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プロたちが語るホンネとは?地方自治体のDX推進のコツ、大公開!|D2C ID CX CRAFTS TALK

こんにちは! D2C ID CX推進室です。

今年2月に開催したウェビナー『D2C ID CX CRAFTS TALK』。今回は富山県事例でみる 地域課題を解決する自治体DXの手引きと題し、富山県のデジタルソリューション推進事業「Digi-PoC TOYAMA(デジポックとやま)」実証実験プロジェクトの事例を紐解きながら、同プロジェクトの運営事務局を務めた株式会社ドコモビジネスソリューションズ 北陸支社富山支店の田中 優貴さんをゲストにお招きしたトークセッションをおこないました。
本記事では、ウェビナー当日の内容を一部要約してご紹介します。


自治体DX領域におけるD2C IDの強み

はじめに、弊社プロデューサーの工藤が、D2C IDがご支援可能な自治体向けサービス領域に触れながら、弊社の強みに関してお話しました。

工藤:D2C IDは、『CX CRAFTS』を掲げ、認知から購入、ロイヤルカスタマー化まで、フルファネルといわれるすべての顧客接点において、CXコミュニケーションを支援しています。

工藤:そのうち、今回のテーマである「自治体DX」については、3つのサービス領域(上記スライド)を軸に、ヒアリングやリサーチから課題を設定し、コミュニケーションプラン・KPIを策定。プラットフォームとなるアプリやサイトの構築やUI/UX設計。さらには、話題化や取り組みを広めるためのプランニングから実施まで。体験価値向上のためのPDCAを推進しながら、自治体のみなさまのDXパートナーとして伴走することができます。

DXで躍進する富山県が目指すビジョン

富山県のDX取り組み事例のご紹介に入る前に、全国における自治体DXの取り組み状況について、工藤より説明させていただきました。

工藤:野村総合研究所(NRI)が実施した都道府県別のデジタル度をスコア化した調査(2022年)によると、東京を抜いて福井県が1位、富山県が4位と、北陸エリアが大きくスコアを伸ばしています。

工藤:また、都道府県別のDCIスコア構成要素(2022年)4項目の比較表では、富山県が「デジタル公共サービス」で東京と同率の1位、「人的資本」が2位など、全国的にみても富山県はDXの取り組みが進んでいることが伺えます。

そんな富山県では、2022年2月に、新しい富山の未来を描く「富山県成長戦略」を策定。その成長戦略のビジョンとして「幸せ人口1000万 〜ウェルビーイング先進地域、富山を目指して〜」を掲げられており、同ビジョンについても工藤から詳しく説明がありました。

工藤:こちらは、「県内人口100万人」という考え方に縛られていてはもったいない。富山で暮らす人だけでなく、富山に来て「働く人」、観光に来た「訪れる人」、地元で生まれ育った「出身の人」など、愛着を持って関わるすべての人を巻き込んで、幸せという大きな傘のもと、「幸せの関係人口1000万人」を目指していく、という壮大なビジョンです。

この「幸せの関係人口1000万人」を目指し、富山県では、さまざまな領域で多岐にわたる施策に取り組んでいます。その中で、D2C IDでは、新たなビジネスを創出する「実証実験プロジェクト」と、富山県の戦略的広報広聴を担う「デジタル窓口」の構築をご支援してきました。

工藤 乾一(株式会社D2C ID CXプロデュース本部 メディアコンサルティング部 プロデューサー)

メディアの編集プロダクション、営業管理を経て、2019年にD2C ID参画。NTTアドへ1年間出向しながら、地方創生施策の街づくりアプリ、ジャパンシティガイドの立ち上げに従事。帰任後は、my dayz、d払い、5Gサイト、ブランドサイトなど、キャンペーン施策やメディアの改修~運用まで全体プロデュースを担当。現在は、富山案件のプロデュース業務を行いながら、Nグループ全体の仕事を担当。

つづいて、この富山県成長戦略のビジョンを踏まえ、D2C IDが携わった富山県の「実証実験プロジェクト」を工藤よりご紹介していきました。

地域課題をデジタルで解決する実証実験

富山県は、全国を上回るペースで高齢化が進行しており、経済規模の縮小、医療・介護費の増大、労働力・担い手の減少など、さまざまな経済的・社会的な課題が深刻化していました。そんな状況を踏まえ、AI・IoTといった先端技術やデータ活用などデジタルの力を最大限に活かして持続可能な地域づくりを推進していく必要がありました。そこで、立ち上げられたのが、実証実験プロジェクト「Digi-PoC TOYAMA(デジポックとやま)」です。

実証実験プロジェクト「Digi-PoC TOYAMA(デジポックとやま)」

富山県の抱える地域課題をデジタルで解決する実証実験を公募。そこから採用された実証実験に取り組む事業者に対し富山県が費用を負担し、実証実験を実施。また、実施にあたり県内の企業や大学との連携のサポートを受けることも可能。
https://digi-poc-toyama.jp/

このプロジェクトは、実証実験を通じて、県が抱える地域課題をデジタルソリューションで解決する事例を創出し、ビジネスモデルの構築につなげることで、富山県における産業・地域社会のDXを推進させることを目指しています。

実証実験のテーマとなる地域課題は、本プロジェクトの運営事務局を務めたドコモビジネスソリューションズが富山県のデジタル化推進室と一緒に、約30に及ぶ関係原課にヒアリングをしていきながら、精査・選定が進んでいったといいます。

D2C IDは、本プロジェクトの情報の受け皿、コミュニケーションのハブとなる、Webサイトを制作。また、東京・渋谷QWSで開催された実証実験募集イベントの企画制作も担当させていただきました。スタートアップ企業が入る渋谷QWSのイベント会場には、当日飛び込み参加される方も多く質問が飛び交うなど、大盛況となりました。その後は、参加企業との進捗共有会を重ねながら、実証実験の進捗レポートを公開し、対外的な情報発信も実施。年度末にリアルタイムでオンライン配信された成果発表会では、全国からの視聴が多くあり、富山を起点にビジネスの拡大や発展につなげる活発な意見交換の場にもなったと、工藤は振り返りました。

事例のご紹介のあとは、D2C IDの親会社であるD2Cの明海さんにモデレーターを務めていただき、ドコモビジネスソリューションズ 北陸支社富山支店の田中さんをお招きしたトークセッションをおこないました。
ここからは、トークセッションの内容を一部ピックアップしてお届けします。

デジタルの前にアナログな関係値を築く

トークセッションの冒頭では、本プロジェクトの運営事務局を務める田中さんが、プロジェクト進行における印象的なエピソードを次のように語ってくださいました。

田中 優貴 氏(株式会社ドコモビジネスソリューションズ 北陸支社富山支店)

コールセンター業務、ドコモショップサポート業務、経理業務、事業計画業務など、様々な業務経験を経て、2021年に自治体法人営業担当に着任。着任後は主に富山県案件に携わり、富山県が掲げる「幸せ人口1000万人」にデジタル活用で貢献をするべく活動。現在は、2023年度デジタルソリューションによる地域課題の解決を通じて、富山県の産業・地域社会のDXを推進する実証実験プロジェクト「Digi-PoC TOYAMA(デジポックとやま)」の運営事務局を担当。

田中さん:デジタルは手段なんだなというのが、今回改めて感じたことです。プロジェクトをスタートするにあたって、まずは私たち運営事務局が対峙するデジタル化推進室さんをはじめ、各関係原課さんとお話させていただき、目線合わせやベクトル合わせをおこないましたが、やはり担当課さんが30を超えるとなると、確認と調整が非常に難しい面がありました。

明海さん:30を超える担当課の方々にヒアリングしながら、実証実験で解決すべき地域課題を精査・選定されたと。これは富山県さんの内部に、相当入り込まれた動きになるわけですね。

田中さん:「成長戦略」という目指している先は同じだからこそ、みなさんが納得できるかたちで方向性の整理ができるよう、実証実験の目標や落とし所などを、しっかり回数を重ね、膝を突き合わせてお話を進めていきました。デジタルソリューションを推進するにしても、何に使うのか、何を目的にするのかをはっきりさせていくことは、プロジェクトを推進するうえで非常に大事だなと、改めて感じました。アナログなコミュニケーションは、地域課題をデジタルソリューションで解決するための“土壌づくり” だと思います。

工藤:まさに、デジタルの前にアナログが大事ですよね!まずはじめに、自治体さんとの関係値を築いてから、どんどん中に入っていき、DXを推進していくのがすごく重要だなと感じています。そのあたりは、本プロジェクト運営事務局のフロントとして、さまざまな立場の方々と向き合ってこられた田中さんの巻き込み・寄り添い方は、とても勉強になりましたね。

関係人口を増やしていく場づくり

つぎに、前述の田中さんのお話をうけて、制作面で心がけたポイントについて、工藤から話がありました。

工藤:サイト制作では、富山県さんのトンマナからどういう表現や伝え方がよいか、どんなターゲットにプロモーションを打っていくか、といったところは最初苦労した点です。ただの「公募サイト」にするのではなく、Webを使っていかに県内外の事業者の方々との交流につなげていくべきか。そういっった視点をもって、実証実験のレポートといったコンテンツをはじめとしたサイト制作に向き合いました。また、県外での開催となった実証実験募集イベントでは、どのようにターゲットと接点をつくるのか、どんな交流の場があるとよいのか、といったコミュニケーションの打ち出し方はすごく考えた部分で、かなり印象に残っていますね。

明海さん:あのイベントをやるときは、どうなるのか?って本当にドキドキしましたよね。

田中さん:地域課題を解決しながら、関係人口も増やしていく、という壮大なミッションがこの事業のなかに詰まっていますので、Webサイトのデザインや在り方から、イベントの構成まで、スタートアップ企業や新規事業者に「かっこいい」「おもしろい」と思っていただけるものができればと構想していました。そこはまさに、弊社に足りないピースを補っていただいたなと感じています。イベントに参加された方の反響も良く、好評でしたね!

工藤:このイベントは、実証実験の参加事業者を募るといった短期的な面だけでなく、県外の関係人口を増やしていくといった長期的な面でも、今後の道筋や拡がりが、さらにみえてきたなって思いました。

自走化の鍵となる、コミュニティ形成

トークも深まると、トークセッションのモデレーターを務めたD2Cの明海さんからは、全国的な課題まで突っ込んだ質問も。

明海 司(株式会社D2C プロデュースカンパニー エグゼクティブ・プロデューサー)

広告代理店、ブランドコンサルティング会社、OOH会社を経てD2Cに参画。一貫してコミュニ―ション領域を生業にしてきている。現在は、お客さまの新規事業開発や商品・サービスのマーケティング設計のサポートが主要な業務。2023年1月2月、埼玉県の観光施策に関するアイディアソンに参加。

明海さん:自治体のミッションは、“市民サービスをいかに向上させていくか”だと思うのですが。それを前提として持ちつつも、最近、いろんな自治体さんとお話する中で、ふるさと納税についての話題がよくでてくるのですが、ふるさと納税に代表されるように、自治体同士の競争がどんどん激しくなっていくのではないかと感じています。そんな自治体さんの置かれている競争下のなかで、どのようにDXが関わっていくとよいのか。そのあたりのお考えを教えていただけますでしょうか。

田中さん:ふるさと納税のように自治体さん同士の取り合いが起っているのは事実だと思いますし、その先を見据えて、富山県さんも「幸せの関係人口1000万人」を掲げているのではないかと。要は関係する人を増やしていかないと、自治体としての魅力が増えていかない。今回のプロジェクトで申しますと、実証実験を通じた地域課題の解決はもちろん大事なのですが、そこでうまれたコミュニティですね。関係するプレイヤーの横のつながりを一過性のものとしないためにも、みなさんが集えるコミュニティの場を仕組みとして導入していくことが、自治体DXを通じた差別化にもつながっていくのではないかと思っています。

工藤:その点、今回の実証実験における交流会は、まさにコミュニティですよね。いろんな会社さんが自分たちの知識や技術をものすごい熱量で、お互い共有しあっている光景はとても印象に残っていて。実証実験プロジェクトに参加した事業者さん同士が横でつながり、一緒に事業をやっていきましょう、みたいなお話が少しずつ生まれてきそうな雰囲気を感じましたし、その横のつながりからコミュニティが形成され、それがプラットフォーム化されていくといった自走化への足がかりとなりうる手応えのようなものも強く感じましたね。

明海さん:なるほど。コミュニティの形成が、ひとつ自走化の鍵となりそうですね。もうひとつ、前々から思っていることなのですが。DXって教科書的にいうと、デジタルトランスフォーメーション。企業の場合は、ビジネスモデルを転換していくってところが根底にありますが。ビジネスをしているわけでない自治体がトランスフォーメーションってどういうことなんだろう?そのあたりのお考えがあればぜひお聞かせください。

田中さん:一言でいうと “住民DX” に繋げていくことだと思います。行政サービスは、安定したものとして継続していかなくてはならない。けれど、これまでのやり方だけではありない部分もあって。自治体さんだけでは解決できない部分が今後たくさん出てくると思われます。そこで、官民連携っていう言葉が非常に重要だと思っていまして。私たち企業がうまく関係プレイヤーを巻き込むハブとなりながら、自治体さん主導で持続可能な安定した行政サービスを住民に届ける仕組みづくりに取り組みながら、いかに最終的な住民DXにつなげていくかっていうのがポイントかと思っています。

明海さん:住民を巻き込みながら、行政サービスを提供していく。ただ、そこには住民と自治体だけでなく、民間企業も巻き込んでいこうじゃないか。そのときに、自治体さんの役割として、自らプロデュースしていく。そのような姿勢が、自治体同士の競争を勝ち抜いていく上で必要なポイントとなりそうですね。

さいごに


ウェビナーの最後には、本プロジェクトにおける今後の展望が語られました。共通していたのは、DX事業でつくられた “コミュニティプラットフォーム” での人や企業等の交流をさらに拡げていき、自走化できる段階まで伴走していきたいという想いでした。


D2C IDでは、地方自治体のデジタル施策推進に協力させていただいております。
ご興味のある方は、是非お気軽にお問合せください。


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