サブカル書店から新左翼、猫の不倫から昭和の製麺まで!マニア書店“ウチの売れ筋雑誌”

――この出版不況のなか、どっこい生きてるマニアック書店に話を聞き、その販売動向から現代ニッポンを読み解く! マニアック書店の雑誌販売傾向、顧客動向、2017年のオススメ雑誌、その他のジャンル傾向から見える出版業界の“いま”とは?

『ねこ自身』(光文社)

 雑誌が売れないといわれて久しい。毎年粛々と多くの雑誌が休刊しており、中でももともと読者層の狭いマイナーな雑誌の打撃ははかりしれない。

 しかし一方で、書店に奇妙な動きが見られる。個人経営の小さな書店の中に、ある特定のジャンルの本や雑誌だけを置く専門書店へと業態変更している店が少なからず存在するのだ。では、そういったマニアックな書店では雑誌は売れているのだろうか? そして、どのようなものが売れ筋なのか?

 そこでまずは、本の街、神田神保町の交差点から徒歩数秒という好立地にある「猫本専門 神保町にゃんこ堂」へと足を運んだ。文字通り、猫の書籍や雑誌ばかりが置いてある書店である。訪れた日は、奇しくも2月22日で猫の日。そのためか、普段よりもお客さんが多めとのこと。やはり猫好きは猫の日に猫の専門書店で猫の本を買いたいものなのだろうか。平日の昼間にもかかわらず、カップルから中年男性、若い女性まであらゆる人がやって来ては雑誌や写真集を購入していた。本や雑誌だけでなく、猫のおやつや猫じゃらし、缶バッジ、クリアファイルといった猫グッズも置かれている。

 猫本を扱い始めて今年で4年目になるのだという。もともとは「姉川書店」という名前で30年ほどやってきた老舗書店で、今でも店の入り口には「姉川書店」の看板も掲げられている。

「本が全然売れなくなってしまって、もう店じまいしようか、という話にもなっていたんですよ。大型書店なら山積みになる新刊も、これくらいの小規模店だと取次からなかなか入ってこないですし」

 こう嘆くのは、店主の姉川二三夫さん。神保町駅から徒歩1分という好立地でもこの有り様なのだ。

「それで娘に相談したら、猫好きな人はたくさんいるから思い切って猫だけをテーマにしてはどうかと言われまして、最初は壁際の一列だけ、猫本のコーナーにしてみました」

 すると、驚くほどお客さんが入るようになったのだという。

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