これは果たして“写真”なのか!? 海外アート写真の実験的すぎる最前線――気鋭作家が写す性と死【2】

――ここまで日本人写真家にクローズアップしてきたが、欧米には“商業写真”とは異なる“アート・フォト”というシーンが日本よりも明確に存在する。オランダの写真雑誌「Foam」を引き合いに出し、その最新動向の一端をつかんでみたい。

 写真の発明から100年以上が経過し、広告やファッション誌などで先鋭的なビジュアルを世に打ち出す“商業写真”はもとより、写真をメディアとする作品が世界のアート・シーンでも広く享受され始めている。日本人の中でも、世界的に知名度の高い荒木経惟、森山大道らの写真は各国のギャラリーで展開されているし、“写真”を現代アートとして展開することに成功した杉本博司の作品などは、日本人写真家としてオークションの最高落札額を記録したことでも大きな話題を呼んだ。

 一方、インターネットの登場以後、日常生活で目にする写真の量は、20世紀のそれとは比べものにならないほど爆発的に増加し、カメラアプリを使えば誰もが“いい感じ”の写真を撮れてしまう今日、写真を武器に勝負するアーティストたちは新たな選択を余儀なくされている。現代における写真の強度はどこにあるのか? その問いにいち早く答えるかのごとく、オランダの写真雑誌「Foam」が2014年に刊行した特集号「Under Construction」は、従来の“写真”の概念を大きく覆すアーティストたちを打ち出した。「Foam」といえば、01年から続くオランダ・アムステルダムの写真美術館によって発行され、ヨーロッパを中心とするアート写真のシーンを牽引してきた雑誌である。そんな同誌がこの特集号で揃えた9人の写真家たちは、一見すると写真には見えない作品ばかりであり、そのインパクトは世界各国をはじめ、ここ日本の写真界の一部にも大きな波紋を残したのだ。

「Foam」38号の特集「Under Construction」より。上からヨゼフ・アルバース、ダニエル・ゴートン、ケイト・ステシーの作品。

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