丸屋九兵衛がBTSの米国支持層を徹底分析――私たちのスターを待ち望んでいた! 連帯するアジア系アメリカ人の威力

――BTSがアメリカでブレイクした背景を探るとき、見過ごせないのは“アジア系アメリカ人”の存在である――。そう話すのは、ブラック・ミュージック専門サイト「bmr」編集長で、本誌連載陣のひとりでもある丸屋九兵衛氏だ。一体、どういうことなのか? BTSを絶賛してやまない氏が、語り倒す!

日本でも公開中の映画『クレイジー・リッチ!』。原題は『Crazy Rich Asians』なのに……。

 2018年8月15日に映画『クレイジー・リッチ!』【1】(原題は『Crazy Rich Asians』)が全米公開されて大ヒットを記録し、9月28日より日本でも公開されています。ハリウッド・メジャー作品としては『ジョイ・ラック・クラブ』【2】以来25年ぶりに、“Asian”をメイン・キャストに起用して製作された映画です。

 ここでひとつ注意が必要なのですが、アメリカ人が“Asian”という場合、アジア人のことも、アジア系アメリカ人のことも指すので、どう訳すかはコンテクストによります。いずれにせよ、私は『クレイジー・リッチ!』の成功と、BTSがアメリカでブレイクしたことは無関係ではないと考えているんです。

 この『クレイジー・リッチ!』の日本公開直前に、私は「アジア系アメリカ人が歩んだ道」というテーマのトーク・ライブを行いました。そのことをツイッターでつぶやいた際、アメリカ在住のBTSファンから「BTSのおかげでアメリカにおけるAsianの地位が向上した」「自分がAsianであることが誇らしいという感情を抱けるようになった」といったリプライをもらったんですね。これは非常に示唆的な反応です。

 まずは、アメリカにおけるアジア系アメリカ人の連帯について説明しましょう。1994年から2004年まで刊行された「YOLK」【3】という、アジア系アメリカ人によるアジア系アメリカ人のための雑誌があり、例えばある号では、まだ無名に近かった頃のジョン・チョウ【4】が表紙を飾っています。彼は韓国系アメリカ人の俳優で、ブレイク後は09年に公開されたJ・J・エイブラムス監督版の『スター・トレック』にヒカル・スールー役で出演していますが、スールーというキャラクターは日系とフィリピン系のハーフであり、オリジナルの『スター・トレック』シリーズ(66~91年)ではジョージ・タケイという日系アメリカ人が演じていました。

 よって、エイブラムス監督はスールー役に韓国系であるジョン・チョウをキャスティングすることの可否をジョージ・タケイ【5】に相談したところ、「まったく問題ない」という答えが返ってきたそうです。「なぜなら、スールーはAll Asianの代表だからだ」と。要するにアメリカでは、日系も韓国系も中華系もフィリピン系も、みんなまとめて“アジア系アメリカ人”というひと塊の存在であるということを、このエピソードは象徴しているわけです。

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