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文学タブー事情【2016年4月号第1特集】

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2016年3月の記事一覧

漱石、芥川など純文小説だけではい! 日露戦の飛び散る肉片描写も!? 戦前ニッポンの本当にヤバい小説

――同時代の売り上げ規模としてはエンタメ系のほうが大きくても、後世まで残るのはほとんどが純文学系の作品。しかし、現在では忘れられてしまっている古いエンタメ作品の中にも、十分読む価値のあるものが多数存在する。そこで、明治、大正、昭和初期の知られざる傑物作家、傑作小説を一挙にご紹介!

『浮雲』(新潮文庫)

 夏目漱石、森鴎外、芥川龍之介に太宰治。

 国語の授業で取り上げられる戦前の小説というと

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【ジャーナリスト・小林雅明が選ぶ】映画をキケンに味わうための未邦訳文学3選

[ジャーナリスト]小林雅明(こばやし・まさあき)
音楽ジャーナリスト。著書に『誰がラッパーを殺したのか?』(扶桑社)、監訳書に『チェック・ザ・テクニーク』(シンコーミュージック)や『ロスト・ハイウェイ』(扶桑社)などがある。

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【ライター・池城美菜子】が選ぶ未邦訳本――「こんなに面白いんだから訳させて!」なノンフィクション文学3選

[ライター]池城美菜子(いけしろ・みなこ)
ヒップホップやレゲエ、R&Bなどのライナーノーツ執筆をはじめ、対訳も手がける。著書に『まるごとジャマイカ体感ガイド』(SPACE SHOWER BOOKs)などがある。ツイッター〈@minakodiwriter〉

 面白いものやおいしいお店を見つけると、 そればかり周囲に勧める迷惑な人っている。私、ソレです。 本の場合はさらに重篤。特に邦訳がないノンフ

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【翻訳家・寺尾隆吉】が選ぶ・邦訳発売が決定している注目のラテンアメリカ文学3選

[翻訳家]寺尾隆吉(てらお・りゅうきち)
1971年、愛知県生まれ。ラテンアメリカ文学研究者、翻訳家。フェリス女学院大学国際交流学部教授。ラテンアメリカ文学の邦訳とともに、安部公房や大江健三郎らのスペイン語翻訳も手がける。

 私は翻訳家ですが、出版社からの依頼ではなく、こちらから作品を提案し、同意を得た上で邦訳を進めています。また、ラテンアメリカ文学研究者という立場から、売れる/売れないの観点か

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丸屋九兵衛が案内する未訳文学の奥深き世界観!邦訳すべき“歴史改変SF”小説

――「もし、南北戦争で南軍が勝っていたら」――そんな世界的歴史を題材にした“歴史改変文学”なるジャンルがある。ここでは本誌連載でおなじみのライター・丸屋九兵衛氏が太鼓判を押す未邦訳作品を解説。さらに3人の識者に「今こそ邦訳すべきタブー文学」を選出してもらった。

(写真/北川 泉)

 中規模以上の書店なら、〈SF棚〉が標準装備。日本は決してSF後進国ではない。もっとも、その棚を嬉々として徘徊して

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【小説家・嶽本野ばら】「小説で薬物にハマり、依存しました──」薬物による2度の逮捕と清原にすすめたいあの本

――2015年4月、『下妻物語』(小学館)などで知られる小説家・嶽本野ばらが、麻薬取締法違反で逮捕された。薬物による逮捕はこれで2度目。やめられなかった薬物への未練と、文学界の巨匠たちへの憧れ、そして清原和博へのメッセージまで、現在の心境を語る。そして、そこにはいつも本があった──。

(写真/高田 遼)

 僕が薬物で最初に逮捕されたのは、2007年でした。『幻想小品集』(KADOKAWA)を出

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アメリカ、フランス、日本のドラッギーな表現 麻薬文学の作家たちとパンチライン

――麻薬文学の代表的作家として挙げられるのが、これらの人物かもしれない。彼らの作品を読めば、ドラッギーな“名文”に出会える!?

■麻薬の効果を冷静に見つめた象徴派詩人
シャルル・ボードレール

『悪の華』(1857年)で近代における孤独と苦悩を歌い、フランス近代詩を確立した詩人。60年、英国の批評家ディ・クインシーの『阿片常用者の告白』(1822年)の翻案も含む『人工楽園』を刊行。それは、19世

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有名作家によるドラッグと文学のマリアージュ! コカイン中毒で原稿が鼻血まみれ! “麻薬文学”の近現代史

――麻薬と文学と聞いて、バロウズやギンズバーグのようなビートニクを思い浮かべる読者もいるだろう。だが、それだけでなく、フランス文学や日本文学においても、ドラッグと密接な関係の作家・作品たちを挙げることができるのだ。薬物絡みの事件で騒がしい今、“麻薬文学”の近現代史をひも解きながら、その真価を問いたい。

J・コクトーがアヘン中毒の解毒治療中に綴った『阿片』には、このような奇怪なデッサンも……。

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出版不況の「犯人」!? 新潮社が図書館に敵意表明!



 TSUTAYAの参入とその「挫折」から、近年注目を集めている図書館。かつてと比較して、居心地のいい図書館は増えてきているようだが、新潮社の佐藤隆信社長が、15年の全国図書館大会で「増刷できたはずのものができなくなり、出版社が非常に苦労している」と、図書館に対して敵意を露わにした発言をしたことが話題となっている。

 出版社だけでなく著者、書店などの指摘から、図書館における貸出が文芸書の販売冊

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「栗田」も「太洋社」も破綻で出版界に激震!流通網は崩壊してしまうのか…最大手すら赤字の出版取次



 昨年6月、業界4位の取次「栗田出版販売」が民事再生法の適用を申請し、今年2月には5位の「太洋社」が倒産の方針を発表。中堅取次の相次ぐ破綻で、出版界に激震が走っている。栗田は業界3位で経営再建中の大阪屋と統合し、「大阪屋栗田 OaK出版流通」として今春から再出発を果たすことが決定したが、ある出版営業担当者はこう語る。

「大阪屋では、物流を日販に委託し、自社では仕入れと営業だけ行っている。新会

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【文芸編集者座談会】『火花』効果で芸能人作家が印税交渉開始! 出版社は、芸能界の言いなり!?

――単価の高い単行本が売れれば、会社に数億円の利益をもたらすのが文芸の世界。そのため、多くの出版社にとって作家のゴシップはタブーとなっている。そこで本稿では、出版界の一大権力である文壇の裏側を、関係者にこっそり聞いてみた。

文藝春秋、新潮社、講談社……と版権が転々とした『三匹のおっさん』の講談社版サイト。

【座談会参加者】
A:30代・大手出版社編集者
B:40代・大手出版社編集者 
C:30

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小説家の稼ぎ最新事情――専業でやっていけるのは一握り!「文学じゃ、食ってけない」

――昨年は又吉直樹『火花』が芥川賞を受賞し、発行部数が200万部を突破と、久々に明るい話題が飛び出した文芸業界。ただ、大半の作品が売れていない実態は以前と変わっておらず、出版社以上に困窮しているのが、作品を生み出す作家たちだ。彼らの収入源などの実態は、いかなるものなのだろうか?

(絵/管弘志)

「本当に転職を考えなくては。専業作家になったのは失敗だったと強く思う」

 今年2月、鮎川哲也賞の受

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