見出し画像

何処かへ向かう スロウ・ボート

おはようございます。

とあるカフェでこの文章を書いています。

ラテとチーズケーキ。

いつもと同じ変わらぬ味。

いつものカフェ。いつもの席。

いつもの日曜日。することがなく、

しなければいけないこともない、

平凡な日曜日。

まだ、他のお店は開店していない。

なんとなく窓の外を見る。

変わらない風景。

なにも変わっていないのに、

昨日までとはまったく有り様を

変えてしまった世界。

もう、別の世界。

ここはどこだ?私は誰だ?

これからどこへ進めばいい?

私は誰だ?君は誰だ?

窓から電車が見える。

同じダイヤで運行している。

同じ到着駅へ向かって走っている。

定まったレールの上を真っ直ぐに、

時に曲がりつつ、結局は真っ直ぐに。

ジンクスめいたものはないけれど

いつも右足から歩き出す。

そして左足。右、左、右、左…。

それではいけないのか?

いつもと同じ道を歩く。

それではダメなのか?

ヒトは変わらずにはいられない。

世界は我々には関係なく変わっていく。

なぜ、私の世界をそっとしてくれないのか?

我々は何者なのか?我々はどこへ行くのか?

私はどこへ行けばいいのか?

私はどこへ行けるのか?

世界はこんなにも変わってしまったのに。

悲しい。哀しい。カナシイ…。

でも、歩かねばならない。

まだ生きているから。



「そもそも」と彼女は言った。

「ここは私のいるべき場所じゃないのよ」

(略)

そう、ここは僕の場所でもない。

言葉はいつか消え去り、夢はいつか崩れ去るだろう。

あの永遠に続くようにも思えた退屈な

アドレセンスが何処かで消え失せてしまったように。

何もかもが亡び、姿を消したあとに残るものは、

おそらく重い沈黙と無限の闇だろう。

村上春樹著
「中国行きのスロウ・ボート」より

この記事が参加している募集

仕事について話そう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?