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ねえ、ムーミン ☆56

私が子供のころ、アニメ『ムーミン』が初めて放送されて、その主題歌もそこそこヒットした。

私はすぐ好きになったが、原作者のトーベ・ヤンソンはとても不愉快に思ったらしい。日本国内だけの放送をは辛うじて許したが、門外不出の作品となってしまった。

中学の頃、私は仲間と勝手に「漫画・アニメ研究会」のサークルを作って、漫画やアニメのキャラを模写しまくっていたが、原作のムーミンも読んでいて、トーベ・ヤンソンの描く挿絵が気に入って、やはり模写していた。

だから、原作とアニメの設定が、かなりズレている事を知っていた。いや、アニメ『ムーミン』は決して悪い出来ではなかったのだが、日本人に受けるようにアレンジし過ぎているのだ。

ただ、ヤンソンは嫌っていたけど、日本人にはやはり受けたのだ。それが証拠にムーミンの人気は世界的に見ればそれほどでもない、圧倒的に日本での人気がダントツなのは、多分批判されたアレンジ版が親しみ易かったからだろう、原作のままでは当時の我が国で受け入れられたかどうか・・・・。

原作は、少し難しいのである。子供が読んでも「?」となる箇所が多い。そもそもムーミンって何??

あれは精霊とか妖怪と同じものだ。日本ではコロボックルと1番近いような気がする。なんだか居るんだか居ないんだかハッキリしない存在だったのだが、ムーミン・トロールはトーベ・ヤンソンが後でだんだん形づくり、肉付けしていったものである。

水木しげるの漫画も面白いけれど、水木しげるは貸本屋全盛のマンガ家であり、読者に受ける事を優先していたから、どうしても俗っぽい。私は後に水木しげるの大ファンとなるが、好きになったのはトーベ・ヤンソンの方が先だった。

何故って、鬼太郎は恐くて子供の頃見られなかったのでる。私が見ていた初期の昭和版ムーミンは現在放送禁止になっているそうだが、惜しいような気がする、あれの方が子供には伝わりやすいのに。

冬になると、ムーミン谷は真っ白な雪に覆われて、静寂に包まれる。
ムーミン谷の住民はだいたい冬眠するから。

でも、雪が降れば、どこでも世界は真っ白になるのだ。私の田舎は雪国だったから、冬には見た目はムーミン谷とそう変わりはなかった。

家の裏手は高校のグランドだったが、グランドは何も無いのだから、雪が降り積もって空が曇っていたら、それだけで本当に白1色の世界になる。

子供達は、その周りの土手を利用してソリやミニスキー(プラスチック製の短い板スキー)で滑って遊んでいた。山スキーと違って危険はほぼ無い。

今はたぶんフェンスで囲われて部外者は立ち入り禁止だろうが、昔は(50年前)何でもおおらかだった。

いつもは子供達で賑わうグランドなのに、何故か誰も来なくて、自分独りだけで遊んでいる事も、時にはあった。

それはそれで、いろんな事を空想して遊べるから楽しいのだ。遭難ごっこして遊んだり、新雪の上に仰向けに倒れたり、バカみたいだが面白かった。


雪景色は、やっぱりある種の異世界だ。全てが氷り、冷たく、死んでしまったかのように見える(春には復活するのだが)。

死んだふりする遊びなんて不吉だが、雪景色の中で1人で遊んでいると、本当に自分が死んでしまったのではないかしらと錯覚してしまう。

もちろん、バカな子供でしかない当時の私は、死にたいだなんて、これっぽっちも考えてはいなかったが、

冬には死を連想させるものが多く含まれているのだろう。

ムーミン谷の冬には、モランという怪物も登場する。

大きくて、モッサリしていて、何を考えているのか分からない、モランが歩いた後は、道も、草や木も、全てが凍りついてしまう。

本当は、それほど恐ろしい怪物ではないのだが、その呪われたような特性によって、ムーミン谷の住人達からも恐れられていた。




目的は分からないが、何やら唸り声を出して、うろうろしてる怪物が居たら、それはとても怖い。

本当はそれほど恐れることはないモランだが、やはり怖い。彼も、死を連想させるものを多く含んでいるのだろう。





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