見出し画像

あの日食えなかったドン勝を求めて

PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDSというゲームはご存知でしょうか?今ではモバイルでもプレイできるから、ご存知の方も多いかもしれません。
私がプレイしたのはPC版のものです。
その時の体験を言葉にしてみました。
長めの記事です。書いてたら1万字近くなってしまいました...

**たかがゲーム、されどゲーム。 **

ご存知でない方は以下を参照のこと。

ちょっと皆さんでコロシアイをしているらしいと聞いて

2017年の4月か5月だったと思う。
先輩に妙なゲームが流行っているという話を聞いた。
「バトルロワイヤルって小説・映画あったじゃん。あんな感じのゲームらしいよ」
「え、ど、どういうことだってばよ?」
「100人で無人島に降り立って、最後の一人に生き残った人だけが勝ちっていう」
「シミュレーション系ですか?」
「いや、シューティング。青羽氏、絶対ハマると思うよ」

バトルロワイヤルという映画はかなり古い。もう20年近く前の映画である。

そんな会話をしたあと、家に帰ってSteamを開いてみた。Steamというのは、iPhoneのAppStoreのようなもので、PCでプレイできるゲームを購入してダウンロードすることができる。

ストアの売り上げランキングは一位だった。かなり盛り上がっているようだ。
3300円か…まあ買ってみっか、ということでさっそくポチってみた。

バトルロイヤルねえ。ちょっと殺し合いをしてもらいますってか?

私は仕事でスペックの高いPCが必要なことから、所謂ハイスペと言われるマシンを組んでいた。今の水準でもマシンスペックはかなり良い方だと思う。大抵のゲームは最高設定でも難なく動いた。
ちなみに、仕事のためと称してゲーム用のPCを買ったわけではない。決して。仕方なくスペックの高いマシンが必要だっただけである。仕方がなかったのだ。かか、勘違いしないでよね。

私はFPSが好きで、スペシャルフォース(SF)、AVAやウォーロック(WR)という無料系から、Call of Duty(COD)シリーズやBattle Field(BF)シリーズと言った定番系、カウンターストライク(CS)のような王道中の王道も少しだけやったことがある。その当時はOverwatch(OW)をちまちまやっていた。

ただ、大体のタイトルは1ヶ月2ヶ月やって辞め、また再開し…ということを繰り返していたため、通算としては多分2年くらいだと思う。だから腕前はド下手ではないが、決して上手くはない、というくらいのものである。オーバーウォッチのレート帯は、ゴールドである。

どのゲームにも言えることは、チーム戦であるということだ。4vs4, 5vs5, 6vs6… バトルフィールドだと32 vs 32 なんて規模だったりする。たまにオマケ要素としてキル数を競い合うようなデスマッチのゲームモードはあったが、あくまで補助的である。そして大体何回死んでも蘇ってその試合を続行することができる。

PUBGというゲームは、その従来の形式とは大きく異なっていた。

1vs99。そして、プレイヤーは1回死んだらその時点で終わり。チームの勝利ではなくて、個人の勝利。こんなゲームは私の記憶にはなかった。
何より、その人数である。100人とは。
BFシリーズですら64人対戦だった。それよりはるかに多い人数でデスマッチとは、一体どんなゲームなのか想像がつかなかった。

(実はH1Z1というPUBGの前身のような作品があって、そのゲームもかなり流行っていたらしい。私はその当時そんなゲームが有ることすら知らなかった。H1Z1は150人で対戦する。)

…それに、生き残ればいいということは、場合によっては戦いを避けたり隠れたりすることも立派な戦術になるということで、ゲームのプレイスタイルに幅が広がるのでは…と考えて試してみたいと思った。

ダウンロードが終わり(高速回線なので一瞬で終わる。インターネットの強さは正義である)、ゲームを起動する。
BGMとともに、キャラクリが始まる。性別、髪型、表情、肌の色が選べる。適当に屈強そうな白人男性をスキンヘッドにして完成。
(キャラクリって、男性だけど女性にする派と、男性だから男性にする派でわかれるよね。私はゲームによりけりだ)
さっそく、ゲームをプレーしてみることにした。

コロシアイ、開始です

まずロビー画面がわからなかった。周りを海に囲まれており、墜落した輸送機の残骸や、崖の上にはなにか施設のような建物がある。

プレイヤーは動かすことができ、マウスをクリックするとパンチしている。ジャンプもできる。

周りにはプレイヤーの群れがうじゃうじゃと映った。動いている人、止まっている人。煙が出ているところもあり、火に包まれている人もいる。

なんじゃこりゃ、もしかしてもうゲームは始まっているのか???

銃を発砲しているプレイヤーもいる。私は逃げたが、撃たれてもなんともないので、バグなのかなんなのかさっぱりわからなかった。

このゲームにはボイスチャット機能がある。周囲にいるプレイヤーに対して話しかけることができる。日本人だけではなく、中国人や韓国人、その他東南アジア系の人たちも入り乱れており、一言で言うと混沌としていた。

音楽を垂れ流している人もいれば、「チャイナナンバーワン」とか「タイワンナンバーワン」とか連呼している輩もいる。何かよくわからないことを怒鳴っている人もいれば、ひたすら「shut up」…まあ要するに、カオス。すこぶる治安が悪そうだった。

もしミュートにできると知っていたら、ボイスチャットをOFFにしていたかもしれない。しかし、これはこれでこのゲームの文化。賑やかなところだから、一度聞いてみるのはいい経験になった。

コロシアイにすらならない、情けないデス

そうこうしているうちにブーンという飛行機の音が鳴り渡り、空に飛ばされる。プレイヤーは輸送機の中に一同に会すことになる。つまり距離が縮められるので、ボイスチャットの治安がさらに悪化する。めちゃくちゃうるさい。音が割れている。

どこかで降下しなくてはならないようだが、一体どこで降りたらいいかわからない。マップを開いたら想像していた以上に広大で、土地勘もないしどこに武器があるのかとか、わかっていない。なので、人が降りていそうなところについていくことにした。

ドンッという音と共に空に放り出される。ドキッとした。BGMは無い。パラシュートのタイミングは、早すぎてはいけない。降りるスピードが遅いと、先にアイテムを取られてしまうからだ。そのくらいの考えはあった。
下降中、身体の状態を動かすことができた。そうすることで、進む方向を少しだけコントロールできる。なるほどなるほど。

最初に降りたのはErangel島の中央付近にあるマンションだった。となりには「School」がある。
今でこそ激戦区(注:アイテムのスポーンが豊富なため、プレイヤーが密集しやすい区域のこと。そのため戦闘が発生しやすい。最初は効率的なアイテム集めを目的に集まっていたはずが、キル数だったり戦闘自体が目的のプレイヤーが増えるようになる)の聖地の一つで、10人とか20人くらい降りたりするのだが、その当時はそんなに降りる人がいなかった。

学校を後目にマンションへ降り立った私は、おぼづかない操作で建物に入った。ドアを締めるのは忘れなかった。そしてアイテムを拾い、銃を拾い、リロードし、一応戦える状態になった。
今でこそアイテムの内容を把握しているが、前提知識なしでプレイしたから、拾えるものを全部拾ってすぐにバッグがいっぱいになった。インベントリ画面を開いたほうが早くアイテムを拾うことができるということも知らなかったので、ひたすらキーボードを連打して1個ずつ拾っていた。
まあ、大体初心者あるあるの道は歩んだと言って良い。防具にレベルがあることすら意識できていなかった。

このゲームには試合中に音楽がない。音楽がない、というただそれだけのことが、プレイする上での緊張感を高めることにつながっている。良い演出になっているなと思った。製作者の意図に見事にはまった私の心臓は鼓動を高めるばかりであった。

幸い私の建物には誰も入ってこなかった。
多分結構な時間が経っていたのだろう、エリアが収縮するというメッセージが出てきた。マップを見たら、白い円と青い円がある。私は白い円の外にいたが、青い円の中にはいた。

「だ、大丈夫だよね?」

と聞く相手はいない。ふとミニマップをみると、くなっているではないか。いわゆるレッドゾーンと言われるこのエリアは、一定時間の間、そのエリアに爆撃が行われる。

なんかヤバそうだなと思ったら、爆撃が始まった。これはヤバイと思った。このエリアにいたら死ぬのでは…ここからすぐに出なくては…BFだと、建物の中にいても死ぬときは建物が壊れて押しつぶされて死ぬのである。100人でプレーできるんだから、もしかしたら建物も壊れまくるのでは…などと考えた。

(というか、普通空襲受けたら建物はタダじゃすまないよな)

ガソリンがアイテムとしてあるのも、家屋を燃やすことができるのかもしれないと勝手に妄想していた。ガソリンは車を走らせるためのアイテムだったのだが、そのときは知らなかった。
きっとこれは建物ごと壊れるに違いない、などと勝手に考えた私は慌てて建物の外に出た。

私は、走った。

とりあえず、安全地帯が北のほうだったので、北へ向かった。

そして、無事爆撃で死亡した。

これが、1ゲーム目である。死因:爆死

建物の中にいれば安全だと知ったのは、しばらく経ってからであった。

「まあ、こんな日もあるさ。次はツイてますように!」

次のコロシアイです、次

2ゲーム目は、できるだけ人が降りなさそうな端っこの方に行って、安全にファームしたは良いものの、バリア収縮に間に合わず死亡した。死因は移動中にバリアにHPを削られたことによる溺死である。水中だから回復もできなかった。

もっと中心で降りないと移動が辛いのでは、と安直に考えた私は、次のゲームで中央付近に陣取ることにした。

悔しいが、次のゲームでどうすればよいかを考える。

次だ。次。

このゲーム、1度死んでもすぐに「次」がある。
現実なら死んだらそこでその個体は生命を絶たれる。その個体に「次」は無い。来世があれば、来世に期待してくださいとなる。遺されたものが意志を継ぐ…物語は続く。そいつは他人の中で生きる...

そういう話もあるが、そのようなコンテクストではなく、次のマッチメイキングにかかる時間である。「待ち時間」というものがほとんど無い。
プレイヤー数が多いため、すぐにマッチングが成立するのである。マッチングと言うとなんだかデーティングアプリのようだが、ティンダーとかペアーズで即マッチするのをイメージしてもらばいい。

ティンダーは1:1だが、このゲームは1:99だ。100人がすぐに集まる。それは朝から晩まで、深夜問わずに続く。サーバーもアジア、NA(North America)、EUとあるので、pingさえ気にならなければ(EUは流石に無理だけどNAならなんとかなった)常に人が多いサーバーを選んでプレイすることができる。VPNを使わないとサーバーが選べないゲームと違って、このゲームはプレイヤーに自由がある。

対戦ゲームでこんなに人がいるゲームを経験したことがなかったから驚いた。人がたくさんいる、というのはいいことだ。人がいない対戦ゲームは、どんな名作でも悲しい風が吹いてしまう

しかしそのありえない状況への驚きはすぐに「当たり前」になっていき、息をするように次のマッチを求めるようになっていく。少しマッチ時間が伸びるだけでイライラし始めるのだ…それはまた別の話。

チャンス到来です

3ゲーム目。早くもチャンスが訪れる。どこで降りたかは覚えていない。麦畑に面した2階建てのそこそこ広い家、ということだけ覚えている。間取りは1階が3LDKで、2階は1LDKとバスルーム付き。

序盤にたまたま武器を持っていない人をショットガンで一方的にキルしたり、安全地帯のど真ん中だったので家の中に引きこもっていたら、無警戒で入ってきた人がいて、また一方的にキルできた。そのプレイヤーが大量のアイテムを持っていたので、アイテムを探す必要がなくなった

待てども待てども、私は世界の中心だった。家の周囲ではたびたび戦闘が起きていた。かなり終盤に近づいて、家の1階に人が入ってきた。
流石に警戒して、上には上がってこない。
当時は壁を乗り越えたり窓から飛び降りたりというような、ゲームでよくあるパルクールアクションが実装されていなかった。窓抜けの方法はあったが、私は知らなかった。

もし安全地帯が家の外になってしまったら、1階のほうが有利かもしれない、と思った。

そうこうしているうちに残り人数が5人くらいになっている。めちゃくちゃ減っているではないか。ますます私は緊張してしまった。手に汗握るとはこのことで、実際に額から汗を流していることに気づいた。手汗はあまりかかないが、漫画みたいに汗が額から流れている。ゲームでこんな体験をしたことはなかった。それより心臓の鼓動がヤバイ。音が聞こえるくらいに鳴っている。

私は選択を迫られている。1階に降りて戦って、家屋を安全にするか、このままやり過ごして人数を減るのを待つか。

車が家屋に横付けされて、他のプレイヤーが家に入ろうとした。が、1階にいた人にやられてしまった。

やはり、慎重に行くべきだ...残り4人。

しばらく静寂が続いた。

画面の端に、誰が・どのように・誰を倒したか、というログが流れる。一人はエリア外で死んでしまったようだ。残り3人

ということは、下にいる一人と、上にいる一人...つまり私と、あとは外にいるだろう一人か...

最後の安全地帯は、家の外になった。

これは、先に家の外に出られて待ち構えられても不利だし、先に出てしまえば挟まれる可能性もある。相手も同じことを考えてるだろうが、相手は外に出る前に私に撃たれる可能性があるから、先に出ることはないだろう。
などと考えて、私は戦いに行くことを選んだ。幸いスモークとグレネードは2個ずつくらいある。
私は階下にグレネードを投げた。爆発する。しかしキルログは出ない。もう一個。出ない。
すると相手が何を思ったか、何かを投げてきた。カツン、と階段に跳ね返って、投げた相手の元に返っていく。煙が出始めた。スモークグレネードだったのか。
ええいままよ、というわけで私はその煙に乗じて突っ込んだ。正面からの打ち合いになったが、距離を詰めることで、ポンプショットガンがキレイにあたった。少しダメージを負ってしまったが、致命傷ではない。
そうこうしているうちにエリアが収縮している。早く出なくては...

ドアを開けると銃弾が飛んでくる。いや、そりゃそうだよな。

私の心臓はワンパンマンのキングばりに鳴り響いている。

しかし、出るしか無い。でも、出たら撃たれる。こんなときはスモークだ。BattleFieldの知識が役に立った。視界を奪ってしまえば良いのである。私はまだ2つ持っている。これを使って、相手の場所まで一気に詰めてしまえばいい。相手の位置はわかっているぞ...

スモークを2つ使って、ドアの前とその先へ、うまくスモークが展開された。その先には、藁の山のようなオブジェクトがある。そこまで行きさえすれば...

意を決して、走り出す。

俵の前まで来た。壁越しに、相手の姿が見える。TPSなので、カメラの視点が人の目線より後ろにあるのだ。人によってはこれがフェアじゃないと感じる人もいたようで(特に欧米勢)、FPSモードが実装されてからは徐々にそちらが主流になっていった。大会だとどちらのモードもあるようだ。

そんなことを考える余裕もなく、とりあえずポンプショットガンを放ちに行った。相手もショットガンを持っている。

ズドン、1発目、ハズレ。

相手も外した。

ズドン、2発目、ハズレ。

相手も外す。

なんだこの泥試合は

相手はダブルバレルショットガンだったようで、武器をアサルトライフルに持ち替えた。

私はそのままショットガンで狙い続けた。

しかし私の手は緊張で震え、動きながら撃ってくる相手に照準が合うことがなかった。引き金を引くタイミングも、全く合っていなかった。

そして、私は撃たれて死んだ。

私は、負けた

その瞬間、ウワーッと奇声を上げながらベッドに倒れ込んだ。全身から力が抜けていくのを感じる。これが、このゲームの敗北。当たらなかった。当てることができなかった。相手も、自分と同じくらいの実力だった。負けた。チャンスを活かすことができなかった。

しばらくボーッとしていた。なにもできなかった。

しかし悔しさが腹の底から湧いてくるまではそこまで時間がかからなかった。

自分がものすごくこのゲームに取り憑かれていることを認めた。なんというゲームであるか。大人がこんな悲しんだり、ムキになるなんて。そしてあの緊張感、やばすぎる。こんなドキドキを、他のどこで感じられるというのだ...? 

時が止まったように見えたのです

それから私は何度かプレーしたが、てんでだめだった。トップ10にすら入れないことがほとんどだった。しかしその一方、少しだけ緊張が和らいでいくのを感じた。死ぬことに慣れる、などというと表現が物騒だが、実際そうなっていった。
緊張がほぐれることで照準は次第に合うようになっていき、相手を狙って打つことはそれなりにできるようになっていった。一応、FPS経験者ではあるのでな...

・・・

しかし勝利というのは、あっけなく突然訪れた。それもこのゲームらしいといえばそうだった、と今では思う。

終盤までろくにアイテムが見つからなかった私は、車に乗って疾走していた。青いダチアだ、今でも覚えている。特に回復アイテムが少なくて、ドリンクは鎮痛剤一本だけ、応急キットはなかった。包帯はある。

安全地帯の中央に、とりあえず車で停車した。途中何度も撃たれたから、車からは煙が出ている。
右手には小屋、左手には丘になった森林がある。
隠れるところは多そうだが、つまりそれは敵も同じである。
右手の小屋には人が入っていることを確認した。

左手の丘の上に、敵影を発見した。と思うやいなや、私は撃たれた。
タン、タン、タン、と落ち着いて撃ってくる。
この人は、冷静だ。かなり正確に撃ってくる。頭を撃たれなかったのが幸いで、HPのゲージがギリギリになってしまった。なんとか車を遮蔽物にすることで、射線を切る(※相手の銃弾があたらない場所に移動すること)ことができた。

しかし相手は威嚇のつもりなのか、車を狙っているのか、撃ってくる。

その時、右奥の小屋の向こうから、ターンという他の銃声音がした。その瞬間に左手の方の銃声は止んだ。左を見てみると、先程私を撃ってきたプレイヤーが、こちらに側面を向けいている。こ、これはチャンスなのでは?
私はゆっくり頭に照準を合わせて、2倍スコープ付きのM16を撃った。ゴツそうな鉄の兜をかぶっている。しかし1発で相手は倒れていった。

あの人をおびき出してくれたスナイパーに感謝する。敵の敵は味方とはまさにこのこと。私は必死に包帯を巻き続けた。

微妙にくぼみのようになっており、後ろから敵が来ても対応できる。
だがこんな広い平原を歩いてくる奴はいないだろう。そうタカをくくっていたものの、後ろは気になる。このゲームにはフリールックと言って、キャラクターを動かさなくても視点だけを真後ろに動かすことができるのだ。

勿論、これもTPS(※正しくはTPPモード。環太平洋パートナーシップ協定ではない。)限定の機能で、FPS(※正しくはFPPモード)だとできない。その機能を使って、チラチラ後ろを見ていた。
どうも敵はこない。

そうこうしているうちに生存人数が3人とかになっている。
私と、小屋の中に一人、おそらく小屋の向こうに一人。
安全地帯は小屋の手前くらいになった。つまり、私の方である。
これは待つに限ると思った。小屋の向こうでは銃声が度々聞こえたから、交戦があったのだろう。消耗している可能性はある。

相も変わらず私のキングエンジンは絶好調である。つまり、めちゃくちゃ緊張している

小屋の中の人は、出てくる気配がない。私は鎮痛剤を飲み、匍匐前進で小屋の前まで近づいた。小屋の向こうには、移動中の人がいるではないか。走っている。その人をめがけて、撃った。
弾は、当たった。血飛沫が出るエフェクトが十分見えるくらいの距離だった。バリアの収縮と共に走っていたからなのか、その人は打ち返してこなかった。小屋の中の人は、相変わらずダンマリである。残り1人。君と私だけ
私はショットガンに切り替えた。
その人はなかなか出てこない。私は待った。小屋の中が最終地点にならない限り、出てくるのを待つと決めた。

最後の安全地帯が決まった。小屋の外だ。この人は移動しないといけない。ドアが開いた。緊張が増す。私は出てくるのを待つ。しかし、こうなるとまた震えのようなものが止まらなくなる。

小屋の中にいた人は、スモークを焚いた。小屋は煙で包まれる。
私は耳を澄ませた。足音やドアの開閉音といった効果音は、消すことができない。敵は煙に乗じて外へ出た。しかし安全地帯の真ん中は道路で、小屋以外に遮蔽物がなにもない。再び小屋の中に入る。

敵は出たり入ったりを繰り返している。

小屋の真後ろにいた私は、ひたすら出てくるのを待った...が、私も完全に有利というわけではない。エリアの収縮により、私も遮蔽物の無い場所に出なくてはならなかった。

煙がなくなった。相手はまだ小屋の中にいる。互いの動きが、お互いにほぼわかっている形になった。相手はサブマシンガンを持っている。形状的に、UMP9だと思われる。私が走り出すと、相手も小屋から銃を打ちながら出てきた。

私は引き金を引き、弾丸は当たった。

その瞬間、ゲームの画面がスローモーションになって、少しずつ霞んでいくのを見た。敵がゆっくりと崩れ落ちていく。そして、そこにはあのメッセージがフェードインしながら出てくるのを見た。

「勝った!勝った!夕飯はドン勝だ!!」

スローモーションになる現象は、初回限定のエフェクトなのか、私の中で起きたことなのかはわからない。

勝った時の喜びは、最初信じられないという感じだった。私が勝ってよかったのか。というか、本当に勝ったのか?スクリーンショットを撮ったり、スマホでディスプレイを撮影したりした。

それからじわじわとこみ上げてくる感情は、安堵だったのかもしれない。バクバク言っていた心臓の音は静かになって、汗も引いていた。

そして負けたときのように、脚に力が入らなくなるのを感じると、猛烈に眠気が襲ってきた。私はそのままベッドに倒れ込んだ。今度は奇声は上げなかった。

「か、勝ったァ...」

そのままぐっすりと眠りに落ちて、その日はよく眠れたのを覚えている。

たかがゲーム、されどゲーム。わたしはプロゲーマーでもないし、ただのしがないゲーマーだ。腕が立つわけでもない。しかも大会とか試合じゃなくて、普通の野良試合である。それなのに、こんなに夢中になれる時間を与えてくれるとは思いもよらなかった。

そしてあの感動は多分、あのときにしか味わえなかったのだと思う。

ありがとうPUBG。


お  わ  り

🎁🎁🎁🎁🎁🎁🎁🎁🎁🎁🎁🎁🎁🎁🎁🎁 🎁         ookini🥰        🎁 🎁🎁🎁🎁🎁🎁🎁🎁🎁🎁🎁🎁🎁🎁🎁🎁