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【7/30】「美しい」ことは人生にどれくらい影響するか?

意外に思うかもしれないが(え、そうでもない?)「美醜」や「ルッキズム」は私にとってかなり関心が高いテーマである。なぜこのテーマにそこまで惹かれるのかというと、たぶん、危なっかしいからだろう。石があったらひっくり返したくなっちゃうタイプなのだ。その話をするとまわりがザワザワするとか、賛否両論が巻き起こるとか、抑圧していたドス黒い気持ちがわっと溢れてくるとか、そういうのがやっぱり好きである。

そういうわけで、この「美醜」というテーマについて、いつかまとまった文章が書けたらいいなという構想がぼんやりとある(まあそういいつつまっったく手をつけてないテーマが10個以上あるのだけど)。今回はその「いつか」に向けた、ちょっとした思考メモだ。

「美しい」ことは人生にどれくらい影響するか?

キャサリン・ハキムという社会政策研究の第一人者が著した『エロティック・キャピタル』という本があって、まだ読んでないんだけど(読んでからnote書けよ)、タイトルになっている「エロティック・キャピタル」とは、容姿・社交力・ファッションのセンス・立ち振る舞いの魅力など、「人を惹きつける資質」のことである。フランスの社会学者ピエール・ブルデューが考えた、エコノミック・キャピタル(金銭的資産)、カルチュラル・キャピタル(文化的資本)、ソーシャル・キャピタル(人脈力)に、このハキムさんが加えた第四の資本であるとのことだ。気取った書き方をしていかにも「これは俗な話ではなくて〜〜〜」的雰囲気を装ってみたが、早い話、私は「イケメン・美人だと実際どれくらい人生に有利に働くのかな?」ということが気になっている。つまりぜんぜん俗な興味である。

この議論の難しさは、二つあると私は思っている。

まず一つ、「イケメン・美人」の定義が意外と難しい。石原さとみレベルまで行くと誰がどこからどう見てもかわいいけれど、「クラスで七番目にかわいかったAちゃん」くらいのレベルになると好みが分かれるというか、ブスも三日で慣れるというか、「あばたもえくぼ」みたいなことって誰にでも起こる(ちなみにそれは決して悪い現象ではない、「あばたもえくぼ」はむしろ幸福な現象といえるだろう)。『エロティック・キャピタル』ではそのへんをどうやって処理してるのかな〜と思う。

第二に、「何をもって"有利"とするか」の定義も意外と難しい。恋愛のチャンスが増えること? 恋人と長期的な関係を育めること? はたまた就職に有利とか、営業で有利とか、芸能人やモデルになれるとか、そっち系? それとももっと本質的な、「人生の幸福度・満足感が高い」とか、そういうこと? ハキムさんはそのあたりをどう考えているのだろう(この本高いんだよね、文庫化してくんないかな)。

ところで、『エロティック・キャピタル』をAmazonで見ただけで一行も読んでいない今の段階で、私が考えた結論を先にいってしまおう。ここでは"有利"をもっとも本質的だと思われる「人生の幸福度・満足感が高い」ことだと定義するけれど、ずばり「イケメン・美人であることは特に人生に有利に働くわけではない」。

そう考えた根拠は、以前cakesで連載していた「整形微人」さんのコラムが記憶に残っているからだ。このコラムの筆者である整形微人さんは、1000万円かけて全身を整形したけれど、その結果ものすごく幸福になった……というわけでは、どうやらないらしい。もちろん、1000万円かけて整形をしたことへの後悔はないそうで、私のこの文章も美容整形を批判するものではないことは強調しておく。

では、整形微人さんが全身を整形して手に入れたものはいったいなんだったのか? これはコラムの中で整形微人さんが書いたことではなくて、あくまで「コラムを読んだ私の感想」だけど、それはたった一つに集約される。

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