アルジャジーラ

【日記/59】今週のアルジャジーラ〔ソマリランド〕

毎週金曜日に更新している(することにした)「今週のアルジャジーラ」。下書きを書き終えて意気揚々とPCを家に置いて出かけたら、重かったのかスマホから更新ができなかった。……というわけで今日は日曜日だけど、毎週金曜日に更新している(することにした)「今週のアルジャジーラ」をさらっと更新します。

アルジャジーラとは、カタール・ドーハに本社がある、アラブ・イスラム世界のニュースを報道するメディアである。そのアルジャジーラが英語で報道した記事のなかから、私がその週に読んで面白かったものを紹介していくというのが「今週のアルジャジーラ」だ。先週分はこちら

今週私が気になった記事は「Somaliland: Shipping the sheep for Eid al-Adha」。ソマリランドというアフリカにある国で、イード・アル=アドハーのための羊の輸送が行なわれているらしい。

まずソマリランドという国についてだけど、この国について今、日本語で読める最も面白い本は、高野秀行氏の『謎の独立国家ソマリランド』だろう。私のブログでもちょこっと紹介している。これは上半期に読んで面白かった本のNo.1だ。

参考:2016年上半期に読んで面白かった本ベスト10

ソマリランドはどこにあるのかというと、アフリカ大陸の中東に近い部分、地図で見るとちょうど「アフリカの角」と呼ばれるところに位置している。

※赤いところがソマリア

ソマリランドはかなり特殊な事情を抱えている国で、まず、国連には国家であると認められていない。あくまで「アフリカの角」にあるソマリアという国の一部で、それが勝手に独立を訴えているだけという認識になっているみたいだ。

しかしそのソマリアは現在、紛争が絶えずアルカイダが潜伏しているとの噂もある「戦国南部ソマリア」と、海賊事業で経済を回している「海賊国家プントランド」、そしてそれらから距離を保ち謎の平和を維持している「謎の独立国家ソマリランド」の3つに分かれている。無政府状態がもう20年ほど続いていて、「リアル北斗の拳」だとか「リアルONE PIECE」だとかいわれているのだ。プントランドと南部ソマリアは一般人は愚かジャーナリストですら立ち入りが困難だが、謎の平和を維持しているソマリランドだけは治安がそこまで悪くなく、勇気のあるバックパッカーは旅行で寄ってみたりしているらしい。私もいつか、エチオピア経由で入国できたらいいなと思っている。

今回の記事はそのなかの「ソマリランド」を扱ったものである。記事によると、ヒツジやヤギ、ラクダや牛などの家畜を輸出することによる収入が、国の経済のかなりの割合を占めているらしい。特にサウジアラビアへの輸出が活発のようで、これは先週扱ったメッカへの大巡礼「ハッジ」が近いことと関係しているみたいだ。イード・アル=アドハーとはハッジの最終日のことで、日本語だと「犠牲祭」とかって訳すといいらしい。なお、ソマリア自身の宗教もイスラム教である。

あと気になる記述としては、若者の失業率が70%とあるけれど……つまり仕事に就いている人のほうが少数というわけだが、家畜の輸出がそんなに儲かる事業だとは思えない。いったい、彼らは何で生計を立てているのか。

この答えは、実は先ほど紹介した高野秀行氏の書籍『謎の独立国家ソマリランド』に書かれている。彼らは何で生計を立てているのか──それはすなわち、外国にいる親戚からの仕送りである。つまり、ソマリ人のほとんどが穀潰しのニート状態というわけだ。うらやまし……いや、大変な状況である。

ソマリアには氏族制度というものがあって、長くなるからものすごく簡単に説明するけれど、ようは親族の結びつきが日本では考えられないくらい強いのである。我々の感覚からすると、親戚(それもけっこう遠い親戚)が生活に困っていたところで、知らんよ生活保護でも頼ってくれよといって追い返してしまうのが正直なところだろう。だけど、ソマリ人は「親族であるなら助けるのが普通」という感覚らしいので、貸すほうもそれが当然だと思っているし、借りるほうもあまり引け目をかんじないみたいだ。そしてこの「氏族制度」が、ソマリアの政治をここまで複雑にしている1つの鍵にもなっている。

アルジャジーラのこのソマリランドの記事、PCで見ると写真が大きくてとても綺麗なのでぜひ見てみてほしい。ヨーロッパのキリスト教建築なども私は大好きなのだが(美術をやっていたから)、最近アフリカやイスラム建築の美しさに心を打たれまくっている。

それでは、また来週!


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