼はランチ】をやっていて【お刺身が食べられるお店】があるとのことで、そのお店を探している様子でした。しかし、目の前には大きなホテルがあり、そのホテルの一階にはランチビュッフェを営業しているレストランが入っていて、その女性の目的のお店とは違うようです。とりあえず、そのホテルの名前を伝えて○○ホテルの前に居ますということと、ビュッフェのお店が目の前にあるということを伝えました。ご自身が○○ホテルの前に居るということは分かっていたようでした。

 我々も旅行者なので(いま思えば、そのこともお伝えすべきでしたが、伝えていませんでした)、近辺のお店のことは全く分かりません。会話の様子から、どうやら過去に一度行ったことはあるようで、「この辺にあったはずなんだけど・・・お店変わっちゃったのかな・・・」と呟いていらっしゃいました。

 目的のお店の名前を聞くと、店名は分からないと言い、予約や誰かとの待ち合わせでもないようなので、「海鮮が食べられるお店でしたらどこでもいいですか?」と聞いたら、頷かれました。

 歩道の端に寄って待っててもらい、私が一人で周囲を見てくることにしました。そのとき、夫と子供達が一緒でしたので、その女性と一緒に家族には待っててもらうことにしたのですが、これも、そのような情報を併せて伝えておくべきでした。

 道路を一本挟んだ、30~40メートルほど離れたところに、「夜は海鮮居酒屋、昼はランチ」といったお店を見つけたので、「ここだ!」と思って、すぐに戻って、お連れすることにしました。

 以前に、視覚障害者の誘導方法をwebで見ていたときに、「腕や体をつかんではいけない」との記述を見たのは覚えていたので、「私の肩か腕につかまりますか?」とこちらから聞いたので、その方は私の肩に手を置かれ、歩くことにしました。

 途中、点字ブロックがある道では、点字ブロックの上を歩いていただければ、車道と交差するところは分かるのかなと思って歩いていました。(肩に手は置いたままでした。)

 歩いている途中、私の感覚だと【すぐ近くの店】だったのですが、その女性が「…けっこう遠いですね」と仰っていたので、「もうすぐ着きますよ」と言ったのですが、言ったあとに【すぐって、どれくらい?】と、自問自答してしまいました。
そのとき、【そういえば、視覚障害者の方に説明するときには『あと少し』等の抽象的な表現ではなく、ざっくりでもいいから『○○メートルくらい』、とか、『○○歩くらい』と具体的数字で説明すべきと書いてあった気がする】と、思い出し、「あと20歩くらいですよ」と伝えました。

 が、が、が、

 初めて視覚障害の方を誘導するという高揚感があったのか、お店の存在だけ確認していて、(手書きの価格表ボードが店前に置いてあったので、営業中と思い込んでいたが)なんと、お店は営業していませんでした(泣)。

 というわけで、無駄に歩かせてしまい、私もお店が見つけられず、途方にくれてしまいました。結局、大きなホテルの近くに居ましたし、そのホテルの近くのお店を探しているということだったので、ホテルのフロントの方のほうが詳しくご存知かもしれないと思い、フロントへ向かうことを提案し、その女性も同意されたので、ホテルのフロントまでお連れしました。

 フロントでは、

・女性が視覚障害者であること
・女性が目的のお店を探していること
・私たちは旅行者で近隣の店に詳しくない
・ご案内をお願いしても良いか

ということをお伝えし、フロントの方に快諾していただいたので、自分たちはここで去るということを女性に伝え、その場を後にしました。

 そのとき、フロントの男性は「ホテルの者です」と名乗りながら近づいていきました。そのときに、【あぁ、私も自分が何者か名乗るべきだった。夫と子供たちと一緒に行動していることも伝えるべきだった。旅行者だからこの辺の土地勘はないということも伝えるべきだった】と思いました。

 この女性と別れた後、夫から「よく気付いたね。自分は全く気付かなかった。」と言われました。同じ空間にいても、目に留まる光景は違うのですね。また、私がお店を探しに行って戻ってきたとき、夫はその女性を移動させるために、腕か肩か忘れましたが、身体の一部を引っ張ってしまっていました。基本的に身体を引っ張るのは視覚障害者の人にやってはいけない(見えないので怖い)そうだよ、と伝えました。(注:車に轢かれそう、など、命の危険につながる場合を除く。)

 ↓検索すれば、もっと分かりやすいサイトが他にあるかもしれませんが、視覚障害のある方に出会った場合の対応方法は、こちらもご参照されてみてください。

■さいごに

簡単に、反省と今後同様の機会があった場合へのまとめです。

・「何かお手伝いしましょうか?」と聞く
・自分が何者であるかを伝える
・相手の身体を引っ張ってはいけない
・自分の肩か腕を差し出す
・「あとすこし」ではなく、「○メートル、○歩」で伝える

あと、今回のケースでは、もしホテルの近くではなかったら、最後どうしようってなったと思うのですが、たとえばスマホ等でお店を調べてまで案内すべきかどうかって、ちょっと悩ましいと思いました。(そこまで急いではいなかったものの、お店を吟味するレベルの時間の余裕はなかった。)

 できることとできないことを線引きして、代替案を提案するなどの着地点も自分で判断するのも大切なのかなと思いました。でも、私も結局無駄足を運ばせてしまったので、この辺は本当に悩ましいですね。すぐそこまでならご案内できるけど、それ以上の何か難易度の高いお困りごとだとしたら、お手伝い難しいかも、とか。何でお困りなのかはお声がけするまでは分からないですし…


 最後になってしまいましたが、この女性にお声がけするきっかけとして勇気をいただいたのは、数週間前に拝見した「あん みつ子さん」の下記の投稿でしたので、ご紹介させていただきます。


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