テンセントにネットフリックスも参戦!――もはや毒肉まんは過去の話!国家も支援する中国食動画

――中華料理なんてものはない――中国の広大な国土の中で多様な民族がおりなす食を紹介する動画が今、熱い。さままざな形で同地のグルメを追求する動画が中国では大量に生産されており、ユーチューブなどで配信されている。13億人の人民がユーザーが熱狂する、ハイクオリティグルメ動画をご紹介!

ネットフリックスで配信されている『美食の起源』は、1話15分程度。ついつい連続して見入ってしまうのには、ちょうどいい長さだ。

 最国・雲南省にある屋台街が真俯瞰で映し出される。もうもうと煙が立ち込める小さな店内に、客たちは名物の牛肉串焼きを50本、100本単位で注文し、黙々と食べ続けている。ドローンなど最新の撮影機器を使用した映像は、欧米のドキュメンタリーとそん色がない。ナレーションは従来のドキュメンタリーのように静ひつさや重厚さはなく、話し言葉のようにポップな口調で展開される。そこに「1本が安くてもこれだけ食べると割高だよ」「串焼きを食べ過ぎるとがんになるって、ばあちゃんが言ってた」などの弾幕(コメント)が映像にかぶさって飛び交う。

 中国各地の串焼きを紹介する「人生一串」【1】のワンシーンだ。同作は、中国最大級の動画プラットフォーム「bilibili(ビリビリ)」が2018年夏に初めて制作したオリジナルのドキュメンタリー。

「人生一串」のシーズン1(全6話)は約5697万回再生され、約1万人のユーザーによるレビューも9・8と高スコアとなっている。7月のシーズン2の放映開始を前にして、多くのユーザーが続編を心待ちにしているようだ。同作の特徴は「90后」や「00后」といった90年~00年代生まれの若者をターゲットにしたところで、ビリビリのメイン層である二次元・アニメオタクに刺さるタイトルやナレーションを多用している。弾幕でユーザーたちがコメントを入れられるよう、あえて「ツッコミどころ」を要所要所に忍ばせてあるのだ。

 中国では近年、ドキュメンタリー番組が急増している。中国国務院「中国ドキュメンタリー発展報告2019」によれば昨年、全土で番組制作に投入された総額は約766億円(前年比19%増)、同市場規模は約980億円以上となっている。この急成長の原因のひとつは間違いなくグルメ番組の存在だ。昨年、中国で最も観られたのはグルメドキュメンタリー「風味人間」【2】で、視聴回数は10・7億回、2位の「舌尖上的中国シーズン3」(約4億回)もグルメ番組だ。他ジャンルと違ってグルメ番組に若者の視聴者が多いのは、ビリビリのような事例のほか、スマホやスマートテレビの動画配信で気軽にクオリティの高いグルメ番組が見られるからだろう。

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