公園
犬を連れて夜の公園を散歩した。公園はそこそこでかく、ぐるりと1周するのに15分かかる。犬の足が遅いからなので、大人の早歩きなら5分ぐらいかもしれない。
公園の端っこ、野球場の入口付近にはおじさんかいる。初めておじさんを見た日がいつだったかはもう忘れたが、昼下がりも夕方も夜もおじさんはいた。20メートルぐらい離れたところでおじさんがいるかどうかだけを見て通り過ぎる。本当はおじさんなのかもわからない。便宜上おじさんとしておこう。
おじさんはジャージのようなズボンを履いて青いベンチに座っている。ベンチの位置はたまに移動しているけど、その近くには大きなごみ袋がいつも転がっていた。
おじさんが人と話しているところを見たことがない。それどころか、おじさんがいると認識しているそぶりをする人間もいない。
世間が騒がしくなって、誰もがマスクをつけ始めたときもおじさんはマスクをしてなかった。ベンチに座っているだけ。
夏。暑いのが嫌いなのでほとんど外に出なかった。誰も散歩に行かないので犬はどんどん太る。それでも、ごくたまに犬を散歩に連れていくときは、セミがいるところは避けて通るので木だらけ、つまりセミだらけの公園も行かなくなる。
今年のセミは絶滅したようなので、久しぶりに公園に行く。6時前の空は紺色だった。薄ぼんやりした街灯に照らされながら犬と歩く。いつもおじさんがいたベンチには誰も座っていなかった。
昼飯が豪華になります。