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旅の果て ②

日本三大旅人は、芭蕉、西行、永六輔だと、誰かが言った。

永六輔は『上を向いて歩こう』の作詞家として、名を残した人です。

永さんは日本全国を精力的に旅した人。地方で講演会や公演会を催して、巷の人々と語らいを続けた。

そうして東京のラジオ番組でその事を話していた。旅の間に間にラジオ番組に寄せられる葉書に一枚一枚返事を書いて、

私も何葉か返信をいただいた。

想像するに、かなりせわしない、旅の風景だったのではと思ってしまう。

永さんの旅行術を、私も真似したものだ。

荷物なんてほとんど持たない、お土産もまず買わない、

街をぐるぐる歩いて眺める。

旅は楽しいけれど、時に寂しくなって、虚しくなって涙が滲むものなのだ。

そんな事も、私は永さんから教わったような気がする。

大物なのに、どっしりと構えているような人生を彼は選ばなかった。

常に旅に出て、実際を眺めていた。

戦中戦後を体験し、奇跡の復興を遂げた日本の中央で、テレビの黄金期を作り、その才能は多岐にわたり天才と呼ばれた。

けれどテレビの恐ろしいまでの影響力に懸念を抱いて盛っていた世界に背を向けた。

スポットライトを浴びない、誰も目を向けないものを見つけたくて、

永さんは、旅を続けたのだろう。


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