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アメリカン・ニューシネマ

今日は、こどもの日。

何度か書いているが、僕は子どもの頃、
父親からは文学を、母親からは音楽を学んだ。

ただ家にあった本やカセットテープを、
借りただけのことである。

ふたりとも映画は好きだったが、
観るジャンルが全然違っていた。

とても乱暴に言ってしまえば、
父親はハリウッド映画、母親はフランス映画だ。

おかげで僕のような、
どっちも好きという変わり者が生まれる。

僕は本と音楽でできているが、
映画も相当に吸収していた。

しかも往年の名作が、
体の奥深くに眠っているのだ。

ただやはり、音楽の力は大きい。
それで名シーンが蘇るからだ。

というわけでまず、僕が子どもの頃、
テレビで父親と一緒に観た「大脱走」から。

1963年公開、ジョン・スタージェス監督、製作。
「荒野の七人」に続く、傑作である。

主演のスティーブ・マックイーンをはじめ、
チャールズ・ブロンソン、ジェームス・コバーンも、
引き続き起用された。

お決まりの西部劇でドンパチじゃなく、
大戦中の捕虜の脱走というテーマもよかった。
ジョン・スタージェスが原作を読んで、
すぐに映画化を決めたという。

これがもうまさに痛快活劇なのである。
しかも今観ても色褪せない、不屈の男たちのロマン。
テーマ・ソング「大脱走のマーチ」が心を鼓舞する。

ただハリウッド映画が、テレビの影響で、
変化を始めたのが、1960年代後半である。

父親が大好きだったジョン・ウェインと、
ジョン・フォード監督の鉄壁コンビから、
アメリカン・ニューシネマ台頭の時代を迎える。

この「大脱走」はその兆しをすでに見せており、
次々と新しいスターやドラマ、価値観が生まれ、
69年公開の傑作「明日に向かって撃て」に繋がる。

67年公開、ダスティン・ホフマン主演の「卒業」は、
アメリカン・ニューシネマの代表作。
サイモン&ガーファンクルのテーマ・ソング、
「サウンド・オブ・サイレンス」といい、
新しい時代の幕開けだ。

フランス映画の1960年代は、アラン・ドロンの出世作、
「太陽がいっぱい」で幕を開ける。
「禁じられた遊び」のルネ・クレマン監督が手掛けた。

母親は文学ではサガンが好きだったが、
子どもだった僕に薦めはしなかった。

親になった今思えば、当然である。

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