結局、見た目よりも中身が重要なのか? “整形はタブー”という男の幻想と美容マンガが描く女性心理

――医療をテーマにしたマンガは数あれど、“美容整形”をテーマにした作品はそう多くないはずだ。だが人間にとって美貌を求めることは、本能のひとつであることに疑いはなく、これをテーマにしたマンガには名作が散見される。そこで描かれる“美”への追及は、何を表しているのだろうか。

沢尻エリカ出演『ヘルタースケルター』の映画版ポスター。

 手塚治虫の名作マンガ『ブラック・ジャック』に、「スター誕生」という有名なエピソードがある。主演映画で高い評価を得て、女優賞も受賞したひとりの女性。しかし彼女の美貌は整形によって作り替えたものだった。地味な片田舎の少女だった自分を生まれ変わらせてくれたのは、主人公である天才外科医ブラック・ジャック。そして彼女は彼を恋い慕っていた。

 若かりし頃、その女優は整形手術を受けるため、天才的な外科医ブラック・ジャックを訪れるが「人間は生まれたままの個性が美しいのだ」と反対された。だが、ブラック・ジャックは彼女の堅い決心に折れ、顔へメスを入れる。やがて成功した彼女が、再びブラック・ジャックのもとを訪れると、部屋には整形前の彼女の写真が飾られており、彼は「その娘はもう死んだ。魅力的な子だった」と言うのだった。

 このエピソードには、美容整形で美しくなるという考えを拒絶する、極めて男性的な心理が表れているのかもしれない。『整形した女は幸せになっているのか』『キャバ嬢の社会学』(共に星海社新書)の著書があるライターの北条かや氏は、このエピソードを読んでこんな感想を漏らす。

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