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ポジショニングで子どもの身体を守ろう。

 ポジショニングの基本と理学療法への応用について学び、担当する子どもたちの健康状態の改善に繋げましょう。本記事では、関節の拘縮や、褥瘡、呼吸障害を予防するための体位設定と、体位変換、体圧分散のテクニックを解説します。これらの介入方法をマスターすることで、子どもの生活の質を向上させることができます。一緒に子どもの身体を守る技術を学びましょう。


1. ポジショニングとは?

 ポジショニングとは、対象者が安全かつ快適に身体を保持できるように適切に体位を整えることです。
 ポジショニングでは、無理な姿勢で過ごすことによる悪影響を避けるための「体位設定」と、長時間同じ姿勢で過ごすことによる悪影響を避けるための「体位変換」、局所に高い圧が加わることによる悪影響を避けるための「体圧分散」が重要です。
 適切なポジショニングによって、不必要な身体的ストレスを軽減し、関節の拘縮や、褥瘡(床ずれ)、呼吸障害といった合併症のリスクを低減します。これにより、全体的な健康状態の維持に貢献し、子どもの生活の質を向上させることができます。

2. ポジショニングの3つの視点

2.1 体位設定

 体位設定は、関節と筋に無理な負担をかけないように、対象者の体位を適切に支えることです。
 子どもの関節可動域を適切に把握し、全ての関節を無理のない範囲で支えます。これにより、関節や筋への無理なストレスを軽減できます。関節可動域が狭い子どもの場合、自然に仰向けに寝ただけでも、関節や筋に無理なストレスがかかります。
 例えば、股関節が固いために片方の膝が過度に内側に倒れてしまう子どもの場合、支えを工夫しなければ股関節の内側に圧縮ストレスが、股関節の外側に伸張ストレスがかかり続けます。このような場合には、膝を外に開ける範囲と内に閉じられる範囲の中間程を目安にしてクッションなどで脚を支えると、関節や筋へのストレスを軽減することができます。

2.2 体位変換

 体位変換は、同じ姿勢を長時間続けることによる悪影響を防ぐために、定期的に体位を変えることです。
 長時間同じ姿勢を続けることによる関節や皮膚、さらには肺への悪影響を抑えるために定期的に体位を変えることが重要です。

 長時間同じ姿勢を続けることによる影響には以下のようなものがあります。
・不動による関節可動域制限の増悪
・持続的な皮膚の圧迫による褥瘡の発生
・肺の床側に位置する部分に分泌液が貯留することによる肺胞の機能低下
 
 自力での体位変換が難しい子どもの場合には、2時間ごとに体位を変えることで褥瘡のリスクが減少します。

 一般的に、呼吸機能を向上させるためには、悪い肺を上にして側臥位にすることが推奨されます。この体位によって、より健康な肺が下側に来るため、重力の影響で血流が増え、ガス交換が効率的に行われます。また、悪い肺が上に来ることで気道のクリアランスが促進され、呼吸が改善されることが多いです。座位や半座位にすることで、横隔膜が下降し、腹部の圧迫が減少します。これにより、呼吸が容易になり、肺の伸展が促進されます。

 以上の理由から、定期的に体位変換することが推奨されます。背臥位だけではなく側臥位を取るようにします。側臥位が難しいようであれば、背臥位から少しだけ体を傾けた姿勢である半側臥位を取るようにすると良いでしょう。必要に応じて、腹臥位や座位などの体位を取るようにしましょう。腹臥位が難しいようであれば半腹臥位、座位が難しいようであれば半座位を取るようにすると良いでしょう。

2.3 体圧分散

 体圧分散は、身体の特定の部分に過度の圧力が集中するのを防ぐために支えによって圧力を分散させることです。
 側弯や股関節脱臼などの骨変形のある子どもや、筋緊張の高い子ども、痩せている子どもは、骨の突出部に圧力が集中しやすい傾向にあります。骨の突出部に圧力が集中しないように、体圧を広い範囲で分散させる工夫をします。

圧力の集中による影響には以下のようなものがあります。
・褥瘡発生の危険性が高まる。
・圧の高い部位に痛みが生じる。
・支持面の狭さから不安定性が高まる。
・痛みや不安定性によって筋緊張が高まる。

 体と床が接する面や体の部位同士が接する面に骨の突出部がないか確認しましょう。骨の突出部がある場合には、その部位に圧力が集中しないように周辺の部位にも支えを加えます。例えば、背臥位で尾骨部分が突出している場合には、円形のクッションや丸めたタオルなどで尾骨周囲を支えると良いでしょう。

3. ポジショニングの効果

3.1 関節拘縮の予防

 関節の可動範囲に応じた無理のない体位の設定によって、関節拘縮や筋の短縮を予防できるとともに過度な筋緊張の亢進を抑制できることから動きやすさが保たれます。

3.2 肺機能の維持

 皮膚や肺機能の状態に応じた定期的な体位変換によって、肺機能の維持が期待できます。

3.3 褥瘡の予防

 圧力を適切に分散させることで、褥瘡のリスクを大幅に低減します。

まとめ

 ポジショニングは、子どもが安全かつ快適に身体を保持できるよう適切な体位を設定する技術です。体位設定と、体位変換、体圧分散の三つの視点を持つことで、不必要な身体的ストレスを軽減し、関節拘縮、褥瘡(床ずれ)、呼吸障害などのリスクを低減します。

体位設定
 体位設定は、対象者の関節や筋に無理な負荷がかからないようにサポートすることです。関節可動域が限られている場合、適切に体を支えることで、無理なストレスを避けることができます。例えば、股関節が固い子どもに対して、股関節の開き具合が適切に保たれるようクッションを使用することが効果的です。

体位変換
 体圧分散は、身体の特定の部分に過度の圧力が集中するのを防ぐために支えによって圧力を分散させることです。これによって、皮膚への長時間の圧迫ストレスが軽減され、褥瘡予防に繋がります。また、悪い肺を上にして側臥位にすることで、より健康な肺に血流が集中し、効率的なガス交換が促進されます。

体圧分散
 体位変換は、同じ姿勢を長時間続けることによる悪影響を防ぐために、定期的に体位を変えることです。適切なクッションやマットレスを使用して圧力を分散することが推奨されます。

効果
 ポジショニングは、関節拘縮の予防や、褥瘡のリスク減少、肺機能の維持に効果的です。これにより、子どもの生活の質が向上し、より快適で健康的な日常生活が送れるようになります。

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