アーバンギャルド・松永天馬が分析する・ポップ化しメタ化した“メンヘラ”

――こちらの記事で触れてきたように、「メンヘラ」はもはや文化になってきた。では、元来は非常にネガティブな意味合いだったはずのこの言葉/文化が、どのようにして一般性を獲得したのか? “病気”をコンセプトに据え、メンヘラ少女たちからの支持も厚いバンド・アーバンギャルドの松永天馬氏に聞いた。

(写真/草野庸子)

「メンヘラという言葉が匿名掲示板発祥であるように、かつては名前や顔を出して“病み”を発信することはある種のタブー、リスクの高い行為でした。SNS時代になって誰もが好きに発信できるようになった結果、ディスや病みといったネガティブな表現もなし崩し的に許されるようになり、おのずと“メンヘラ”という概念も拡散していったんだと分析しています」と語るのはアーバンギャルドの松永天馬氏。

「トラウマテクノポップバンド」を標榜するアーバンギャルド(2008年デビュー)は、そのコンセプトの中心に「病気」感を据えている。09年公開の「女の子戦争」PVでは「メンヘラーに人権を!」とデモをする少女たちが登場するなど、早くから「メンヘラ」を音楽表現に取り入れていた。同バンドのボーカル・松永氏は、音楽以外の領域でも「メンヘラ」や「病み」を分析する語りを行っている(一方で『Let’s天才てれびくん』〈NHK-Eテレ〉にも出演中だが)。その視点からすると、「近年のメンヘラ表現の特徴は、メタ視とユーモアが前面に出ているのが特徴だと思う」という。 

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