悲しさの色

水風船というのは膨れるほど割れ易くなるもので。
それと一緒で
中学生の頃に泣きかけていた。

「泣いてしまわないように」


それは中学生の話しです。
昨日、会社から帰りながら思い出していたのですが、そのとき泣いていた理由は覚えていません。でも昨日でも同じことがあって。
悲しさって色がないのですよね。



下駄箱に続く階段を下りながら「これ以上なにかあったら泣く」と思っていた。

中学生の通学路で見ていた景色はいつも同じで、団地にある階段を上がるとよく振り返っていた。

そこは空き地があって、高台からの夕日が見えていて。


少し息を吐いて、そして涙を流してしまわないよう。静かに世界を見ていたな




内側に意識を傾けているせいで何も聞こえなくて、シーンとした世界で何かのバランスを失ってしまわないようと、じーっと遠くを見つめていて

変わり映えしない夕日でしたけどね。




そのとき溢れていた経験があるから分かっています。悲しさって透明なのです。
理由なんてどうでもよくて、涙を流さないように意識を向けていると、そのとき世界って静かなのです。



ゆっくり深呼吸をして、涙を流さないように。



ただ一度、泣いたことがあります。
ふと段差で躓いていて、地面に手をついたときでした。
ほんのちょっとで泣いてしまってね。

それだけギリギリだったわけです。




昨日の夜、会社から帰りながらそんなことを思い出して、自分は変わっていないなーと思った。ムカつくことがあって、なんだよって思っていたのだけど気づくと「泣かないように」って世界の遠くを見つめていて。


30歳を過ぎたのに、段差で躓かないように気をつけながら。




悲しさという気持ちだけは静かな感情です。そこまでたどり着いてしまうと、ちょっと悲しいけど、世界がきっと見守ってくれているはずなのです。もうちょっと頑張ろう。、




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