LIVE log 2022.10.08(土) @Art Lounge Mojo;Moja

w/加賀屋みき、さとじゅん。、二尾舞子、ノグチサトシ(from沼津)
[set list]
1.こころのおくのあたたかくてやわらかいところ
2.生存賛歌
3.ブルースが鳴り響く夜に
4.消えない灯

この日は店長の創くんが以前からずっと楽しみにしていた日で
前回に出演した時に「10月はヒリヒリする夜になると思います」と
挑戦状を手渡すような目で言われていた。
事前にノグチさんのPVも見せていただいて、
なんというか、自分のファイティングポーズを今一度しっかり表現したい、
と思っていた。
セットリストは直前まで何度も練り直して、
持ち時間25分の中で余計な曲を入れずに、この日にやるべき曲だけに絞りたいと思った。

この日、久しぶりに会う二尾舞子ちゃんとリハーサルの合間に話していたら年齢の話題になり、
私の年齢が一回り以上も上だと知ったうえで
「えー、私、歳取りたくないですー!」
と真正面から言ってきたので、思わず笑ってしまった。
これが30代前半の頃だったら、密かに拳を握って血管を浮かせていたかもしれないけれど、
今は「ああ、抱きしめてあげたい」と思うお年頃になった。
舞子ちゃんの年齢を聞いて「ああ、女子は焦り始める年齢だなぁ」と感じた。
その気持ち、すごく分かるよ。私もそこを通ってきたよ。
でも、今、歳を取って私はすごく楽しいよ。
歳を重ねるって素敵なことなんだよ。
と言ってあげたくなった。
30歳が射程圏内に入ってきたころに「歳を取りたくない」と思うのは、自分で自分にかける呪いになる。
その呪いは「歳を取った自分は価値がない」になってしまう。
でも呪いだなんて気づかずに焦る。
周りが結婚して子供が生まれて、同じような道を辿れていない自分はなんだか置いていかれている気持ちになる。
起こってほしいドラマはひとつも起きてはくれないのに、
起こってほしくないドラマばかりが自分に降りかかってくる。
本当は周りと比べる必要なんて何ひとつないのに、そうは分かっていてもどうして私たちって比べてしまうんだろう。
私にも、周りと比べて自分にかけていた呪いがいっぱいあった。
呪いの原因はコンプレックスだ。
うまく見せようとする見栄だ。
本当は未熟なところほどその人の魅力だったり、足りないところほど愛おしかったりするのに、怖くて見せられない。
コンプレックスとうまく付き合えないと首を絞められるばかりで苦しくなる。
でも、コンプレックスを味方につければ、自分を成長させてくれる原点になる。
どうしたら自分と仲良くなれるか、私の内側に在る孤独という美しさに気付けるか。
私は自分と仲良くなりたかった。
あの頃より今、わりと仲良くなれている気がする。
みんなどうやって自分と付き合っているんだろう。
ともあれ、音楽を作る、という作業は
私にとっては、嫌でも駄目な自分、足りない自分を突き付けられて、
それを抱きしめて昇華させる作業みたいなもので、
多かれ少なかれ、そういう人は多いんじゃないだろうか。

デザイナーの皆川明さんが本の中で
「裁縫はうまくできなかった。うまくできないことはなかなか覚えない。
だから長く続けていられそうだと思った」
と書かれていて、私は目から鱗だった。
人よりうまくできないこと、人より時間がかかってもなかなか上達できないことを「向いていない」という言葉で片づけてしまいがちだ。
「向いていない」ってやめる理由にぴったりなんだもの。
「向いていない」けど続けることって、すごい量の「好き」が必要になる。
「楽しい」と感じられる時間は少ないかもしれない。
でも、向いていること、人より上手にできることは、その道で壁に当たった時により苦労するかもしれない。
「得意だ」という自信が壁をより困難にしてしまうかもしれない。
私が、ちっともうまくいかない歌を続けてこられたのは、
もしかしたら「うまくいかなかったから」かもしれない。
それでも時々、ご褒美のような瞬間があったから。
もっと人並に歌を歌えるようになって、楽しい時間ばかりだったら、やめていたかもしれない。

そして、私には偉大なる先輩たちがたくさんいた。
歳を取ることがかっこいいと思わせてくれる先輩たちばかりだった。
おせっかいを焼いてくれる素敵な先輩たちにたくさん巡り合えてきた。
その「おせっかい」が「愛情」だったと気付くのは時間がかかる。
「おせっかい」って何年も先に送る「愛情タイムマシン」みたいなものだと、最近ようやく分かった。
そして、私もようやく「おせっかい」を焼きたいと思えるお年頃になった。
最近やっと「おばさん」の啓示を受けて、そろそろ入口に立てるようになったのでは、と思っていたけれど、
その矢先、またしても目上の方に「君はまだ若いよ、おばさんじゃない」と言われてあえなく撃沈。
私、そろそろ人におせっかいを焼きたいです。
私でよければ抱きしめてあげたいんです。

話は大いに逸れたけど、そんな夜でした。(どんな夜)
恋愛の歌なんてひとつも歌っていないけど、
私の歌はすべてラブソングだと思っている。
ヘイトも歌えるノグチさんの歌を聞いていても
「この人の歌も、すべてラブソングだなあ」と感じた夜。

負けんなよ。