1分でわかる『21世紀の資本』特集も!? ピケティに便乗しまくる雑誌レビュー

――ピケティ、そして『21世紀の資本』に関連した経済論文のことはよ~くわかった! では、(サイゾー含む)商魂たくましい日本の出版業界は、このブームにどう便乗してきたのだろうか? 当記事では、日本の出版メディアによるピケティと『21世紀の資本』の関連記事を、サクサクサクっと総ざらい!

『【図解】ピケティ入門 たった21枚の図で『21世紀の資本』は読める!』(あさ出版)

 まず、日本の雑誌でこのブームにいち早く便乗したのは「日経ビジネス」。英エコノミスト誌がピケティを取り上げた記事を翻訳掲載している。いずれも「政策の設計図としてはお粗末」(14年5月19日号)、「英ファイナンシャル・タイムズがデータに疑義」(14年6月9日号)とネガティブな内容だが、後者に関してはピケティ自身が反証済み。ピケティの考察が海外で多くの議論を巻き起こしていることがわかる。

 日本でピケティが注目を集めるきっかけとなったのは「週刊東洋経済」(7月26日号)における巻頭特集だろう。他誌に先駆け独占インタビューを実現し、『21世紀の資本』の論点、日本社会の現状についての提言、「資本主義のポジティブな力は、公共の利益のために利用するべき」「本の目的は議論を巻き起こすこと」といったピケティの言葉を紹介。なぜアメリカでピケティが熱狂的な議論を巻き起こしたのかを分析するコラムも掲載し、概要を知るには十分な内容になっている。

 以降、「中央公論」「世界」「週刊エコノミスト」「経済界」「生活経済政策」「環」「公明」「季刊 家計経済研究」などなど、12月に日本語版が出版されるまで各誌がピケティを取り上げていく。その内容はほとんどが英語版かフランス語の原書を読んだ識者による論考で「海外でピケティブーム」「ピケティはちゃんとデータ調べたからすごい」「このままだとピケティのいう通り格差が広がるからヤバイ」「世界的な資産累進課税ってどうなの」といった内容。そんな中で異彩を放つのは「情況」(7・8月合併号)における神奈川大学教授・的場昭弘氏の論考「ピケティの『二一世紀の資本論』──マルクスの利潤率の傾向的低落の法則とピケティ」だ。的場氏はピケティの「経済成長が停滞したままで資本の収益率が上がれば不平等が生まれる」という議論について「これはマルクス流にいえば、利潤率の傾向的低落の法則でもある」として(え?)、ピケティの主張をマルクスの資本主義崩壊の予言に結びつける。「ピケティが資本主義の廃棄を逡巡している」とまで言うんだけど、ピケティはそんなこと逡巡しているのだろうか。マルクスちゃんと読んでないそうだけど……。

ここから先は

2,543字
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?