「テロ」とはそもそもなんなのか? もとは欧米社会の”発明品”!? フランス”イスラムテロ”の真相

――本誌名物連載「法痴国家ニッポン」の河合幹雄氏が、今回は特集ページに特別出張。法社会学者であり仏在住経験もある氏が、1月にフランスで起きた"イスラムテロ"やその背景にある移民問題の本質を、歴史的な文脈も射程に入れながら読み解く!

『イスラム国 テロリストが国家をつくる時』(文藝春秋)

 今回は連載「法痴国家ニッポン」の代わりに、この第1特集の中で、2015年1月にフランスで発生したイスラム過激派による一連のテロ事件について、フランスの社会事情を念頭に置きつつ考察します。また、「そもそもテロとはなんなのか?」という根源的な問いについても、私なりの視点から論じてみたいと思います。

 はじめに、事件の経緯を簡単に整理しておきましょう。最初の事件が発生したのは1月7日。過激な風刺マンガで知られるフランスの週刊新聞「シャルリー・エブド」のパリ本社をカラシニコフ自動小銃で武装した2人組の犯人が襲撃し、同紙の編集長や風刺マンガ家ら12名を殺害したのち逃走。9日、犯人はパリの北東約30キロに位置する印刷工場に人質を取って籠城、強行突入した治安当局の特殊部隊によって射殺されました。

 その事件と並行して、8日にパリ南郊で女性警察官を殺害したとされる犯人が、9日、パリ東部の街ポルト・ド・ヴァンセンヌのユダヤ系食品店に押し入り、店員ら4名を射殺。人質を盾に立てこもるも、こちらも特殊部隊によって射殺されるという凄惨な結末を迎えました。

 偶然ながら私には、1986~88年の約3年間フランスへ留学し、事件のあったヴァンセンヌで1年以上暮らした経験があります。深夜でも出歩けるほど治安がよく、日本人にも住みやすい街です。むしろ、そんな安全な地域だからこそテロリストは、そこを修羅場にしたかったのではないかという気がします。

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