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スポーツマンシップ不在:「朝日新聞」のスポーツ記事

それは何とも奇妙なスポーツ記事だった。2023年2月12日「朝日新聞」スポツ欄。女子フィギュア・スケート4大陸選手権最終日の結果をつたえている。不可解なのは何度主文を読み返しても、だれが優勝したかかいていないのだ。2位にもふれていない。大見出しは

   千葉 3位 のびやか新星

日本の千葉百音(もね)の3位入賞を伝えているのだが、1位、2位の記載がない。ひょとして何かの理由で該当者なしだったのかしらん。で、3位が事実上のトップだったりして

         得点を見た千葉はのけぞりながら両拳をにぎった。

記事はこのように始まり、以下、千葉のこれまでのキャリア、将来のことなど、千葉選手の話題に終始する。ふと気が付いてリードを読む(私の悪い癖でスポーツ記事ではよく飛ばす)。千葉と他の日本選手の成績と所属先が記されていて最後に「優勝は李海仁(韓国)」とあった。なんだか狐につままれた気分。リード下に一段小さいフォントで⑧位までの成績一覧が載っていた。
 
 ①李海仁(韓国)②金芸林・・・・

な、なんと韓国勢が①,②を独占しているのだ。これはニュースではないのか!あのキム・ヨナの後継が育っていたのである。この事実は十分にニュースバリューがあるテーマだ。ジャーナリストならおおいに興味をそそられる現象。となれば、大見出しは

 韓国勢①②位を独占、千葉は③位

これがまっとうな記事だろ。もちろん、内容は大きく変わる。しかし、現地(米コロラドスプリングス)からリポートした記者(岩佐友)の関心は自国選手の成績だけでジャーナリストとしての旺盛な好奇心、柔軟な心はもちあわせてはいなかったようだ。しかし、不思議な話。彼(女)は①②位の選手のパフォーマンスを見ている。にも拘らずその美技(にちがいない)になんの感動も覚えなかったのだろうか。他国の選手といううだけで己の感情をシャットダウンしてしまったといううのだろうか。異常なメンタリティイというほかない。
もひとつ考えねばねばならぬことがある。この記事をかくにあたっての記者の最低限の資格である。それはいうまでもなくフィギュアを愛しているということにつきる。愛していれば、選手の国籍にかかわらず、美技には等しく声援を送るはずだ。が、それが全くない。とすると、この記者はフィギュア・スケートを愛してはいないといううことになる。この記事をかく最低限の資格を欠いているのだ。
まだある。こどもたち、将来のスターを夢見てフィギュアの練習にはげむこどもたちへの影響。新聞は時に読者にたいし”教育”する、という側面を持つ。この記事は、どんなメッセージをつたえているのだろう。

  メダル至上主義
  自国選手至上主義
  他者へのリスペクトは不要

この3点に集約だきるだろう。いずれも、スポーツマンシップとは相いれないものばかりである。これでよいわけがない。

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