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母との対話

 今日、入学式があった。ついに大学に入学したのだ。でも、私の心のうちは不安一色でありました。私は中学生の頃から、ストレスや不安を感じるとお腹が痛くなる体質でして、いつもそれに悩まされ、ときには学校をやめることもありました。そして今日の入学式も、終始お腹が痛かったのです。学長の言葉のときは、トイレに籠って天井のスピーカーから聞いていました。会場に入ったとき、一番後ろの席に座りました。少し安心しました。

 入学式も終わり、母とお昼ご飯を食べに行ったのですが、そこで色々とお話をすることになりました。


私「学校に投稿した日に、たくさん友達ができて仲良くなったんだけど、でも、どこかで面倒だと思っている自分がいるんだよね。」

私は友達が欲しくてたまらないのだけれど、同時にとても苦痛でもある。

私「面倒というか、話すときにすごく気を遣うし、会話が難しいんだよ」

友達と話している瞬間は間違いなく幸せで、傍から見ても仲良しで明るく騒いでいるように見えるだろう。

私「家に帰ると、自分の頭の中で話し合いがはじまるんだよね。」

嗚呼、君はなんて嫉妬と欲望にまみれていて、それでいてちっぽけな人間なんだろうか。現実を受けいれろよ。お前は自分が思っているほど、すごい人間でもないし、性格がいいわけでもないんだから。でも、自分がすべて悪いとも限らないだろう?だって実際に今日は、いろいろな人に話しかけて仲良くなれたんだし、しかも友達ができたんだ。彼らは自分を好意的に見てくれているはずだし、じゃなきゃ付き合わないよ。でもお前は、友達に嫉妬しているじゃないか、なにしろ楽しいことよりも、苦しいことのほうが多いのだから。それに彼らを利用してさえいる。そうじゃないのか?しかも君は友達を取捨選択しようとしている。それじゃあまるで、使い捨ての道具みたいじゃないか。さらにお前は、自分が舐められないように常に気を張っているじゃないか。うわべだけ馬鹿なふりをして自分を卑下したって、心の中では悔しいんじゃないか。お前はいままで、自分からも他者からも逃げてきたし、ここにお前が存在することすべてが、親のおかげなんだ。つまり、お前は何一つ、自分の力で何かをしてこなかったんだよ。

母は、みたことがないくらい冷たい視線を私に向けた。

母「その考え方は、自分を幸せにはしないよ」

母はこのときどう思っていたのだろうか、自分の息子がこんなふうに育ってしまったのかと絶望していたか?それとも、なんでこんな考え方しかできないんだろうかと心配だったのか?

母「私はそんな風にかんがえないようにしてる、だって子供にハグするときや、夜暖かい布団に入る瞬間が本当に幸せなんだもの。それに、今日の入学式のお話もすごくよかった。ずっとわくわくしながら聞いていたし、とても勉強になった。」

母はびっしりと入学式の予定表に、先生方が話されたことをメモしていた。私は形式と制約を感じさせる、入学式が大嫌いで、その場にいることが苦痛でしかなかったし、一瞬でも楽しいと思ったことはなかったというのに!

つづく


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