モヤモヤのシルエットを変えたくて

休みの日に家で過ごす。全然変わったことでもないし、家にいて何もしないのは苦ではない。ただ、最近は家で横になっていて、なんとなく気が晴れない。外がいい天気だと尚更そう感じる。気が晴れないのは、外に出ないから。確信はないけど、そんな感じがした。何か用事を済ませるために外に出ることはあっても、外に出たいから用事を作るということが過去にあったかは覚えていない。それぐらい自分にとっては珍しいことだった。何をしようかと考えた時に、書店に行くことを思いついた。リハビリ中に読んでいる詩集をそろそろ読み終えるので、次に読む本を買うことにした。さっさと病院通いを終わらせたいはずなのに、いかに病院にいる時間を有意義に過ごすこと考えてるのはおかしな話だ。特に読みたい本もないし、たまには小説を読んでみてもいいかもしれない。歩きながら何を買うか考えてみてもいいし、書店をぶらぶらしながら目に入った本をジャケ買い(この表現が正解かは微妙)するのもいい。そう思ったが、テレビに映ったアンミカを見てやめた。アンミカの本を読むことにしたので、書店に行くのはやめた。最近、徒歩圏内に無人販売所ができたんだった。何を売っているかはわからないので、見に行くことにした。

ここ最近履いていなかった黄色のスニーカーを履き、雪が降ってしまったらしばらくは履けなくなってしまうからと、一歩一歩踏みしめて歩く。だけど、お気に入りの黒いパーカーが足取りを軽くする。最近買ったUNISON SQUARE GARDENのパーカーが想像以上によかった。背中のデザインと大きめのシルエットということで買ったが、なんという生地かはわからないが、今まで着たことのない生地で、胸のオレンジの刺繍もいい。

歩きながら、「魂のシルエット」を想像してみた。ふと高校生の時に、「魂のはどこにあってどんな形をしているのか?」と聞かれたことを思い出した。なんとなく体のこの辺にあるだろうなとは思いつつも、それはあっているかわからないし、証明もできない。シルエットなんて想像もつかない。なんとなくホラー物に登場する人玉に引っ張られる。そのシルエットを自分なりに想像して表現できたら、面白そうだ。よく「悪魔に魂を売る」という表現がされる。もし悪魔に魂を売る瞬間に、自分の中から魂が体の外に出て、そのシルエットを見ることができたら。悪魔に魂を売ってしまいそうになる。無人販売所までは歩いて15分ほど。そんなくだらないことを考えていたら、あっという間についてしまった。白い外観のお店に、白い業務用の冷蔵庫と冷凍庫。焼肉用のお肉やハンバーグ、馬刺しが置いてあった。品揃えもあって、スーパーで買うより少し安いかもしれない。買って帰ると洗い物が増えてしまうと嫌なので、そのままお店を出た。

違う道で帰ろうとお店の角を曲がると、油そばと書かれた看板が目に入り、吸い込まれるようにお店に入った。自分と同じぐらいに見える男の人が1人で切り盛りしていた。「先にお会計をお願いします。」と言われ、慌ててメニューを見る。何を食べるのかは決めていなかったので、目に入ったチーズがのった油そばを頼んだ。大盛りが無料で、大盛りにするか聞かれたが、食べきれないとよくないので、普通盛りにした。「出来上がったら取りにきていただけますか?それまで席でお待ちください。」と言われ、珍しいと思いつつ席に着く。店内はお世辞にも広くないが、茶色で塗装された木で統一されていてどこか落ち着く雰囲気だ。待ち時間で改めてメニューを見ていた。餃子を頼めばよかったと後悔したが、次に来た時の楽しみにすることにした。また外に出るきっかけになるかもしれない。油そばができて、取りにいく。こういう時に語彙力が足りなくて、美味しい以外に表現ができない。角切りのチャーシューが炙り焼きのように焦げ目がついていて美味しい。追い飯もついており、タレを残さずに食べることができる。普通盛りでもお腹いっぱいになるほど、ボリュームがあった。16時ということもあってか、食べ終わっても店内の客は自分1人だった。油そばを取りに行ったのだから、器も下げるものだと席を立ったが、「席に置いておいていいですよ。」と言われた。違和感とともにお店を出た。

ちょっと得をしたと思いながら、通ったことのない道で帰る。ビルの上にある赤と白の電波塔のようなものの位置で、なんとなく自分の家の方向がわかる。外はすっかり暗くなっていて、季節の移ろいを改めて実感する。少し寒く感じたので、あまり遠回りをせずに帰ることにした。家に帰ると洗濯機が止まっていたので、洗濯物を干そうと思った。蓋を開けると、服は濡れていない。散歩に出て戻るころには洗濯が終わっているだろうとスイッチを押したつもりが、洗剤を入れて蓋をして満足してしまい、肝心の洗濯ボタンを押していなかった。だけど、そんなことはどうでも良くなるぐらいに散歩を楽しんだ。

なんとなく気分が晴れないのはバスケをしたいからなのだと思いはじめた。こんな晴れた日にバスケができないなんて。最近は夢でよくバスケをする。オフェンスの場面でドリブルをして、ミドルレンジからジャンプシュートを打つ。何度も似たような夢を見る。ドリブルをやめてシュートモーションに入る感覚や、シュートタッチ、ボールがネットを潜る音。それらがやけにリアルで、実際にプレイしているみたいだ。最近は夢のはずなのに、足の痺れまで感じる。余計に実際にプレイしてるみたいだ。ただ、そんなモヤモヤが散歩して少し紛れた。ここまでとは思わなかった。寒さに勝てれば、財布と相談しながら続けてみてもいいかもしれない。



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