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【愛用品リスト/8】ハンス・ベルメールのしおりとMOEBEのフレーム

前回、「MacBookAirの色をスペースグレイにしたら自分の中で何かが崩れ、突如部屋を攻めてみたいという欲が生まれた」という話をした。今回は、いわばその続編である。

部屋に絵を飾ってみたいと、長年思っていた。もちろん、雑貨屋とかで売ってる、なんとなくオシャレっぽくてインテリアと合うことを見越した絵でも悪くはないんだけど、個人的には、どうせ飾るならガツンとインパクトのあるものをというか、本当に魂の底から好きだと思えるものを飾りたい。数年前にヒカリエの展示場で見た、ダミアン・ハーストのリトグラフみたいなやつがいい。まじで。しかし当時の私には財力がなく、数十万円のリトグラフを即断即決でポンと買うことは、できなかったのであった……今もできませんが……。

しかし、「飾りたいけど飾れる絵がないんだもんね〜」と10年くらいフワフワしていた私の脳みそに、2月某日、突如雷鳴が轟いたのである。何で見たんだっけ、たぶんツイッターかな、そう、私には飾りたい絵がなかったわけではない。飾るにふさわしいフレームがなかったのだ! 不思議なことに、MOEBEのフレームを見てすぐ、「あれ、私、飾りたいやつ、あるじゃん」と閃いたのであった。それまでは、「アレ」を飾るという発想自体がなかったというのに。

MOEBEのフレームが『ハマスホイとデンマーク絵画展』(※感染症予防のため現在は休館中。再び開館する日は公式サイトを見てくれ)で販売されているという情報もほぼ同時につかみ、私はいそいそと、上野に向かったのであった。

さて、「アレ」とは何か。それは、2013年か2014年くらいに買った、ハンス・ベルメールの作品集に限定でついていたという、激レアなしおりである。購入場所は、恵比寿にある「LIBRAIRIE6」というギャラリー。実はこちら、私の大学院のゼミの先輩がやっているギャラリーだ。おそらくここでしこたま買い込めば、私の永遠の憧れである澁澤龍彦の部屋が実現できるのではないかと思うくらい、素敵な本や雑貨が豊富なギャラリーである。

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(※この作品集は別で、Amazonで買いました)

ハンス・ベルメールは、私のもっとも愛するグラフィックデザイナー、人形作家だ。有名なのは、人間の体をぐちゃぐちゃに配置した球体関節人形。胴から胴が出ていたり(私の持っているしおりはこれ)、お腹から直接頭部が飛び出していたり、まあひとことで言えば不気味な人形たちである。しかし、彼がなぜこのような気味の悪い人形を作っていたかーーそれは、ナチズムへの反対を表明する意図があった。ナチスドイツが掲げる「健全で優生なるアーリア民族」の像に、ベルメールは抵抗したのである。

まあ今でいうと、筋トレ至上主義に異を唱えるみたいな感じ? いや、そりゃ軽すぎか。でも、行きすぎた筋トレ至上主義と健康志向は、身体障害者への差別や排除に繋がりかねないから、私はけっこうまじで斜めに見ているんだよね。実をいうと私もサウナは好きだし、水風呂と往復3セットとかしちゃうし、健康志向のすべてを否定するわけではないけどさ。

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真面目な話はまた機会を改めて書くとして、とにかく、このハンス・ベルメールの作品が私は大好きだ。このしおり、真ん中に丸い輪っかがあるのがわかると思うんだけど、ここを起点に胴と胴がくるくる回転するんだよー、なんてキュートなの。

そういうわけで、数年前に訪れた「LIBRAIRIE6」にて一目惚れして買ったのがこのしおりなのだが、値段はそこまで高くはないものの、いかんせん激レアである。私は本を平気で折り曲げるし、コーヒーをこぼすし、しおりがないときはドラッグストアのレシートとか挟んでいるし、まあ端的に言って、あまり優雅な読書はしていない。その環境に、このキュートで激レアなしおりを投入できない。よって、買ったはいいものの、長く行き場がなく、暗い場所に保管されていたのだ。

でも、MOEBEのフレームを見て、頭の中で雷鳴が轟いた。飾りたいもの、あったじゃん。絵画ではないけれど、ガツンとインパクトのある魂の底から好きなもの、あったじゃん。飾りたいものがないのではなくて、飾るにふさわしいフレームがなかったのよ。MOEBEのフレームにハンス・ベルメールのしおりを入れて飾るのは、閃いた私の頭の中ではこれ以上ないほど運命的で、必然であるように思えた。まるで、ずっと探していたパズルのピースがぴったりとハマったような。

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これまでずっと暗い場所に眠っていたしおりは、今ではアクリル板に挟まれ、私の部屋のなかなか目立つ場所に鎮座している。そして、ナチズムや全体主義への抵抗の意志を、ポピュリズムへの警戒を、今日も明日も訴え続ける。あ、あと、かわいい! 澁澤龍彦の部屋に一歩近づいたのではないか、これは?

MOEBEのフレームは「北欧暮らしの道具店」で買うことができる。が、色が黒かナチュラルしかないっぽいんだよね。私は白を選べてとても満足。オシャレと抵抗は同居できる! というか、私が不勉強なだけで抵抗のデザインてたくさんあるからな。あんまりすべてのモノに思想を込めすぎるのも堅苦しいけど、これは、今では私の部屋でいちばん目立つ、歌でいえば「サビ」の部分だ。だからちょっとくらい、私の思想と美意識がビシバシでもいいよね!?

我が家に来る機会がある人は、どうぞゆっくりご覧になっていってね。


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