【日記/76】顕微鏡による観察

これまで私は、世界とは五大大陸からできているものだと思いこんでいた。

五大大陸とはいわずもがなだが、ユーラシア大陸と、アメリカ大陸、アフリカ大陸、オーストラリア大陸、そして南極大陸である。しかし最近、この認識を改めなければいけない事実に直面している。

どういうことかというと、まずは、私がバリ島から船に乗って、ギリ島やロンボク島という離島を訪れたことが、これに大きく関係している。

ギリ島とロンボク島は、そこそこの数の日本人には知られているものの、観光地としてまだメジャーであるとはいいがたい。実際、私はこの二つの島を旅する数日間の中で、アジア人の観光客と一度もすれ違わなかった。島にいるのは現地の人と、あとは欧米人だ。というかこの私自身も、バリ島行きを決めてバリ島周辺のことを細かく調べるまで、ギリ島もロンボク島も、その名前を聞いたことがなかった。

バリ島を訪れるなら、せっかくなので船で二時間というそれらの離島にも、足を運んでみたい。そう思い、私はグーグルマップを開いたのだが、地図を見て首を傾げることになる。バリ島の隣にはロンボク島がある、それはいいとして、ロンボク島の隣には、スンバワ島というこれまた巨大な島があるのだ。スンバワ島の上には、それよりも小さなモヨ島という島がある。ここは、どうなってるんだろう? 行けるのか?

調べてみると、モヨ島もスンバワ島もわずかながら日本人で訪れた人がいるようで、ブログが見つかった。ロンボク島から船かあるいは飛行機で行くらしい。しかし、相当マニアックな旅であることに変わりはない。サーフィン好きには少し知られているようだが、主だった観光地のようなものはないと見た。

さらに、その隣にはサンゲアン島、それからコモド島がある。サンゲアン島については、もはや日本語だと観光情報が出てこない。火山が爆発したという記事が出てくるのみで、行けるのかすらよくわからない。コモド島については、バリ島からコモドオオトカゲを見るためのツアーがあるみたいだ。すぐ隣のスンバワ島から直接行くにはどうすればよいのだろう。これはよくわからない。

そしてその隣には、これまたリンチャ島、フロレス島などという島がある。こちらも、探すとぽつぽつ日本語で情報が見つかるが、あまり観光地化されてはいないことに変わりないようだ。そして、フロレス島近辺のアロール島を渡ると、そこはもう東ティモールだ。さらにそこからヤムデナ島、アルー諸島を渡ると、パプアニューギニアまで到達できる。

私が訪れたギリアイルという島は、徒歩であっても一時間もあれば一周できてしまうような、小さな小さな、バリ島を中心とした地図で見るとゴマみたいな島である。いや、ゴマのほうがまだ大きいかもしれない。ボールペンの先を、そっと紙に押し当てたような大きさしかない島なのだ。

だけどそれはもちろん地図上の話で、実際に行ってみると、たとえ一時間もあれば一周できてしまうような小さな島でも、きちんと性格があり、特色があり、何よりそこで暮らしている人々がいる。ボールペンの先くらいの島にも、一つの世界観があり、宇宙があり、そこにしかない独特の時間の流れ方がある。

(※欧米人に混ざり、ここでヨガをやった。静かに日が沈んでいくのが気持ちよかった)

地球はとっても気持ち悪いな、と思う。どんなつやつや肌の美人でも、彼女の毛穴を顕微鏡で覗いてみたら、ちょっと気持ち悪いはずだ。それと同じで、表面だけ地図でなぞる世界は平坦だが、そこを顕微鏡で拡大してみるととってもグロテスクだ。世界は五代大陸なんかじゃない。もっともっと、世界地図の上では見えないような無数の島がある。その一つ一つに、世界観があり、物語があり、宇宙がある。そこで暮らしている人や、そこを故郷としている人がいる。

インドネシアはもともと、千の島から連なる国家だといわれている。ここに名前をあげた以外にも、インドネシアに属する島は無数にあるのだ。だからこそ私はこのことに気が付けたわけだが、実はもう一つ、同じような例を知っている。

それは、グアムとハワイだ。グアムとハワイは、多くの人は別々の観光地だと思っている(私は思っていた)。グアムのほうが日本から少し近くて単価が安く、ハワイは遠くなる分だけ高い。そんなイメージがあるだろう。

だけど、実はグアムとハワイの間には、これまたゴマ以下の大きさの島が無数にある。グアムからポンペイへ、ポンペイからコスラエ島へ、コスラエ島からマジュロへ、そしてマジュロからハワイへ。そうやって、グアムからハワイまでは、船を使えばアイランドホッピングでたどり着けるのだ。グアムとハワイはそれぞれメジャーな観光地で、通常は別々に訪れる。だけど、ミクロネシアの島々をホッピングしながら渡って見る島の景色は、同じグアムとハワイでも、オアフ島のアラモアナショッピングセンターにいては絶対に見えないものになるだろう。

世界は五代大陸からできているなんてなんで信じていたんだろう? 世界地図の上では確認できないような小さな島を、なぜ訪れてみようと考えなかったのだろう? 考えてみれば日本にだって、沖縄の離島から個人所有の無人島まで、無数の島があるのだ。もっともっと細かく世界を見るべきだった。いやほんと、なぜこんなことに気が付かなかったのか。

いつか、バリ島をまた訪れてみたいと思っている。

ただし、そこから始まる旅は二ヶ月だ。バリ島からロンボク島に渡り、そこからスンバワ島に行く。コモド島、リンチャ島、フロレス島を渡って、東ティモールまで行く。そしてもちろん、ヤムデナ島とアルー諸島を通って、パプアニューギニアまで到達する。ほとんど観光地化されていない島と島の間をホッピングしながら、二ヶ月かけて東へ東へ移動する。島の自然は、東南アジアの湿地帯を抜け、徐々に乾燥したオーストラリアの気候に近付いていくだろう。各島へのアクセスは、インターネットで調べられる情報はないので、実際に行って現地の人に聞くしかない。政治的なことがよくわからないが、もしかしたら越えられない国境とかがあるのかもしれない。それも今はわからない。

だけど、そんな旅行がいつかできたら素敵だ。ガイドブックに載っていない私だけの旅行だ。島に人がいるなら行けるのだ。今回、知りたい情報が十分に出揃ってないままギリ島に行ったが、現地に行って人に聞いたらなんとかなった。だから、たぶん行けるだろう。

というわけで、また一つ新たな旅のプランができてしまった。ガイドブックとインターネットに情報がない、よくわからないところに、私は行ってみたい。「知ってる」「わかってる」なんて思いたくないのだ。

もう30年くらい生きているけれど、恥ずかしいくらい知らないことが多すぎて、私はいつもびっくりしてしまう。

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2015年11月から2017年7月までの日記です。100記事いっぱいになったので以後更新されません。
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