【書いたもの】「「通信統制」と地方新聞」(『西日本文化』第497号、2021年1月)

『西日本文化』第497号、2021年1月に「「通信統制」と地方新聞 ―「電通」の国策統合に抵抗する福岡日日新聞社―」と題する小文を発表しました。2021年最初のお仕事となりました。

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こちら、九州歴史資料館所蔵「永江文書」のうち、昨年4月に原口が整理した新規整理分――福日社長・永江真郷宛書簡・電報・各種書類などをもとに執筆しています。

今回執筆した小文は4頁ということもあり、同盟通信社の誕生に対する電通・福日側の動向が分かる史料の一部を検討した、なかば史料紹介のようなものです。地方新聞社によって結成された十日会の動向とか結構面白いですね。十日会にはいわゆる外地の新聞社も入っていたりしますし。

リンク先にある通り、「永江文書」は永江純一・永江真郷親子の関係史料で、断続的に整理が終わった分より公開されてきました。膨大な分量で検索するのもなかなか一苦労なのですが、今回整理・公開した分は”AT”から始まる約300点の史料になります。なお、福岡県立図書館の詳細蔵書検索を使うと、九歴所蔵の古文書も横断検索ができます(最近公開された分までは反映されていないようです)。

また、今回整理した史料の中には、同盟通信社発足にかかる「通信統制」に関する史料以外にも、福日の経営に関する史料や、のちの「新聞統制」に関する史料もいくつかありました。例えば、紙の供給量が減ると広告を掲載するスペースがなくなり、広告収入がなくなり経営危機に陥る可能性がある、といったことを検討した興味深い史料もありました(AT52-9-5)。

ちなみに、『西日本新聞』(昭和17年8月10日に『福岡日日新聞』と『九州日報』が統合されて誕生)に関しては、近年断続的に社史が刊行され、さらに「戦時版」の分析も進んでいます(有馬学「西日本新聞「戦時版」の意義 ―メディアの戦時言説をめぐって―」『福岡市博物館研究紀要』第27号、2018年)。
今回整理した史料は、地方新聞社の断片的な史料なのかもしれないのですが、色々な角度から検討していただければよいのではないかと思っている次第です。ご関心のある方はぜひ。

史料の問い合わせは、九州歴史資料館の県史資料閲覧室へどうぞ。


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