雑誌の真髄は連載に宿る! 「JUNON」から「月刊むし」まで――知られざるタブー破りな連載企画をウォッチする!

――雑誌の顔といったら、「表紙」と「特集」だというのが普通だろう。だが、実は雑誌の真髄は、連載にこそ宿るのではないか――。そんな仮定のもと、雑誌ウォッチャーやメディア論研究者たちから、知られざるヤバい/面白い/タブー破りな連載をピックアップ!

「JUNON」2017年05月号(主婦と生活社)

 あなたが雑誌を買う動機はなんだろうか? 「週刊文春」(文藝春秋)などの週刊誌であればスクープによって売り上げが左右されるし、「an・an」(マガジンハウス)のセックス特集は企画そのものはもちろん、表紙に登場するタレントも大きな話題となる。また、近年では付録も見逃せないフックとなっており、女性誌には毎号豪華な付録がつき、最近だと少女コミック誌「ちゃお」(小学館)にて、ルンバさながらの自動掃除機「プリちぃおそうじロボ」がインターネットを中心に大きなバズを生んだ。このように、表紙や特集は話題になりやすい。だが、本誌もそうであるように、雑誌を構成しているのは特集のみではない。ページを繰っていった先には、多くの連載が控えている。表紙・特集を雑誌の顔とするのなら、連載は胴体にあたるのではないだろうか? そんな雑誌を支える陰の主役・連載企画に、本稿ではスポットを当てていきたい。

 まず、雑誌の面白い連載と一口に言っても、パターンがいくつかあることを指摘しておきたい。その雑誌のカラーやスタンスを象徴するようなもの。マニアックゆえに門外漢にはチンプンカンプンだが、書き手の熱量が伝わってくるもの。そして「一体なぜこの雑誌にこんな人の連載が?」と思うような、意外性のあるもの。本稿ではこの3パターンに分けて、メディア論の社会学者、女性誌ウォッチャー、雑誌マニアといった、雑誌を読むプロフェッショナルが今注目している連載を紹介していこう。

 本誌の姉妹サイト「サイゾーウーマン」にて、7年以上にわたり各種女性誌をウォッチし続けているライターの西澤千央氏がオススメする「婦人公論」(中央公論新社)の小保方晴子連載は、パターン1「雑誌のカラーを象徴する」タイプのものと言えそうだ。連載タイトルは「小保方晴子日記 『あの日』からの記録」。

「『婦人公論』は、有名人のインタビューから読者の体験手記まで、“自分の中にある言葉”を大事にしている雑誌です。世間の良い悪いではなく、その人自身の言葉で内面を語ることが優先されています。だからスキャンダルやトラブルがあったタレントのインタビューも多い」(西澤氏)

 過去には、2013年にスキャンダルを起こして坊主になったAKB48峯岸みなみや、洗脳騒動から復帰したX JAPAN・Toshlのインタビューなども掲載された、いわば人生駆け込み寺のような雑誌。小保方自身も、16年6月14日号にて瀬戸内寂聴との対談で登場。約半年後の17年1月24日号から、満を持して連載が開始された。瀬戸内寂聴との対談の時点で「悲劇のヒロインぶっている」という批判もみられたが、連載も例外ではない。

「彼女は“語りたがり”で、自分を語る言葉とテクニックを持っています。第1回では雪の降る様子に自分の心情を仮託してみたり、14年当時の日記になる第2回では『コーヒーの味がしない』と、自分の感情が死んでいる様子を食べ物の味がしないことで表現したりするんです。そういう書き方をするのは、“最強の自分語り”ですよね。そういうところがこの雑誌と相性がいいのだと思います」(同)

「婦人公論」ではその他に、創刊100周年を記念して酒井順子の「『婦人公論』100年に見る 変わる女、変わらぬ女」というフェミニズム視点の硬派な連載をしている一方、林真理子による宮尾登美子の評伝(と言いつつ、半分くらいは林自身の交遊自慢や文壇ゴシップ)も連載されている。この2つを並べて載せているところが、この雑誌の面白いところだろう。

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